第4話 『お前の体』
「それじゃあ、アレクさんへのお礼の話をしましょうか」
「お礼っていうんならもう俺にかかわらないでいてくれるのが
一番ありがたいんだが。」
そう返すと、また目に涙を浮かべ始めるものだから、
あわてて冗談だ、と言った。
すると、涙は一瞬で引っ込み、笑顔になる。
「なあ、お前と女将の話を聞いてると、薄幸の中でも礼儀を忘れないいい子なのかな、とは思うんだけどさ、だいぶ腹黒くないか?」
「涙はか弱い女の子の一番の武器ですから。」
「最近話題になってる男女平等論者が聞いたら発狂しそうなセリフだな。」
「そんなことはどうでもいいんですよ!
それよりも、お礼の話です。
アレクさんは何か欲しいものとかないんですか?」
「ほしいものって言ってもなあ…
お前のクエスト報酬で買えるものなんて
自分の金で買えるし、食いもんとかでいいぞ?」
そういうと、不満そうに頬を膨らませて、
「冒険者だったら、『お前の体』とかいうべきじゃないんですか?
こう見えても私16ですし、スタイルもいいと思うんですけど??」
「16って、俺と10歳以上離れてるじゃねえか!
それとお前のはスタイルがいい、っていうんじゃねえ。
どこも出てねえから均整がとれてる、っていうんだよ!」
そうやって話していると、報酬の準備が終わったのだろう。
ミーシャが俺たちの座るテーブルへと近づき、
「イヴさん、お待たせしました。こちら小竜討伐の報酬です。
今回はアレクサンドルが助けに来てくれたようでよかったですけれど、
ギルドの規約上、適正範囲を超えたクエストを受注しても止めることはできませんが、命あっての物種ですからね?自分を大事にしてください。」
え、俺のこと呼び捨てになってなかった?
まさかね、あのミーシャがそんな無礼なこと…
「それからアレクサンドル。年下の子をたぶらかすとは、心底軽蔑しました。
これからは私以外の受付へ行ってくださいね。」
聞き間違いじゃなかった!?
「ちょ、ミーシャさん?誤解されてるようなんですけど…」
「誤解だと思う人間が今このギルドに何人いるんでしょうかねえ?
あ、エカテリーナさん。あなたはどう思われます?」
俺が一番顔を合わせたくなかった人物、エカテリーナが
絶対零度の視線を俺に向けながらそこに立っていた。
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