文化祭って王道だと思います3

 屋上から帰って来たときには出し物の担当が午前担当から午後担当に変わる時間だ。

 俺は小林と別れて一年三組の教室へと走ってはいけないので早歩きで向かった。


「よう佐藤、出し物大変だったか?」

「大変なんてもんじゃ無いよ。もうずっと動きっぱなしだから疲れちゃった。これはもう裏方仕事担当なんてなくして当日も全員でやった方が良いと思うレベル」

「そ、そうか」


 まあ確かにそうだよな準備だけ人一倍頑張って本番で人一倍楽しむって一番良いかも知れない。


 でもこういう当日の仕事が好きな人がいるかも知れないからなんとも言えないけど。

 ちなみに俺のクラスは指名が出来て指名する際に誰を指名するか紙に書かなくてはいけない。

 つまり誰が人気なのかが丸わかりというわけだ。

 もちろん一位は加藤さんで二位が佐藤だった。


「やっぱり人気あるんだなお前。まあ可愛いし愛想いいし当たり前か、加藤さんを除いて」


 そう佐藤も人気はあった。まあ二位取ってるし。

 だが加藤さんは佐藤よりも八回も多く指名が入っている。


「まあね。加藤さんはなんか別の次元にいる感じがする。でもね蓮ここだけの話、加藤さん昔は、」

「うんうん」

「ストーップ。そこまでそれ以上言ったら許さないわよ佐藤さん」


 なんだか続きが気になるけどまあ加藤さんがいやならいいかと渋々了解した。

 それにしてもあんなに慌ててる加藤さんは初めてみたな、昔はどんな子だったんだろう。

 コホンッっと小さく咳払いをし加藤さんは問いかけて来た。


「蓮くんこれから一緒に回らない?」

「あ、うん、ええと」

「ダメダメ。蓮はこれから私と文化祭を回るんだから」

「いいじゃない。いつも一緒にいるんだからこういう時ぐらい控えめになった方が良いと思うわよ佐藤さん」

「あーさん付けしたいーけないんだいーけないんだ」

「お前は小学生か佐藤」


 俺は佐藤の頭を軽くコツンと頭を殴った。

 するとそこまでいたかった?と思うほど痛がり最後には、「責任とってよね」と誤解を招きかねん言葉を発した後、俺の右腕に抱きついて来た。


 その瞬間感じるブラの感触とその奥にある柔らかい物体の感触は俺の心拍数を上げるには十分すぎた。

 そしてそのことは抱きついているからか佐藤が一番早く気づきこう言ってくれやがった。


「あれ〜蓮、もしかして照れてる?可愛いな〜」

「黙れ」


 俺はそう一言告げて咳払いをし話の話題を変えようとしたが、そう簡単には変えさせてくれない。


「佐藤さん離れなさい。私たちは高校生なのよ、節度を弁えなさい」


 俺、あなたにだけは言われたくないんだけど・・・あんなこと俺にしておきながらねぇ〜〜?


「いやだね。私はくっついても良いの」

「なんでよ。なら私も良いわよね」


 へ?ちょっと待ってもしこのまま左腕に加藤さんが抱きついて来たら流石に男子達が黙ってない気がするんだけど、俺大丈夫?


「ねえ良いでしょ蓮くん?」

「え、いや、ちょっと待って」

「えいっ!」

「あぁ、ちょっとまっt!」


 案の定抱きついて来た訳だけど、廊下だったこともありかなり視線を集めることとなった。

 てか行き良い強すぎてこけちゃったんだけど・・・。

 まあ主に男子達から俺への敵意の視線が随分多かった気がするけど、まあ良いか。


「てか佐藤大丈夫か?勢いでお前にぶつかっちゃったけど・・・」

「大丈夫だよ。私は転けなかったし」


 良かった。これで怪我とかさせてたら俺男子達にどんな目に合わされたことか。

 いやまじで考えるだけで身震いするレベルで。


「ねえ蓮くん、私も転けたのだけれど、何かないの?」

「お前のせいだろ!」

「テへッ♡」

「可愛いけどそんなんじゃ誤魔化されないからな」


 なんなんだ?最近加藤さんのイメージが変わってきたような。

 前までは可憐でどっちかと言うとクールなイメージが強かったけど、今はなんだか積極的すぎると言うか活発系に

近いような気がする。


「まあ、私が原因と言う事には同意するわ。ごめんなさい」


 加藤さんはそう言うとペコリと頭を下げた。

 全くなんなんだこの人キャラがブレブレじゃないか。


「まあでも腕は組んでもらうわよ蓮くん?」

「・・・え?」

「だって佐藤さんだけってずるいじゃない」


 いや待って意味がわからないんだけど。

 普通今の謝罪をしてまだ「腕は組んでもらうわよ」なんて言えるか普通?言えないよな?!


「わかった。なら佐藤とも離れるから加藤さんも離れて」

「わかったわ」


 そう言うと加藤さんは俺に手を差し伸べて立たせてくれた。

 まあ佐藤は離れたくなかったみたいだけど流石にこれ以上やると俺が男子にどんな目に合わされるかわからないと伝えると離れてくれた。


「じゃあとりあえず文化祭回ろうか」

「うん!」

「そうね」


 俺は同級生の男子達の悪い意味での注目を集めることになった。

 まあその時の俺の心情はどうにでもなれというものだった。

 本当に俺の高校生活どうしちゃったんだろう。


「やあ蓮くん」

「あ、どうも先輩」

「ってなんだいその状況は?両手に花かな?」

「違いますよ!」


 この人は同じ趣味でたまたま仲の良くなった先輩の桜丘美穂先輩だ。


「蓮くんちょっと付き合ってもらえないかな?」

「ちょっと今は無理ですね」

「そうかい、ならまた今度でいいや」


 何か言いたそうな雰囲気だったけど・・・まあいいか本人がまた今度っって言ってるんだから。

 そのまま先輩はどこかへ去ってしまった。

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