第六章 「再戦」

 キャメロットのナタリーが他の三人に号令する。

「みんなっ! 輝化するよ!」

「はいっ!」

 四人の引き締まった顔。足の運び方。声の大きさ。すべてに緊張感があった。

「輝け!」

 少女たちの凛とした声が重なり、観客が少なくなった会場に響き渡る。右手を当てていた胸から、それぞれの色に輝くアドミレーションがあふれ出し、彼女たちを包み込んだ。

 ショートブロンドに優しい笑顔が映えるナタリーは、太陽のように暖かくも厳しい黄色。

 ストレートの髪をなびかせた涼しい顔のルーティは、海を思わせる深く底知れない青色。

 ポニーテールの黒髪に合った健やかな顔のクレアは、血のような厳かさを感じる深紅色。

 ふわりと弾むオレンジ色の髪に溌剌な笑顔のリンは、心が解き放たれるさわやかな橙色。

 数秒ののち、輝化が完了した。

 目の前に輝化武装をした四人が並ぶ。それは、デュラハンが心待ちにしていた光景だった。

「さあ! 始めるぞっ!」

 デュラハンは、姿勢を低くし、弓の弦を引き絞るように盾と大剣を構えた。全身からあふれる赤黒いアドミレーションが激しくうずまく。

 ナタリーが声を張り上げた。

「援軍が到着するまで、あいつを抑える! もうひとがんばりだよ!」

「了解っ!」

 キャメロットの四人がフォーメーションを組む。

 両腕に大きなプレートを備えたナタリーが先頭。その右斜め後ろに長槍を構えるクレア。左斜め後ろには投げ槍を両手に持つリン。そして、最後方でルーティがアドミレーションを励起し、水属性エネルギーの生成を開始した。

 四人から放出されたアドミレーションが、虹のように混ざり合い、デュラハンのアドミレーションに対抗するように燃え上がる。

「いくぞっ!」

 四人に向かって、突撃を開始した!

 ナタリーが前に出る。こぶしを突き出し、両腕を挟んでいるプレートを前面に展開する。コンクエストスキル「プロテクト」によって生成した障壁を重ね合わせ、巨大な盾となった。

 デュラハンは、目の前に迫る壁に臆することなく、突撃を続ける。

 大剣を振りかぶり、壁の先にいるナタリーまでも押し切るつもりで振り下ろした!

 厚いガラスにひびが入るような音を立ててコンクエストスキルの障壁が破れる。しかし、剣はプレートで受け止められていた。

「受け止め、たぁっ!」

 ナタリーが大剣を押し返す。

 そして、プレートを元の位置に戻すと同時に、備え付けのナックルガードをこぶしにスライドさせ、一歩踏み込んで、格闘戦を仕掛けてきた!

 剣を振ることができない。速く重いこぶしが次々と飛んできた。

 盾で受け止める。そのとき、右側方からの気配。

 ナタリーがにやりと笑いながら、こぶしを突き出した。

 そのこぶしも盾で防ぎ、右を向く。槍が目の前に!

 クレアだ。紅い半透明のバイザーで、表情がはっきり見えない。

「くっ!」

 大剣で突きを受け止める。こちらも重い攻撃。

「ぐぅぅっ!」力を込めて耐えしのぎ、クレアの槍をはじき返した。さらに盾に向かって思い切り体当たりをする。

 があんっ! という衝撃音とともに、盾の前にいたナタリーのからだが宙に浮く。驚きと痛みで顔を歪ませながら彼女が両腕のプレートを展開した。

 そこに向かって剣を突き入れる。

 大剣とプレートの激突! 衝撃の勢いのまま、ナタリーが大きく後ろに吹き飛ぶ。

 クレアが体勢を立て直し、再び迫ってきた。

 突きの姿勢から腰をひねり、剣を右横になぐ。

 彼女が後ろに上体を反らす。からだすれすれで斬撃をかわした。

(くっ! さすが、キャメロットの白兵戦担当〈ダンサー〉。もう見切ったのか)

「私といっしょに、踊ってください!」

 クレアが舞う。槍と一体となり、小さな円や大きな円を全身で描く。

 突く、切る、かわす。なぐ、突く、よける……剣をいくら振ってもクレアに届かない。

 再び防戦一方となる。デュラハンが、いら立ちを感じていると……

 クレアの後方から地を蹴り上げ、風を切る音がした。

 そちらを見なくてもわかる。リンだ。彼女のコンクエストスキル、「ドライブ」の音。車並みの速度で駆けることができる力。たった三歩の助走で、最高速度に到達する。

 興奮とは異なる動悸。一年前の記憶。リンの攻撃で戦闘不能となった。

 踊りつづけるクレアから間合いをとり、彼女の後方を確認する。

 トップスピードのリンが、踏切板代わりのナタリーの障壁に飛び込む。障壁がたわみ、元に戻る力がはたらく。リンは空中へ飛び上がった!

 リンのからだの周囲に、投げ槍が四本出現する。からだを十分に反らして、ばねを利かせ、手に持った槍を放つ! 残り四本の槍も、放たれた一本に追随して射出される。

 まるで、地上に降り注ぐ五本のレーザー光線だ。

 投げ槍とともに、宙に浮いたリンを迎撃しようと、大剣にアドミレーションをまとわせる。しかし、クレアが間合いを再び詰めてきた! 鋭い突きを防ぎ、剣を振り下ろす。当たり前のように回避された。

(間に合わない!)

 リンへの迎撃をあきらめ、クレアもろとも槍を受け止める覚悟を決めた。

 クレアへの攻撃を続け、この場にくぎ付けにする。

 命中は必至。そう思ったとき。

 クレアのからだが紅く光り、目の前から消えた!

 超人的な動体視力と体裁きで、降り注ぐ五本の槍と、デュラハンの斬撃すべてを回避した。

 コンクエストスキル、「イベイド」だ。

「ぐぅぅぅっ!」投げ槍五本すべてがデュラハンに命中する。

「やりましたっ!」

 上空から、リンの歓喜の声。デュラハンは、よろめきつつも踏みとどまった。前回の敗北の原因だったリンの投げ槍が直撃したことで、動揺している。

 幸い、すべての槍は甲冑に当たった。頭を切り替えて、反撃。そう思った矢先……

 目の前にナタリーが飛び込んできた! 驚く間もなく、ナタリーが、プロテクトを多重に発動。デュラハンの周囲を障壁で取り囲んだ。

 ナタリーの後方から凛とした鋭い声が届く。ルーティだ。

「デュラハン! 最初の王手は、私たちだ!」

 その言葉とともに、彼女がアドミレーションを解放する。頭上に、身長の三倍ほどの巨大な水の塊が出現した。自分の杖を突き出すと、三つに分かれる。

 それぞれが巨大な矢に変化した直後、デュラハンに向かって放たれた!

 大剣を振るう! 取り囲まれた障壁が甲高い悲鳴と火花を上げてはじく。

(破れない!)

 三本の矢が絡み合いながら、確実に距離を縮めてくる。

 回避をあきらめ、防御に集中。大剣を地面に突き立て、足を踏ん張る。

 三本の水の矢がデュラハンの目の前に迫る。怪物に飲み込まれるような恐怖。そのとき、タイミング良くナタリーの障壁が消失した。そして莫大な水の奔流がデュラハンを襲う。

 大きな衝撃! これまで蓄えていたアドミレーションが洗い流され、力が抜ける感覚。

 やがて、水の矢が過ぎ去り、静寂が訪れる。

 防御に集中したおかげで、ダメージはほとんどなかった。

(これがキャメロットの連携攻撃……。さすがだ。でも、だからこそリベンジのしがいがある!)

 大剣と盾を持ち上げ、赤黒いアドミレーションの炎を全身から吹き上げる。

「次は、こちらの番だっ!」

 剣にその炎をまとわせ、再びキャメロットの四人に突撃した。

 ナタリーが再び前に出る。同じようにプレートと障壁を展開。

 デュラハンは燃え盛る大剣を、渾身の力で思い切り障壁に振り下ろす!

 障壁が、ぱぁんっ! とはじけるように消滅。今度はプレートまでも砕け散った。ナタリーは盾を失った焦りを感じさせず、間合いを取って格闘戦に移ろうとする。

 しかし、デュラハンは彼女の接近を許さなかった。左手から赤黒い炎のかたまりを放ち、彼女をけん制。その隙に大剣からアドミレーションによる炎の斬撃を放った!

 ナタリーが炎の斬撃に呑み込まれる。

「ぐうぅっ!」彼女が力尽きたようにくずれ落ちた。

 ナタリーをフォローするように、慌ててクレアが前に出てくる。

 ステージの床を剣でなぎ払う。すると、赤黒い炎が反り立つ壁のように立ち上がった。クレアは急制動し、バク転をして炎をかわす。

 デュラハンは、その炎に飛び込みクレアに接近。彼女は、そんなところから! と言いたげな様子で目を丸くした。

 そのまま、大剣を振り下ろす! しかし、長槍で受け止められる。

 反撃に移ろうと槍を構えるクレア。そのとき、長槍に燃えうつった炎が、槍から手へ、手から腕へ、腕からからだへ燃え広がる。

 全身が炎に包まれたとき、クレアの動きが止まった。からだをひっきりなしに動かし、強引に拘束を解こうとしている。

「無駄だ!」大剣が、さらに燃え上がった。「あたしの炎からは逃れられないっ!」

「ああぁっ!」クレアが顔を真っ赤にして力を入れる。クレアの右腕が震えはじめたあと、長槍が目の前まで動く!

 デュラハンは、それにかまわず大剣を振り下ろした

 ぎぃんっ! 長槍に止められる。しかし、長槍に亀裂が入り、大剣にまとわせた炎はすべてクレアに届いた。

「うわあぁぁぁっ……!」

 クレアは空間に固定されたまま、気を失う。

(あと二人!)

 リンがいた。今、戦う理由。それは彼女を倒すこと。

「次はおまえだ、リン!」突撃を再開する。

 前衛の二人が各個撃破されたにも関わらず、リンは、焦っていない。腰を落とし、しっかりとした構えで、不敵な笑みとまっすぐな瞳で対峙している。

 彼女の表情を見ていると、本当にいらいらする。

 なぜ、臆せず立ち向かうことができるのだろう。負けることが怖くないのだろうか。機会の喪失、失敗の不安。それらを考えずにいられる方法があるのだろうか。

(やせがまんしているんだ。その仮面をはいだら、恐怖に震えているはず。あたしと……同じだ。それが本当だなんて絶対に認めない!)

 リンが両手を広げる。五本の投げ槍が出現し、宙に浮かぶ。

 広げた両手で二本をつかみ、残りの三本を、デュラハンに向けて放つ!

 橙色の軌跡を描いて飛来する三本の投げ槍。

 盾と大剣を使ってはじき、リンの目の前まで迫った!

 大剣を振り下ろす。リンが投げ槍を交差させて掲げる。

 投げ槍との激突! 彼女のまっすぐな瞳と目が合った。

 リンは衝撃を受け止めきれず、あられもない姿勢で後方に吹き飛んでいく。

 その先には、ルーティが待機していた。リンをしっかりと受け止めたあと、彼女のからだにふれて、アドミレーションを解放する。回復と賦活の光だ。

 その光景も気に入らなかった。彼女を見ているといらついて仕方がない。

 リンが立ち上がる。ルーティと簡単に言葉を交わす。すると、ルーティが後方に下がった。

 この気持ちは何なのだろう。リンを見ていると心がきしむように痛い。

 デュラハンは、リンをにらみつける。大剣を強くにぎりしめ、リンに向かって走り出した。

 リンの表情と瞳。さっきと同じだ。こんな状況でも楽しそうに見える。それが……

(ゆるせない!)

 叫びたい気持ちを、ぎりっと歯をかみ合わせて必死にこらえる。

 リンがすさまじい量のアドミレーションを噴き上げた。再び五本の投げ槍を生成すると、今度は空中でその五本を束ねる。五本の投げ槍が溶けてひとつとなり人間大の長さ、太さの槍となった。その槍に、リンのアドミレーションが集束する。ひと回り、ふた回り、槍は次第に大きくなり、橙色に光り輝き始めた。

 リンのアンコールバースト。

 一年前を思い出し、恐怖を覚える。しかし、今ここで戦っているのは、あれを乗り越えるためでもあった。その恐怖をねじ伏せて、リンの大槍と向き合う。

 リンは前を向き、狙いを定め、少しも迷わずに、振りかぶる。その表情は、今この瞬間を楽しむような微笑みと、これから起こる結果に微塵も後悔しない潔さが同居しているようだった。

 彼女の手が振り下ろされる。大槍が投擲された!

 デュラハンは、彼女のように大量のアドミレーションを解放する。右腕に力を集束する。

(あたしは! おまえを乗り越える!)


 †

 聖杯の奥底。キリアは何か大きな力に揺り動かされて、目を覚ました。

(キャメロットとの戦いはどうなっただろう?)

 知りたい。そう思った途端、デュラハンの視覚を映すスクリーンが現れる。

 スクリーンは、端がはっきり確認できないほど橙色の強い光で満たされていた。聖杯の底を明るく照らす。暗闇に慣れた瞳にはまぶしすぎる。

 目を凝らすと、その光源は、迫ってくる大槍。そして、すさまじい量のアドミレーションをまとったリンだった。

 彼女の表情は、橙色の光以上にきらきらしているように見えた。そして、それを目の当たりにした瞬間、パズルのピースがしっくり、ぴたりとはまった感覚を得る。

 からだを突き抜ける痛快さ。思わず「これだ……」と言葉が漏れる。

 聖杯が橙色のアドミレーションの光で満たされていく――


 光に向かって、キリアは立っていた。自分をつないでいた鎖が外れている。服や鎧も元どおりになっていた。久しぶりの身ぎれいな姿に、心が爽快で新鮮な気持ちになる。

「わたしも……彼女のように」

 橙色の光が迫る。そのまばゆい光源を、つかまえるように右手を伸ばす。

「からだが……」デュラハンの声が遠くから聞こえてきた。「動かないっ! こんなときに、なんでっ! ……くそぉっ!」

 光に包まれて、自分がどこにいるのかわからない。目覚めているのかもしれないし、夢を見ているのかもしれない……。


 視界に満ちていた光が、目の前に迫った大槍に集束された。

 大剣をステージに突き刺す。空いた右手を広げ、大槍に向かってかざす。

 すると、手のひらから、朝焼け色のアドミレーションが放出された。円盤状に広がったそれに、きゅうんっ、と静かな音を立てて、リンの大槍が接触する。

 槍は円盤に吸収されていく。次々とかたちが崩れ、すべてがアドミレーションに分解されると、数秒後、跡形もなく消滅していた。円盤も右手に吸い込まれて消えた。

 右手を下ろす。立っていられないほど激しいふらつきを感じた。

「……アドミレーションの色。その特性……もしかして、あなたは……」

 近くで倒れていたナタリーから尋ねられた。

 答えたかった。しかし、もう限界だった。頭がもうろうとして、ひざをつく。

 そして、意識が途切れた……。


 †

 目を覚ましたデュラハンは、ふらつく足に力を入れて、立ち上がった。

「何が……、起こったんだ……」

 からだを確認する。目視して、動かして、ふれて……、まったく問題がなかった。聖杯も確認する。キリアの心は、聖杯の奥で静かに眠っているようだ。

 リンの大槍をどうやってしのいだのか、記憶がはっきりしていない。

 突然、後ろから声がかかった。

「あなたは……キリアさん、ですよね? ナタリーです。覚えて、いませんか?」

 わずらわしく感じて、後ろを振り返らずに、答える。

「あたしはデュラハンだ。キリアじゃない」

「そんな……」

 ナタリーの落胆の声を聞きながら、ステージに刺さっていた大剣を引き抜き、リンと向き合った。彼女は息を切らし、苦しそうな表情で、デュラハンを見つめている。

 じっと向き合う二人。突然、リンが語り始めた。

「今、聖杯連結で、先輩から聞きました。あなたはキリアさんなんですね?」

「あたしは、デュラハンだ」

「わたし、キリアさんに会いたかったんです。やっと、再会できた……」

 リンはデュラハンを無視し、ひとりで話を続ける。

「だから、違うと……」

「五年前のこと、覚えていませんか? わたしが絶望の淵に立たされたとき、あなたに救ってもらったんです。キリアさんは、わたしの命の恩人なんですっ!」

 このままリンを斬り捨てようと思った。しかし、なぜか彼女の言葉を無視できない。

 彼女は語りつづけた。

「後ろ姿は、天使のようでした。あなたの長い髪がアドミレーションの輝きをまとったとき、背中から翼が生えたみたいで美しかったんですっ」

 リンの瞳に涙があふれる。彼女はさらに言葉を紡いでいく。

「キリアさんは、わたしの闇を切り裂いて、絶望の底から引っ張り上げてくれました。このときわたしは、あなたに、そしてアイドルに憧れたんです」

 くやしかった。腹が立った。デュラハンの聖杯に、憤りが溜まっていく。それをはき出すように声を荒げた。

「なぜ……今キリアの話をするんだ。戦っているのは、あたしだっ! 目の前にいるのは、デュラハンだっ! あたしのことを話せよ! あたしのことを称賛しろよ!」

 リンは、ひるまずに受け止めた。

「デュラハンと……キリアさんの間で起こったことは聖杯浸食なんですよね? それが何を意味するのか。わかっています。でも、それを承知で伝えました。あなたに、そしてあなたの中にいるキリアさんに!」

 何も言い返せなかった。聖杯でうずまくものが出口を求める。気分が悪い。胸やけするように、ざわざわして、落ち着かない。

「キリアさんっ!」リンの悲痛な叫びが、からだに、こころに響く。「戻ってきて!」

 突然、胸が橙色に輝きだした。リンのアドミレーションの色だった。

 光は甲冑の胸当てのすき間から漏れ出す。やがて、勢いが強くなり、胸当てがはじけ飛ぶ。さらに、あふれるように膨らむと、光の柱となって空高く伸びあがった!

「これは、なに!」

 黒のアイドルの聖杯から、アイドル・アドミレーションが出てきた。

 こんなことはあり得ない。いぶかしんでいるうちに、一年前と同じことが繰り返された。

 聖杯とからだの調子がおかしくなったのだ。

 頭が割れるような片頭痛。目がまわり、定まらない視界。そして、自分のアドミレーションが思うように発現できない。こんな状態では、戦闘の続行は不可能だった。

 橙色の光がゆっくりと細くなる。アイドル・アドミレーションを出し切ったのだろうか。しかし、不調は変わらなかった。

 イドラ・アドミレーションを振り絞る。聖杯やからだに残留したアイドル・アドミレーションと相剋する。からだが引き裂かれそうだった。

 パラノイアスキルを発動し、宙を蹴って空に駆け上がる。大剣を強くにぎりしめ、アドミレーションを振り絞る。

 ごうっ! と燃え上がるからだ。これが今出せる最大のちからだ。

 そのすべてを一度の斬撃で解き放つ!

 特大の炎の斬撃がステージに降り注ぐ。一面が火の海と化した。しかし、ステージの端に青く輝く場所がある。

 ナタリーとルーティが協力して、炎を防ぐことができる障壁を作ったのだろう。キャメロットの四人にダメージはないようだった。

(負けた……。また負けてしまったっ!)

 デュラハンはぐるりと周囲を見渡したあと、さらに上空に向かって駆けあがる。

 誰にも見られないほど高く走り去りたかった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る