何度でも恋は散る2

 次の瞬間驚きのあまり叫び出しそうだったため、後ろ足で立ち去ろうとした。

 

 でもそんな俺にもっと不幸が降り注ぐ。 

 急に強い風が吹き、開いていたドアからその風が入ってきて立て掛けられていた木材がちょうど俺の方へと倒れてきた。

 

 次の瞬間木材は完全に倒れ俺はその下敷きに、そしてそれと同時に木材が倒れ大きな音が屋上前の廊下に鳴り響いた。

 

 そこまで大きい音に気づかない訳もなく佐藤達が慌てて走り寄ってきた。

 俺だと気付くまでさほど時間は掛からなかった。


「蓮!」


 佐藤がその言葉を言い放った瞬間俺の意識は飛んだ。

 勿論そんな事があっては放課後デートなどできるはずもなく俺は保健室、佐藤たちは少し先生方に質問されて終わったそうだ。


 午後四時二十分俺は目を覚ました。

 保健室には先生がいて事情を聞かれたがそれだけですぐに返された。

 俺はそのまま家に返され、妹の羽耶音はすでに帰宅していた。

 あいつの事だ俺の顔を見た瞬間何かがあったと踏んで質問に乗ってくれだろう。と思った、いや思ってしまった。

 

 でも今回は自分の力だけでどうしても解決したかった。

 

 だって俺が今日見たのは佐藤の浮気現場だ。

 そんな事を言ったら怒ってはくれる、そして多分不快な気持ちにさせてしまうだろう。

 そんなことは絶対にしたくなかった、してはならないと思った、だって羽耶音は今までも話を聞いてくれてそんな奴だからこそこんな事で不快な気持ちにしたくはなかった。

 

 次の日

 

 俺は昼休みに佐藤を校舎裏に呼び出した。


「なあ佐藤昨日のあれって、なんなんだ?」


 こんなに直球で聞くのは良く無いと思ったがそれと同じぐらいあれはあの告白対しての答えはなんだったのか気になった。


「ねえ蓮、私たち別れよう?」


 その言葉に少し安心感を抱いたのと同時に絶望感も抱いた。

 でもその安心感は予想が当たったからでは無かった。

 俺はその時ようやく理解したのだった。

 そう俺は、


『佐藤に恋はしてない事に』


 俺は佐藤に恋はしていなかった。

 俺は誰かと付き合って恋をしていると思いたかったのだ。

 そんな行いなのだから相手はきっと誰でも良かったのだろうとその時気づき自分への嫌悪感を抱き始めて俺は、そんな俺が嫌いになった。


 何故こんな事になったのかはきっと最初からわかっていた、わかってないと自分に嘘をついてきた。

 その嘘がなんなのかそれは一瞬でわかった。

 俺は、


『加藤さんに恋をしていた』


 きっと佐藤はそれに気付いていたんだろう。


 その事に気づかされたのは次の瞬間だった。


「昨日のあれね、あの告白演技なの」

「え?」

「あれは蓮ならあんな風にお昼休みに用事があるって言ったら追いかけてくると思ってちょっとお手伝いっしてもらったの」


 そうこれは嘘の告白だという事に気づいた。

 でもそれは彼女なりの優しさであるという事に俺はすぐに気がついた。


「だって蓮は私に恋してない、そして蓮が恋してるのは加藤さんなんでしょう?」


 その言葉を聞いた俺は唖然とした。

 俺はただ佐藤を利用して自分に嘘をついて、何より俺は佐藤を傷つけていたのだ。


「うん、多分」


 そう伝えるのに三十秒程かかった。体の震えが止まらない。


「なら私は今度こそ正々堂々と加藤さんから蓮を奪って見せる」

「え?」


 その瞬間ふと気づいた、佐藤が今『今度こそ』と言ったという事に・・・。

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