八天眼の魔王 Ⅲ

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魔王がチートじゃないと誰が決めた?


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 空中を飛び回る魔王とカイトもとい女神による魔法での打ち合いが始まった。



 女神は魔王同様に魔法陣を空中に複数展開し魔王を狙って魔法攻撃を撃ち続ける。魔王はそれを縦横無尽に動いて躱し、後方に向かって【魔法弾】と【魔術弾】の弾幕を放つ。


 魔王の弾は立体的に展開され、躱しても当たるように計算された配置して放たれていた。女神は【転移】で回避しつつ、当たる弾を自分の魔法攻撃とぶつけて相殺しながら攻撃を撃ち続けた。


『(これでは、キリがありません……。あまり連発したくないのですが)』

 


 『空間掌握』



 もう一度『空間掌握』を展開し、【魔法弾】と【魔術弾】の操作を試みる。


『(やはり対策されている。少し逸らすのが精一杯ね)』


 全ての攻撃に『時空干渉』が付与されているため完全な操作はできないが、数㎝逸らすことはできる。複数を対象に同時に行い隙間を作って潜り抜ける。徐々に距離を詰め、『空間掌握』が届く手前の距離まで近付いた。


『(これ以上近付くと【打ち消し】とかいう魔術で打ち消される。ここは慎重に……)』



 この時、【魔法弾】の一つが女神の横に並んでいた。


 周りに炎を纏った黒色の弾だ。


 その属性は、【滅】


 

 圧縮された【滅】の【魔法弾】、【黒滅弾】がカイトと女神に炸裂した。


『ッ!!!??』


 気付いた時にはカイトの体が超高熱に飲まれ体の半分が炭化していた。女神は急いで【転移】し、弾幕の外側へ飛んだ。地面へ落ちる程ではなかったが、煙突に激突し態勢を崩した。カイトの体は『女神の加護』でかなり頑丈になっていたため煙突の方が砕けた。


 【浮遊】で態勢を整え、炭化した怪我の治療をすぐさま行う。だが、すぐに治らず時間がかかってしまう。


『(カイトの肉体が限界に近い。そろそろ頃合いでしょうか……)』


 カイトの治療中でも攻撃は降り続け、無数の弾が追いかけてくる。


『自動追尾弾!?』


 女神は【絶対防御】をカイトを包むようにして展開し、無数の弾を防ぐ。しかし威力が強すぎて数秒でひびが入り崩壊し始める。


『【転移】、しなくては……!!』


 【転移】でその場から移動し、弾の猛攻を逃れる。転移先は首都の大議会や役所が集まっているエリアにある大きな広場だ。そのど真ん中に降り立っていた。


『な、何故こんな目立つ場所に?! どういうつもりですかカイト!!?』


 【転移】の座標は本来カイトが決めるものだ。今は意識が無いため代わりに女神が決めていた。つまり、転移する際はカイトの意思が優先される。いつ意識を取り戻したのか分からないが、カイトの意思でここに指定された。


 女神はどうしてこんな場所に指定したのか、カイトに真意を問いていた。


『起きているんでしょうカイト!? 返事をなさい!!』


 だがカイトから返事は無い。蹲ったまま反応すらないのだ。


「いくら呼んでも返事は無いぞ」


 そこに上空から魔王が降下し、着陸した。周囲には【魔法弾】と【魔術弾】が取り囲んでいる。


『魔王、カイトに何をしたのですか?!!』


「それだけ心配して顔すら見ていないのだな。よく見てみるがいい」


 女神はカイトの顔を覗き込んだ。


 カイトの顔に大きな蠍みたいな生物が皮膚の下にいた。しっかりとしがみつき、尻尾が背骨まで伸びているのが見える。


「『ブレインハッカー』、我の召喚獣だ。体を両断した際に卵を植え込ませてもらった。生まれてから寄生するまで時間はかかったがな」


 女神は何とかカイトの手でブレインハッカーを引きはがそうとするが、カイトの体は微塵も動かない。


『そんな、こんな事が……!』


 魔王は溜め息をついてゆっくり近付く。


「もっと出来るかと思ったが、期待外れも良い所だ。……死ぬがよい」


 魔王は『ヴィオラフラム』を上段横に構える。魔力を注ぎ、紫の光が強くなっていく。まるで炎の揺らめきの様なその光は剣身よりも大きくなる。


『おのれ魔王! この借りはすぐにでも返させて頂きます!!』


「そうか、それは楽しみだ」


 魔王は剣を振り下ろした。




 【破滅ノ紫焔しえん




 斬撃と同時に眩く荒々しい紫の光が炸裂し、周囲にある建物ごと破壊し尽くしていく。


 議事堂や役所、所々に植えられた木々、舗装された道路も光に当たると同時に粉砕され、塵となって吹き飛んで行く。


 

 光に呑まれたカイトの肉体は滅属性魔法の一撃を受けたように炭化し、塵一つ残らず消し飛び始める。


 後ろにいた女神は完全に消し飛ぶ前に自ら消えていなくなった。



 魔王は最後にカイトと目が合った。消えていく中で彼は意識を本当に取り戻したのか、口だけを動かした。



『 あ り が と う 』



 それをどんな意思で言ったのか聞く暇もなく、微笑みながらカイトは完全に消滅した。




 ・・・・・・



 紫の光が周囲一帯を破壊し尽くして消え、大きなクレーターの中に魔王だけが立っていた。


 『死生眼』、『鑑定眼』、『解析眼』を駆使してカイトの完全なる死亡、女神の撤退を確認した。


「(これで、異世界人達との戦いは終わりか)」


 心の中で呟いて空を見上げた。空は晴天、清々しい気分になれるくらい太陽が眩しかった。


「……そろそろか」


 『予知眼』で見えた未来が目の前で実現する。



 上空に一点の光が光ったのと同時に、首都全てを覆うようにして黄金に輝く光の箱が出現した。


 


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お読みいただきありがとうございました。


次回から女神とのラストバトルです。

お楽しみに。


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