第35話:お散歩
「う……うーん……」
暑い……そして動けない……。
目を閉じながらもぞもぞと動いているけれど、全く動けない。何かに縛られているような…?
僕がゆっくりと目を覚ますと目の前にはスヤスヤと寝ている華の姿があった。
「うわぁっ!?華!?」
「う〜ん……。スンスン……ムフーー」
華は僕の服の襟部分を嗅ぐとなぜか満足そうな顔をしていた。
僕はめちゃめちゃ恥ずかしいい。
「華起きて!起きないといけないし恥ずかしいよ……」
「…………や」
「ちょ、華……」
たった一文字だけ言葉を放つと、僕を抱きしめる力がどんどんと強くなっていった。
「華……ぐるじぃ……」
「ん……?はっ!?ご、ごめんお兄ちゃん!!」
「大丈夫……多分……」
華から解放されて僕は両手を上にあげて伸びをした。
「うーーん!」
今日は土曜日なのでたくさん眠れた。
そういえば昨日の夜に何かあったような……あ……。
「うあああ!」
「お、お兄ちゃんどうしたの……?」
「いや……昨日の夜のこと思い出した……。恥ずかしぃよぉ……」
僕は再びベッドに転がって顔を布団で隠した。
今僕の顔はきっと真っ赤になっていると思う……。それぐらい顔が熱い……。
「大丈夫だよお兄ちゃん!苦手なものは誰にでもあるからさっ!」
「華……!」
「んんっ!?」
今七美は布団から顔だけを出しており、朝から大ダメージを食らった華であった。
「と、ともかく!朝ごはん食べに行こっ!」
「うん……そうだね!」
僕は布団から出てリビングへと向かった。
お母さんはもうすでに起きており、朝ごはんをテーブルの上に並べていた。
「二人ともおはよ〜。風邪は治ったみたいね。あと、夜中は大丈夫だった?」
「ぇ……」
お母さんから衝撃的なことを言われた。
いや……だけど起きていただけで昨日の醜態は聞かれていないかもしれない……。
「お、お母さん……?昨日何言ってたから聞こえてたの……?」
「えぇ、怖くて華にトイレについてきてもらったんでしょう?」
僕はガクッと膝から崩れ落ち、床に手をついた。
「………恥ずか死ぬ………」
お母さんにも聞かれていたなんて……。
「ま、まあ誰にでも怖いものはあるから気にしないほうがいいわよ…?」
「……ありがとぅ……」
僕はズーンとした表情で席に座り、用意されていたご飯を無言で食べ始めた。
母と妹は心配していたが、なんと声をかけていいのかわからずにオロオロしていた。
「お、お兄ちゃん!あとでお散歩行こうよ!今日休日だし、病み上がりだしさ!」
「お散歩……」
「じゃ、じゃあ今日は七美が好きな甘いもの買ってくるわ〜?」
二人は七美をなんとか元気付けようとしていた。
「甘いもの……!」
七美はニヤニヤとしだし、元気を取り戻したようだった。
実にチョロい七美であった。
〜〜
「じゃあいってきまーす」
「行ってきます!」
僕たちは近所を散歩しにでかけた。
病み上がりということなので近くの公園まで散歩をするとこにした。
「風が気持ちいいねぇ」
「そうだね、お兄ちゃん」
のんびりと公園まで足を運んでいた。
だが向かっている最中、後ろから何かの鳴き声が聞こえた。
『ワンッ!!』
リードをつけた犬が七美に向かって一直線にダッシュしていたのだ。ちなみに犬種はしば犬である。
「あ、あばばばばば!!」
僕は犬が苦手なのだ。昔、撫でようとしたら犬にタックルされて顔を舐めまくるということがあったので、それがトラウマとなっている……。
『ワンワン!』
「うわぁぁあああん!!」
「お兄ちゃーーん!!」
僕は犬から逃げるために走り出した。
何メートルか走ると曲がり角で人にぶつかった。
「あ痛ててて……って七美くん!?」
目の前にいたのはサングラスとかけ、帽子を被った春渼さんがいた。
今はとにかくテンパっていたので、七美は彼女に抱きつき、涙目で助けを求めていた。
「た、助けて春渼さん!い、犬がぁ!!」
「ぐっは……っていけない……」
春渼さんはなぜか鼻をぐっと抑えていた。
「そ、その犬ってもしかして……」
『ワンワンワンッ!!』
春渼さんが何かを言おうとした途端、犬が僕に追いついた。
「ぎゃーー!!!」
「ああ、やっぱり!待て!!」
春渼さんがその犬に向かってそう言うと、犬はピタッと動きを止めた。
「は……た、助かったぁ……」
「ごめんね七美くん、これ私の飼ってるワンちゃんだから。ちょっと逃げ出しちゃってね……」
き、今日は不幸な日だぁぁ……。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
もし七美くんが目の前で落ち込んだり泣いたりしていたら膝枕をしてあげて褒めまくって赤面させたいです(←何行ってんだコイツ……)。
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