第32話:体育で風邪




 その後は普通に一時間目が始まった。


 やっぱりカッコいいって言われると嬉しい。お世辞でも嬉しいと思う。


 そんなことを思いながら授業を受けていると、僕が少しニヤニヤしているのが先生にバレてしまった。



 だが先生は怒ることもなく、後ろを向いて鼻をかんでいた。


 少し授業が止まっていたが、すぐに再開した。



 ティッシュが、少し赤くなってた気がするけど多分気のせい…だよね?



 その後はごく普通に授業が進み、チャイムが鳴って終了した。



 二時間目は体育。女子たちが出ていった後、僕も着替た。



 今日から種目が変わり、外でテニスをすることになっている。



 ラケットとボールを倉庫から取りに行き、外にあるテニスコートに向かった。



 準備運動をした後、コートに入り、まずは打つ練習をするらしい。



「なかなか難しい……おりゃ!えいっ!」



 ラケットを振っているけれど、ボール当たることなくスカッと空を切ってしまう。



「ん……?」



 周りを見ると、みんなが僕を見つめていた。



(は、恥ずかしい……。あれ見られてたんだ……)



 でもなんだか……みんなはにっこりとして優しいおじいちゃんのような視線で見てきていた。



(可愛いのぅ……もう死んでも構わん……)

(激しく同意)

(写真……いや、動画撮りたい……)



 その後、練習を続けていたらボールは打てるようになった。



 授業が進み、みんなで打ち合いをすることになった。



 僕もまあまあできるようになり、みんなと試合をしたりしていると……———



「あ、危ないっ!!」


「え?」



 僕が声の方向を向くと、テニスボールが迫ってきていた。



 ぶつかると思ったけど、いきなり横からクラスメイトの一人が飛び出してきた。



「ふっ!!グハァッ!!」



 僕はぶつからなかったけれど、飛び出してきたクラスメイトが代わりにぶつかってしまった。



「だ、大丈夫!?ほ、保健室に行く!?」


「い、いいや大丈夫だ……!これが……Code.773の宿命……ッ!」


「何言ってるの!?本当に大丈夫!?」



 僕は倒れているクラスメイトの両手を掴んだ。



「「「「「んなっ!」」」」」


「!?!?一片の悔いなし……」


「えっ!!気絶しちゃった!!しかも鼻血がこんなに……だれか助けてー!!」



 その後は先生に運んでもらい、無事解決。



 その後、僕も授業に戻ろうとしていたが、ポツポツと雨が降り出し、一瞬で大雨となった。



「ギャァ!!総員、退避ー!!」

「下駄箱に戻るんだ!」

「ここにいる者は、誰も濡らさせない!」

「もう濡れてんだよ!早く戻れ!!」

「風邪引きたいのかバカ!」



 僕たちは一旦下駄箱まで戻り、様子を見てから指示すると言った。



「あー……なんだか今日はついてないなぁ……」


「七美くん!?」


「ん?」



 隣にいた島崎さんがなんだか驚いた様子でこちらを見ていた。



「えっと〜……。目のやり場に困りますねぇ……」


「へ?あ……」



 体操服を見ると、透けて肌色になっていた。


 あれ……?でもこういうのって普通逆じゃない?


 と思ったが、まあ島崎さんが嫌だったのかもしれない。



「ご、ごめん!見苦しかったかな……」


「全然!むしろ……眼福……」


「え?最後の方が雨でよく聞こえなかった……なんて言った?」


「ううん!なんでもないよ!!」



 その後、体育は中止になって教室で自習となった。


 教室に戻り、タオルで体を拭いて着替えたけれど……寒気とくしゃみが止まらない…。



「七美くん大丈夫?なんだか顔が赤いけど……」


「う、うん……大丈夫だよ……多分……」


「うん。大丈夫じゃないわね、ほらおんぶしてあげるから」


「うん……」



 ダメだ……頭もうまく回らなくなってきた……。絶対風邪引いてるよ……。



 僕は保健室まで運ばれている間に眠りについてしまった。



〜島崎side〜



 七美くんの異変を速やかに察知し、迅速かつ丁寧に保健室まで運んだ。



「ほら、七美くんついたよ」


「………」


「七美くん?」



 ま……まさか寝ている……!?


 こ、これは絶好のチャンス!眠る姿をあまり見ることができていなったからここでチャージできる!



 そう思い、保健室に入った。



「どうしたー?風邪か?」


「はい……とりあえず寝てるみたいなのでベッドに寝かしていいですか?」


「ああ、構わないよ」



 七美くんをベッドまで運び、そこに七美くんを転がした。



「うーーん……」


「はっ!?いつぞやの可愛い生命体!!」

「ぐっ……ダメだ……。直視できない……!」



 やはり可愛すぎて直視はできなかったが、顔は火照っており、色気のようなものが今の七美くんにあった。



「鼻血を堪えろ……!保健室の先生としての責務を果たすんだ……!」



 先生は七美くんに近づき、容体をチェックしていた。



「だ、大丈夫かい?起きているかい…?」


「んぁ……お、母さん……?」


「グハァッ!!!」


「せんせぇーー!!」



 先生は倒れてしまった。


 本当はもっと見ていたいが、先生に何も言わずに七美くんを運んできたので帰らないといけない……。



「七美くん……くっ……もう少し見ていたかった!!」



 私は苦渋の決断で教室に戻るのであった。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


久しぶりの投稿ですね。(・_・;


明日、今年最後にもう一回投稿するのでよろしくです!

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