マッスル・オブ・パワー!!!


 ホープ大陸 人族領境 アルカトラズ山脈


 山脈の麓でビクトールとゴールデンマッスルの面々が工事に当たっていた。


 魔族領から人族領にかけて、高さ5m程度のトンネルが掘られていたのだ。ビクトール達は他種族の技術者とでトンネルを埋める作業と、トンネルが出来た原因の調査を行っている。


 そのメンバーの中に、マサルが混ざっていた。


 マサルはトンネルを埋める班に割り当てられ、石を積んでセメントを入れる作業を繰り返していた。作業工程はまだ半分にも届いていない。


「この作業、いつになったら終わるんですかね」


 そんな事をぼやいていると、ゴールデンマッスルの一員、カミキリムシ型の甲虫族『フレックス』が話しかけてくる。


「黙って手を動かすといい。そうすればいずれ終わる」

「そんな事言われましても……」

「集中だ。何事も集中すれば時など忘れ永遠に続けられる。私の筋肉がそれを証明しているぞ」


 すかさずポージングを取り、隆起した筋肉を見せつけて来る。


「分かりました! 分かりましたからこっちにちょっとずつ近寄らないで!!」



 マサルがこちらに来てから、3ヶ月が経っていた。


 筋力トレーニングを積み、筋肉痛で動けなくなるまで追い込んだら【回復ヒール】で治し、また筋力トレーニングという終わりのない地獄を毎日を過ごし、今では筋肉のパーツがそれぞれ盛り上がる位に鍛え上げられた。


 その間に、ゴールデンマッスルのメンバーから魔族領の歴史、情勢、知識など色々教えてもらい、そこそこ仲良くなった。


 とはいえ、昔から体育会系のノリは苦手で、さっきの様なスキンシップも苦手だ。


「(師匠に恩があるから強く言えないけど、もうちょい距離感を離してもらいたいなあ……)」


 気を取り直して石を積んでセメントを入れていく。その途中、


「……ん?」


 マサルが違和感に気付く。


「どうしたマサル?」

「いや、ここら辺から何か土質が違うような……」


 壁面を見ていくと、どこか柔らかくなっている雰囲気があった。


「言われてみればそうだな。……しかし変だぞ。この山は魔王様が造られた物で、土質は一定のはずだが」


 マサル達が見渡していると、壁や床が揺れ始める。地震だ。


「おおっと、結構でかいですね」

「…………マサル! 一旦引き上げるぞ!!」

「え? ちょ、ちょっと?!」


 フレックスがマサルを引っ張って、トンネルの途中で休憩を取っているメンバーと合流する。その中に隊長のウィナーがいた。


「フレックス! マサル! 無事だったか!?」

「ええはい、何とか」

「緊急事態だ。この大穴が出来た原因が分かった」

「待て、文章がおかしいぞ。どうして原因判明が緊急事態なんだ?」


 ヒラタクワガタ型甲虫族『オリバー』が首を傾げる。


「説明は後だ。とにかく全員外に脱出すべきだ」

「……フレックスがそこまで言うならそうしよう。総員脱出だ!!」


 ウィナーの指示で全員が外に出る準備を始める。


「行動しながらで悪いが、何故そこまで脱出を推奨する?」

「このトンネルを作ったのが『ジャイアントボーリングワーム』だからだ」

「何だと!?」


 マサルを除いた全員がざわつき始める。何のことか分からなかったマサルは挙手をする。


「すいません、ジャイアントボーリングワームってなんですか?」

「地中に大穴を開けるミミズの様な魔獣だ。それも超級のな」

「超級?!!」



 トオルは1ヶ月前、魔獣と戦った事がある。


 相手は『ファングセンチピード』。全長3m以上ある牙を持ったムカデで、噛まれれば骨ごと食われる上級魔獣だ。


 これを一人で倒したが、3時間以上かかり、全身のあちこちを骨折と出血をして、倒した直後に気絶した。


 あれの何百倍も強くてデカい相手がこのトンネルをうろついていると思うと背筋が凍った。


 マサルを他所に、ウィナーがフレックスに聞く。


「何故分かった?」

「マサルのおかげです。我々甲虫族は触覚器官が発達してる分、暗い場所での視力が著しく低い。壁に付けたふんまでは分かっていませんでした」

「あれ糞だったんですか?! おええ!!」


 事実を聞いたマサルが吐き出す様な動作を取る。


「しかし、ジャイアントボーリングワームは全長30mはある。我々の触覚で気付けないのはおかしくないか?」

「おそらく地中深くにいるのでしょう。私の触覚でも地下10mが限界ですので」

「それ以上に潜っているのか……、ゴールデンマッスルなら生き埋めになっても何とか脱出できるが、他の者達はそうは行かないからな」


 作業に参加しているドワーフ族やゴブリン族達は続々と外へ向かう。ゴールデンマッスルは誘導を行って安全かつ迅速に対応する。


「私はビクトール様に報告してくる。皆は警戒に当たってくれ」

「「「「「了解!!!」」」」」


 各自散開し、作業に当たる。


「マサルはこっちだ」


 マサルは有無を言わさずウィナーに連れられ、ビクトールの元へ向かう事になった。



 ・・・・・・


 ビクトールは原因究明のため、複雑に入り組んだトンネルの深部に降りていた。


 他の者は連れてこず、単身で乗り込んでいる。何故なら、おおよその検討がついていたからだ。


「(おそらくジャイアントボーリングワームかそれに類する魔獣だろう。勇者や転移者なら魔力痕まりょくこんが残るからな)」


 最初から言わなかったのは、入った段階で確実では無かったからだ。不確定要素で部下達を不安にさせるのは得策ではないと思い言わなかった。


「(さて、それらしき縦穴を見つけたが……)」


 ジャイアントボーリングワームが造ったであろうその縦穴は、直径10mを超す大穴だった。


「(これは、特付きだったか。なるほど、魔王様の作った山脈に穴を開けられるわけだ)」


 魔力を練って造られたこの山脈は、そう簡単に削れる物では無い。しかし、転移者や勇者、迷宮から出て来る災害級ともなれば山脈を突破できる。それほどまでに危険な生物がここにはいる。


「ビクトール様!」


 ビクトールの後ろから呼ぶ声が聞こえた。ウィナーだ。


「どうしたウィナー?」

「トンネルを作った原因が分かりましたので至急報告に上がりました!」

「ご苦労。私も今さっき特定したところだ」


 視線を下におろして、ウィナーに大穴を見せる。


「これは、やはり」

「ジャイアントボーリング。特付きで間違いないだろう」

「特付きぃい!!?」


 ウィナーに引っ張られていたトオルは勢いよく飛び起きた。


「マサル、いたのか」

「マサルがきっかけを見つけてくれました。お手柄ですよ」

「そうか、よくやったぞマサル」

「あ、ありがとうございます」



 穴から何か、うごめく音が聞こえて来た。それもかなり大きい。



「ウィナー、他の者達は?」

「全員避難させています」

「よし、では我々だけで行くぞ」

「は!」

「え?」


 ウィナーのいい返事とは反対に、マサルは間の抜けた声で答えた。


「俺も、行くんですか?」

「当たり前だ。ここまで来たら一緒に行くぞ」


 ビクトールは穴に飛び込み、真っ暗な闇の中へ落ちた。


「ではマサル、先に行って待ってるぞ」


 ウィナーも続いて穴に飛び降りた。


 一人取り残されたマサルは、


「(どうしよう、このまま飛び降りたら間違いなく死闘だし、かと言って引き返そうにも帰り道分からないし……)」


 悶々と悩んだ結果


「ああ、もう! 行きます! 行きますよ!!」


 降りる事を決めた。



 『甲殻装着』!!!



 元はただの人間であるマサルは、耐久力で甲虫族と肩を並べるためにスキルを編み出した。それが『甲殻装着』だ。

 

 マサルの全身に黒い甲冑が貼り付き、筋肉を誇張する様に装備される。筋肉のパーツ毎に金のラインが入る。頭にはカブトムシを彷彿とさせる兜が被さり、首に魔力が噴出することで出来た赤いマフラーが出て来た。マサルの『甲殻装着』の完成である。


 今まで鍛え上げた筋肉が強調され、赤い瞳が輝いている。


「今行きます! 師匠ォォォォォ!!!」


 思い切って穴に飛び込み、ビクトール達の後を追った。


 ・・・・・・


 先に着地したビクトール達は、魔獣と対峙していた。


 予想した通り、敵はジャイアントボーリングワーム。しかも通常より遥かに大きい。全長100mはあるだろう。


 ミミズの様な容姿でありながら、鎧の様な鱗に身を包み、口には大量の牙が付いている。


 ビクトールとウィナーは戦闘態勢に入る。その後ろで、マサルが落下してきた。


「トオル、やっと来たか」

「は、はい……」


 着地に失敗して全身を打つ形になったが、『甲殻装着』のおかげで大したダメージにはなっていなかった。


「お前はそこで見ていろ。これも勉強だ」

「……もしかして最初からこうするつもりで連れてきました?!」


 ビクトール達は微笑みで返答し、敵へ突っ込んだ。


 

 ワームもビクトール達の攻撃と気付き、牙だらけの口を開け、丸のみにして噛み砕こうと突進してくる。


 ウィナーはビクトールより前に出て、ワームの口元に滑り込む。


「ふんぬ!!!」


 掛け声に合わせて口元を掴み、突進を食い止めた。


 ビクトールはワームの目の前に跳躍し、正拳突きの構えを取った。



 『甲鉄正拳弾』!!!



 亜音速の正拳突きが炸裂し、ワームの顔面を叩き潰す。


 それでもワームには浅い傷しか入らない。


「硬いな! だがこれならどうだ!!」


 背中の羽で滞空し、今度は両腕で構えた。



 『無限双拳むげんそうけん金剛破砕こんごうはさい』!!!



 一度に複数に見える腕の動きで、ワームに連撃を叩き込んでいく。

 一撃当たる度に衝撃波が発生し、重なり合って威力が増大していく。



「ゼララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ!!!!!!」



 ワームは徐々に押されていき、ウィナーが手を離して後退する頃には、かなりの距離まで押し潰されていた。それでもビクトールの攻撃は止まらない。


「どうした!? こんなものかァァァァァ!!!」


 ビクトールの叫びと共に入った一撃で、とうとうワームの硬い鱗が砕け、血が噴出する。


「よっしゃ!! 流石師匠だ!!」

「そうも言ってられないぞマサル。周りを見ろ」

「へ?」


 周囲を見渡すと、上級魔獣『ジャイアントワーム』がうじゃうじゃ出て来ていた。


 ジャイアントボーリングワームより小さいが、それでも大きさは10mはあるため、小柄な魔族は一飲みで食われるだろう。


 それが30匹以上はいる。


「げえ?!! 何すかこいつら!?」

「おそらく繁殖したんだろう。こちらも片付けるぞ!」

「ひええ!?」


 弱音を吐きながらも、襲い掛かるジャイアントワームに蹴りや拳を入れて薙ぎ倒していく。


 前回から更に鍛えられたおかげで1匹倒すのにそこまで手こずらなかった。ましてゴールデンマッスル隊長ウィナーが一緒だから尚更だ。


 そのウィナーの戦いぶりも凄まじい物だった。


「おおおおおおおお!!!!!」


 喊声を上げて敵に突っ込んだ。掴んで振り回し、地面に叩き付ける。そして、足で押さえながら両腕で一気に引きちぎる。



 『バンデッドクラッシャー』!!!



 これがウィナーの戦い方。


 相手を抑え込み、千切り、引き裂き、バラバラにする。ゴールデンマッスル内からは『ブレイクウォーリアー』と呼ばれている。



「ひえー……、流石ウィナーさんだ。俺には真似できねえ……」


 マサルは遠目で見ながら、ジャイアントワームに立ち向かっていた。


 想像以上に素早く、中々捕まらない。その上、表皮が硬く簡単には倒れない。


「それじゃあ、俺も腹くくって頑張りますか!!」


 【身体強化】と【加速】を付与して、ジャイアントワームに殴りかかる。


「チェストォォォ!!!」


 さっきよりも動きが速くなり、容易にジャイアントワームを捕らえる事ができた。


「師匠の見様見真似だけど、お前らには十分だ……!!」



 『夢幻鉄拳むげんてっけん連影ツラナリノカゲ』!!!



 高速連撃をジャイアントワームに叩き込む。


「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 そして、ジャイアントワームの頭部を粉砕した。悲痛な断末魔を上げて、ジャイアントワームは絶命した。


「まだまだァァァァァ!!!!!」


 次のジャイアントワームに飛び掛かり、乱戦は続く。



 ・・・・・・


 一方、ビクトールとジャイアントボーリングワームは、マサル達とは少し離れた場所にいた。


 連撃は両腕に一定以上の負荷がかかったため、途中で止めた。


 ワームはビクトールの連撃により奥へと追いやられ、頭部はボコボコに凹んでいた。


「さて、これ以上時間をかけるつもりはない。トドメと行こうか」


 クラウチングスタートの態勢に入り、ジャイアントボーリングワームに狙いを定める。


 ジャイアントボーリングワームはすぐに自己再生し、自らの実力では敵わない相手だと確信したのか、穴を掘って逃げだし始めた。


「遅いわ」


 

 ビクトールは足に力を瞬間的に入れ、爆発させる。



 その一瞬の加速で、ワームとの距離を一気に詰める。そして、更に加速した。



 『甲鉄流星砲』!!!



 ワームの腹に体当たりが直撃し、その衝撃でワームの体が分断される。



 ビクトールの直感で当てた場所には、核があった。核は『甲鉄流星砲』により、粉々に砕け散った。


 そしてジャイアントボーリングワームは、命を落とし、そのまま動かなくなった。



 ビクトールは壁に激突して止まった。


「他愛無し」


 壁から自力で脱出し、 ワームの死骸を確認する。


 分断された本体はもう動く気配が無く、ただの屍となっていた。


「これで終わりか」


 地中に埋まった頭部も確認する。だがそこにあるはずの頭部が無い。


「……しまった!!」


 ビクトールは穴に飛び込んだ。触覚器官を全開にして追跡する。



「(ジャイアントボーリングワームは! !)」



 ・・・・・・


 一方、ジャイアントワームを相手にしていたマサル達は、最後の1匹を相手にしていた。


「合わせろマサル!!」

「はい!!」



 『ダブルウィニングキック』!!!



 同時に放った飛び蹴りがワームの身体を突き破った。


 余った勢いで地面を抉りながら停止する。


 周囲にはジャイアントワームの死体が辺り一面に転がり、戦いの惨状を物語っていた。


「これで終わりか。ビクトール様の方も決着が付いたようだな」


 マサルは安堵して地面に腰を下ろした。


「も、もう立てません……」

「おいおい、これから戻るのにへばっていたらダメだぞ」

「げえ!! そうでした……」


 ウィナーは笑いながらマサルに手を伸ばした。


「無理矢理連れて来てすまなかったな。超級魔獣と遭遇することなんて滅多に無いから体験させておきたかったんだ」


「はは、そういうのはこれっきりにして下さい」


 マサルがウィナーの手を掴んだ。



 その時、ウィナーの後ろに巨大な影が現れた。



 マサルは知らないが、この魔獣こそが今回の元凶、超級魔獣『パラサイトスコーピオン』だ。


 生物に取り付き、取り付いた生物の能力を何倍にも引き上げ暴走させる。そして暴走させて食べた餌から養分を吸い取り、巨大化する。それを繰り返して最後には20mの大きさにまで成長し、強固な甲羅と超級魔獣の核ごと溶かす毒を持つようになる。



 マサルはウィナーに飛び掛かったパラサイトスコーピオンから守るために、掴んだ手を思いっ切り引っ張って横へずらし、自分が襲われるように仕向けた。


 ウィナーはずらされたタイミングで視界に捉えたが、既にマサルに覆い被さっていた。


「マサル!!?」


 穴から追ってきたビクトールも顔を出して、マサルが襲われているのを見た。


「マサル!! 逃げろ!!!」


 叫びも空しく、既にパラサイトスコーピオンはマサルの頭部に噛みついていた。


 パラサイトスコーピオンは噛みついた後、口内から触手を伸ばして開けた穴から侵入する。そして脳へ達すると、洗脳し、意のままに操られてしまう。そうなったら最後、無理矢理救出しても脳が破壊されているため、死亡する。パラサイトスコーピオンに取り付かれた者は例外なく、殺処分となるのだ。


 それを分かっているパラサイトスコーピオンは、トオルの頭に開けた穴に触手を入れようとする。




 だが次の瞬間、

 スポン、と、マサルの兜が取れて、パラサイトスコーピオンが空中をのけぞった。




 穴が開いたのは、マサルの被っていた兜だったのだ。そのためマサルは無傷のままで、兜だけを脱いですっぽ抜けてしまっただけで済んだ。


「?????」



 何が起こったのか分からないパラサイトスコーピオン。


 その一瞬の隙が命取りとなった。



 『無限双連撃むげんそうれんげき阿修羅刃須蛇亜アシュラバスター』!!!!!



 『ジェノサイドパニッシュ』!!!!!



 両側から凄まじい連撃を叩き込まれ、パラサイトスコーピオンは核ごと木端微塵こっぱみじんになったのだった。



 こうして、トンネルの戦いは幕を閉じた。


 ・・・・・・


 それからビクトール達は地上に戻り、先に出ていたメンバーと合流する。


 辺りはもう真っ暗になっており、トンネル周辺に建てられたテントには沢山の灯りが点いていた。


 マサルはぐったりした表情で焚火の前の簡易椅子に座っていた。


「どうしたマサル? 今日一番の功労者がそんな暗い顔をしていたらいかんぞ」


 ビクトールが近寄って来て話しかけてきた。


「パラサイトスコーピオンの事、事前に教えて欲しかったです……」

「あれはお前だから突破できたんだ。もっと誇っていいぞ!」

「そうですけど、もしあの牙が生身に到達していたらと思うとゾッとしますよ……」


 ビクトールは対面する形で簡易椅子に座った。


「正直パラサイトスコーピオンまでは分かっていなかった。その点はすまなかった」

「別にいいですよ。ただ思い出したら背筋が凍るってだけですから」

「何だそんな事か。そんな場面これから先山ほど出くわすぞ」

「マジすか……」

「そうならないためにも、鍛え続けんとな!!」


 ビクトールは大笑いしてポージングを取り始めた。ゴールデンマッスルの面々もポージングを取り、見事な筋肉祭りとなった。


「(……まあ、いつも通りか)」



 こっちに流れ着いて3ヶ月。


 人族領まで繋がっていると聞いて、向こうに出てみようかと思ったが、ビクトールやゴールデンマッスル、魔族領で少なからず知り合いになった者達との日々は今までにないくらい楽しかった。それを捨てて知り合いなど誰もいない土地へ行ってどうするのか、そう思うと人族領へ行く気は無くなってしまった。


 色々あったが、何だかんだ言っても充実感を感じている自分がいた。


 自分にとって、今この場所が『居場所』なのだと、そう思っている。


「どうしたマサル? お前もポージングだ!!」

「分かりましたよ師匠。はぁい!!」

「いいぞ! 大胸筋が張り出してるぞ!!」

「ありがとうございます!!」



 たまにはこんなノリに乗るのも悪くないと、マサルは思った。



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