~2~ i n
『9月7日
誕生日。ママとパパからティファニーのネックレスと時計を貰った。綺麗。ディナーのフランス料理美味しかった。特にフォアグラのムース。
「本当は誕生日花のハマナスにしたかったんだけど、ハマナスの花言葉が嫌だったから」って。
ハマナスの花言葉は「悲しくそして美しく」
ついでに赤いゼラニウムは「君ありて幸福」
意外とキザな皓ちゃんは相変わらず音痴。 』
『9月8日
皓ちゃんがまた宿題を忘れてたから写させてあげた。写しただけで多分理解してない。
体育で突き指をしたのがわりと痛い。
ゼラニウムの匂い実は嫌いだったりする(笑) 』
『9月9日
運動会の練習が始まった。足が早い皓ちゃんは誰が見てもかっこいい。なんか嫌だった。
ヴァイオリン、指先が痛い。 』
『9月10日
めちゃくちゃ暑かった。
明日、作文提出。ムリ。
皓ちゃんが遅刻してた。寝坊って言って笑ってたけど多分嘘。前に目の不自由な人の道案内をしてて遅刻してた。今回も多分そんな感じ。その時も寝坊って言ってた。逆にカッコ悪い。そんなバカが私は好きです。言わないけど。 』
僕の悪口手帳かよ。よく毎日日記なんて書けるよな。千桜の方がよっぽどバカだ。
『11月1日
文化祭代休。
皓ちゃんの家に行った。夕方小学校から帰ってきた律君とみっちゃんが可愛い。私も兄弟が欲しかった。
ポーカーをやった。もちろん私全勝。だって皓ちゃんは分かりやすいし考えてない。
罰ゲームに宿題写させてもらった。間違ってるのが多くて結局私が教えてあげた。
罰ゲーム、ホントはキスが良かった。
Ps.お昼のパンボソボソしてた。でも楽しかった。 』
『11月2日
5時間目の古文が眠い。後ろを見たら、皓ちゃんがよだれを垂らして寝てた。 』
『11月19日
「眠れる森の美女」のバレエを友達と観に行った。
目が覚めたら好きな人がいるって素敵だと思う。』
『12月4日
期末。嫌だ。
帰りのエレベーターでもたれかかってボタンをほぼ全部皓ちゃんが押した。うるさい。皓ちゃんが相変わらず皓ちゃんすぎて笑った。 』
酷いじゃねぇーか。僕のことばっかだ。やっぱ今の千桜に見せらんないよ。
僕は無意識にある日付をめくった。
『12月24日
皓のお父さん。
』
『12月25日
』
『12月26日
お葬式。
』
ページをめくり続けた。自分の日記なんだ。自分のことを書けよ。もっと、書くことあったろ?気が付いたら手が震えていた。
『2月3日
バレエから帰ると皓ちゃんが家の裏門から出てくのが見えた。皓、多分家出たあと泣いてた。
こっそり家に入った。
盗み聞き。
私と別れろって言ったらしい。
皓のお父さんはうちの会社で働いてた。
うちの1番の取引先のお偉いさんを後ろに乗せてたらしい。その時事故になったって。お年寄りのドライバーがハンドルを切ってきて、それで避けようとして事故になった。当たってないからそのお年寄りは悪くないらしい。良く私には詳しいことはわからない。どうなってたのか聞かされてない。お偉いさんも皓のお父さんも亡くなった。うちの損害も大きい。でも、わかんないけど、皓ちゃん達は悪くないのに。私は皓が大好きなのに。』
『2月4日
私は皓ちゃんが好きです。
』
『2月5日
試験休み最終日。
皓に会いたい。 』
『2月6日
皓ちゃん顔にでるからすぐわかる。
でも、ずっと一緒にいる、そう約束した。 』
『2月21日
昔から沢山の人に囲まれてきた。人に見られてきた。良いか悪いかは別として。誰も私ではなく、パパの娘として見ている。家が嫌いな訳じゃない。
小さい時に戻りたい。 』
『3月4日
ママと初めて喧嘩した。
』
『3月5日
パパにめちゃくちゃ怒られた。
いつもパパは仕事仕事仕事。
ママに酷いことを言ったのは分かってる。謝りたいけど謝れなかった。 』
そこで日記は終わっていた。僕は日記が終わった意味を知っている。全身から血の気が引いていくのを感じた。
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