八天眼の魔王 Ⅱ

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神も所詮は理の上


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 千を超える魔法の弾丸がカイトに向かって一斉に放たれた。



 一直線に向かって来る弾、避けても当たる様に計算された弾、そして多種多様な属性魔法の弾が襲い掛かり、連続して直撃した衝撃は大きな爆発と化した。


 

 魔王は爆煙で見えなくなったカイトを『千里眼』で探し出す。


「そう簡単には死なんか」


 爆煙の先にカイトが膝をついて手をかざしていた。まだ人の形を保っている。


「はあ、はあ、はあ……」


 急いで魔術を展開し一命を取り留めた。本当に危機一髪だったため、息切れを起こしていた。


 全弾『逸らす』ことはできなかったが、直撃は3発だけで済んだ。腹と左肩、右太股に直撃していた。すぐに治そうにも肩に8㎝程の尖った氷塊、太股に6㎝程の鋭い鉄塊が突き刺さっているうえに『返し』という抜こうとすると引っ掛かる小さな針が付いていて中々抜けない。


「こ、の、程度!!」


 カイトは手で掴み無理矢理引き抜いてみせた。抜いた箇所は『女神の加護』ですぐに修復する。腹も炎の弾の直撃を受けていたが先に修復が終わっていた。


「(魔王は……?)」


 煙が晴れ始め魔王がいる上空に視線を向ける。だが既に魔王の姿は無い。


「いつまでも同じ場所にいるわけなかろう」


 魔王は既に背後に立っていた。すぐに剣で背後に斬りつけた。しかしまたしても姿が無い。


「学習しないな、貴様」


 また後ろに気配を察知する。先に視線だけ背後に向け、魔王の姿を確認する。



 直後、カイトは頭を斬りつけられた。



 魔王の姿を見ているにも関わらず何故か上から斬られた。意識を失い、そのまま倒れ込んだ。



 

 魔王は斬り伏せた青年の亡骸を見下ろしていた。


 頭の半分が斬られた衝撃で吹き飛び中身が派手にぶちまけられている。そこから流れ出る血が魔王の足元にまで広がる。


「所詮、この程度か」



 最後の攻撃は単純に【幻覚】だ。


 後ろにいるように【幻覚】で誤認させ、トドメを差したのだ。 



 『死生眼』で確実に死んでいる事を確認し、『鑑定眼』と『解析眼』でカイトの詳細を見ていく。


「(……なるほどな。『女神』の正体がようやく見えてきた)」


 『女神』との繋がりが強い転移者であるためかなり有益な情報が見つかった。


「(その前に、こちらの決着をしっかりとつけなければな)」


 魔王はカイトの亡骸に手をかざし、【火魔法】を発動する。小さな火の玉がカイトに向かってゆっくり近付いていく。



「起きろ。さもなくば燃やす」



 その言葉を聞いてカイトの死体が高速で起き上がった。


 数歩跳んで後退し間合いを取る。半分無くなった頭部を揺らしながら剣を構え戦闘態勢を取る。


 魔王はその姿を見て苦い顔をした。


「それが女神のすることか? ますます邪神だな」


『いいえ、これは奇跡です。神の力を持ってすれば死者をも蘇らせることができます』


「さっきまでだんまりだったくせによく喋る。まあ、そうしたのは我だがな」


 

 光のヴェールを通り抜けて攻撃できたのは、魔王が『一振千斬』で一撃一撃に様々な魔術魔法、スキルを重ね何度も試し、通り抜ける事ができる組み合わせを探し当てたからだ。


 光のヴェールの正体、それは異空間を一時的に生成しダメージだけを【転移】させる【亜空間遮断】というスキルと類似したものだ。


 魔王は【亜空間遮断】を突破する『時空干渉』のスキルを付与する事で攻撃を当て続けることに成功した。一斉掃射の際、女神の干渉も一時的に遮断させた。さっきまで女神との連携が途切れていたのはそのためだ。



 魔王は『ヴィオラフラム』を構え直し、再びカイトと対峙する。


 カイトの頭部はみるみる元に戻り、服も元通りに直っていた。そして背後に女の形をした光が現れる。


『まだ起きないカイトの代わりに私が貴方を倒します。覚悟なさい』


「死体遊びがお好きか。それもまた一興だが、神々しさの欠片も無いな」


『黙りなさい!』


 カイトが魔王に向かって手をかざす。魔王はすぐに横へ駆け、回避行動に移る。


 魔王が避けたと同時にカイトが手をかざした先にあった建物には大きな穴が開いた。それも一ヶ所だけではなく何十ヶ所も連続で開き続け、正に蜂の巣状態だった。


『読みましたか。ですが次は躱せません』


 かざしている手で地面を思いっ切り叩く。



 『空間掌握』



 カイトを中心に魔力が半球状に溢れ出し周囲を覆い尽くす。無論魔王も範囲内に入っている。この『空間掌握』にいる存在は好きに動きを操作できるようになる。


『これでもう』




 【打ち消し】




 パン、と破裂する音が響いたと同時に『空間掌握』が消滅した。


『な』


 女神は驚いていたがそんな暇も与えずに魔王は一瞬でカイトの懐に飛び込み、『ヴィオラフラム』でカイトを薙ぎ払った。


 上半身と下半身に両断され、それぞれ地面に転げ落ちる。



 だが、カイトの体は【転移】して近くまで移動し、1秒足らずで再結合し人の形に戻る。


「(やはり塵一つ残さない一撃が必要か)」


 魔王は大きく跳躍し、空へ舞い上がった。


『逃がしません』


 カイトもまた魔王を追うようにして空へ飛んで行く。魔王は魔法陣を周囲に展開し、追って来るカイトに【魔法弾】を連射する。さらに変則的な軌道で距離を離していく。


「さあ、第2戦だ。少しはましな戦いを見せてみろ」



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お読みいただきありがとうございました。


次回は空中戦になります。

お楽しみに。


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