第2話 自己紹介

「ほんっとーに、ありがとうございました!」


そう言って頭を下げてくる目の前の少女に、

そういえばまだ名乗ってなかったな、と思い


「冒険者なんて助け合いだろ?気にするなよ。

俺はアレクサンドル・イヴァンだ。

長いからアレクでいい。お前は?」


と短く自己紹介をすると、慌てたように


「私はイヴ。ただのイヴです。

命を助けて頂いて、感謝しかありません。」


そういって、笑った。


町へと戻る道すがら、ずっとお礼を口にし、

いい加減うっとうしくなったので、


「俺は白狸亭の女将に頼まれただけだ。

お礼なら俺のへの分も女将に言っておくといい。」


というと、何が不満なのか


「女将さんへはもちろん宿についてからお礼を言いますが、

あなたへのお礼もちゃんと言います。

私の命を救ってくれたのはあなたなんですから。」


そう言って、むくれてしまった。


そんなこんなで町へと帰還し、

冒険者ギルドにて報酬の受け取りを行っている彼女を尻目に

俺はギルドから立ち去ることにした。


ここにいると、奴に遭遇しかねない。

しかし、受付嬢との話を終えたのだろう、

イヴが大声で俺の名前を呼びつける。


「アレクさーん!無事に報酬も頂けることになったので、

準備してくれている間にアレクさんへのお礼を考えましょう!」


そう言って俺の腕をとる。

年中年柄女日照りである冒険者どもからの

そこを代われ!という視線を感じるが、

彼女からしてきていることで、俺にはどうしようもない。


そうして彼女に席につかされると、

なぜか彼女の身の上話を聞かされている。

お礼の品を考えるんじゃなかったのか?

そんな俺の気持ちを置いてけぼりにして、

彼女は自らの境遇を語った。

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