第34話:真夜中の出来事




 ———暗い……。



 僕は寝ていたはず……?


 ここは僕の部屋じゃない……。


 あたりはボロボロで、まるで今の世界ではないみたいだ……。


 僕は今寝ているところから起き上がり、近くにあった扉をあけて廊下に出た。


 どうやら家の中にいるらしい。


 そして妙に肌寒い……。


 僕は廊下を歩いていたけれど、歩いても歩いても壁にたどり着かない。


 そして僕しかいないはずなのに、後ろから足音と吐息が聞こえる……。


 僕が出て来た部屋は一番端っこで他に部屋はなかったはず。


 さっきまで普通だった横の壁のシミが手形にも見え始めてきた。


 一気に汗が吹き出て来た。


 僕は勇気を振り絞り、後ろを振り向いた。


 するとそこには……———



〜〜



「うわぁぁああ!!」



 僕は大声を上げながら飛び起きた。



「は……はぁ……。よかった……夢か……」



 今……すごく怖い夢を見た……。



 頭はクラクラしないし、もう風邪は治っているようだ。



 目が覚めた時、あたりは真っ暗で真夜中だった。

 ………あの夢みたいに暗かった……。



(………もう一回寝よう………)



 僕は布団に潜り頭も隠した。


 だけれどこれでもかというほど寝ていたっぽいから全く眠れなかった……。



 そして追い討ちをかけられるかのように、トイレに行きたくなってきた。



(ど……どうしよう……!トイレ行きたいけどちょっとだけこわい……)



 怖いけど行くしかない……!

 僕もう子供じゃないんだし……よし!




 七美は決意した。



〜華side〜



「うへへぇ〜……お兄ちゃん………zzz」



 華は絶賛睡眠中だったが、部屋がノックされる音で起きた。



「ん〜?こんな夜中になんなんだろ……ってお兄ちゃん!?」



 私が寝ぼけ眼でドアを開けると、枕を抱きしめながら立っているお兄ちゃんの姿があった。



「あ、あの〜ですね……。とりあえず華、笑わないって約束してくれる……?」


「ん?別にいいけど……あ!もしかして、怖い夢でも見て一緒にトイレ行って欲しいとか?なーんて———」


「華なんで知ってるの!?」


「え」



 冗談で言ったつもりだったのにまさか本当だったとは……。


 ってやばい!お兄ちゃんが涙目になっている!!



「あ、あー……大丈夫だよ、お兄ちゃん!何歳になっても怖いものは怖いから!ね!」


「そう言ってくれると助かる……」


「というかお兄ちゃん風邪はもう大丈夫なの?」


「あぁ……うん。でも多分そのせいで怖い夢見たんだと思う……」



 そういえばお兄ちゃん、昔から怖いの苦手だったな……。

 怖いテレビ番組見た時なんかはよくお母さんと寝ていたような……。


 これはチャンス!!



「とりあえずトイレ行こっか!!」


「あ、ありがとう……。兄として情けないよ……。ごめんね、華……」



 あ〜〜シュンとした顔も可愛い〜。じゃない!!



「大丈夫だって、私はそんなお兄ちゃんも大好きだよ?」


「華ありがとぅ……」



 お兄ちゃんと手を繋ぎながらトイレに向かいました。



「華、絶対ここにいてね。絶対だからね!!」


「もちろん!死んでもここにいるよ!!」


「あ、ありがとうだけど死んだらダメだよ……」



 お兄ちゃんの持っていた枕を預かり、トイレの前で座っていた。



『華いるー!?』


「いるよー」


『帰ってない!?』


「ちゃんといるよー」



 真夜中にこんなやり取りをし、無事にお兄ちゃんのミッション完了。



 そして部屋の前まで戻ってきた。



「じゃ、お兄ちゃん大丈夫?一人で眠れる?」


「それは!!……もちろん……だよぅ……」



 視線を逸らしてそう言ってきた。


 かぁー!!可愛いかよ!!



「お兄ちゃん?本当のこと言って!!」


「うぅ……。ちょっとだけ……本当にちょっとだけ怖いから……一緒に寝たい…なぁって……」


「グハッ!!」



 こんなレアなお兄ちゃんは初めてだ!


 寝ている間は可愛い。風邪の時は幼児化して可愛い。

 だがしかし、普通のお兄ちゃんが甘えるなどそれこそギャップ萌え!!


 今日……私は死ぬかもしれない……。



「もちろん……お兄ちゃんの頼みは断れないよっ……!」


「あっ、ありがとう!!」



 不安そうな顔は一気に笑顔になり、周りにキラキラとしたモーションも見えていた(幻覚)。



「さっ!じゃあら私の部屋に行こう!!」


「あ、ちょっと、引っ張らないでよー」



 私はお兄ちゃんの手を引き、自分の部屋へと連れ込んだ。



「そういえば華の部屋入るの久しぶりなきがする……」


「そうだっけ?」



 私の部屋はごく普通だ。だが押入れの中にはお兄ちゃんの隠し撮ゲフンゲフンッ!宝物がたくさんあるから誰にも見せられない。



「さっ、入ってお兄ちゃん」


「ごめんね……華……」



 お兄ちゃんも布団に入り、二人で転がった。


 お兄ちゃんはすぐに眠そうな顔になっていた。安心できてるってことかな?それだったら嬉しいな。



「お兄ちゃん寝たの?」


「………」



 どうやらもう寝てしまったらしい。


 私も寝ようと思ったが、お兄ちゃんが突然抱きついてきた。



「ふぁっ!?おおお、お兄ちゃん!?」


「ぅーーん……。怖くないもん……」


「グハァ……」



 こうして、私も無事に眠りにつきました!



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


我らの天使は永久不滅。

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