快楽女傑・リリアーナ


 ヘリドット大陸は地底に国があり、地上は空気汚染、過剰魔素で生物が住めない大陸だった。


 2600年前に魔王の開拓により地上でも住めるようになった。その後地底国との戦争を経て統治する事に成功する。そして最初に造られたのがサキュバス族達の街である。


 

 ヘリドット大陸 シバルバー地方 メーフォ


 メーフォは全体で1万㎢とかなり広く、街の内周には娯楽施設ばかりが立ち並んでいる。賭博場、遊技場、ダンスクラブなど、右を見ても左を見ても娯楽の物ばかり。中心部に行けば、居酒屋、バー、スナック、そして男女がまぐわう娼館、風俗が街の半分以上を占めている。


 何故街の半分以上が性関係の施設かと言うと、ここがサキュバス族の街だからだ。


 この街に定住している種族の9割がサキュバス族、インキュバス族で、その数は800万になる。彼らの主食は他種族の精、生命エネルギーだ。それを最も効率的に収集する手段として性関係の店を使っている。他の娯楽施設でも溢れる感情エネルギーを生命エネルギーにして回収していたりする。



 そんな街のトップが十二魔将、快楽女傑・リリアーナである。



 ・・・・・



 メーフォ 城壁検査場


 メーフォは頑丈な城壁に囲まれており、地上からは入れない。地上には魔獣が発生しやすいためで、空中から飛空艇ひくうていを使ってでしか入れない造りになっている。飛空艇は垂直降下が可能なため、城壁の上に降りられる。そこを降りると検査場があり、そこで入街許可を受ける流れになっている。


 今日もまた、飛空艇がメーフォの城壁に着地した。


 

 エルフ族のコアン(702歳)、ミノタウロス族のボーボ(60歳)、ピクシー族のレイ(18歳)、甲虫族のワックス(33歳)、褐色エルフ族のターメ(99歳)


 以上の5名は一行としてこの地にやってきた。


「来たな」

「ああ」

「来れましたねえ」

「おう」

「やっと着いた……」


 この5名、目的はたった一つ。


「「「「「遂に童貞を捨てる時が来た……!」」」」」


 童貞を捨てるためだ。


 しょうもない理由だが、彼らには彼らなりの事情がある。


「同年代の子に爆乳がいなくてエッチしたくないからここまでやってきた……! 長かった……!」

「ハーレムプレイで童貞捨てられる……。まるで楽園だぜ……!」

「人妻寝とりプレイで童貞捨てられるですう!」

「やはり亀甲縛りプレイで卒業! 最高ですな!!」

「赤ちゃんプレイで童貞を捨てる! これが俺の全てだ!!」


 やっぱりしょうも無かった。



 ・・・・・



 検査場で入街許可を貰った後、街のルールの説明を受けていた。講師はサキュバス族の女性で、際どいレディスーツを着ている。


「それではメーフォのルールを説明します。これを破ると即刻追放なのでしっかり覚えて下さいね」


 はーい、と入街者全員が返事をする。


「ではお手元の冊子の3ページ目を開いて下さい。最初に説明するのは金銭についてです。メーフォではお金ではなく生命エネルギーで支払いしてもらいます。これは我々サキュバス族、インキュバス族の大切な食糧となるので、お金より重要です。よって皆さんにはこの腕輪型魔道具マジックアイテム『ライフマネー』を付けて頂きます。これは身分証明にも使われているので絶対に外したり無くしたりしないで下さい。無くすと再発行に普通のお金を払って頂きますのでそのように」


 サキュバス講師は説明を続ける。


「ライフマネーには皆さまが使える生命エネルギー量が表示されます。個々族によって違いますが、それは努力次第で変化しますので色々工夫してみて下さい。とは言え、生命エネルギーを直接吸収するので、表面上の数字の誤魔化しは出来ません。そこは覚えておいて下さい」


 ペラッと、次の項目を開く。


「次に、犯罪行為についてです。この街ではサキュバス族、インキュバス族に対しての痴漢やセクハラ、強姦といった性犯罪は罪にはなりません。むしろ好意的に受け止めてくれるでしょう。しかし、それを他種族と間違えてしまうと即逮捕になります。最悪処刑になったりもします」


 その言葉を聞いて入街者達はゾッとする。


「でもご安心ください。サキュバス族、インキュバス族は全員青肌で紺色の角、白目部分が黒に黒色の尻尾で統一されているので間違えることはありません。もし他種族がそんな恰好をしていたら通報して下さい。即刻連行します」

「すいません。質問いいですか?」

「はいコアンさん」

「サキュバス族とインキュバス族はスキル『変身』が全員に恒常で備わっていると聞きました。それを使って我々の様な入街者を騙すという事はあるのでしょうか?」

「それはありません。この街のルールで入街者を他種族に変身して通報する事は禁止されています。変身が許されているのは風俗や娼館といったお店でそういうプレイを所望された時など一部のみとなっています」

「なるほど、ありがとうございます」

「性犯罪以外の犯罪は他地方と同様に罰せられるので絶対にしないで下さい。それこそ去勢されて出禁になったりします」


 男性達はすかさず股間を押さえてしまう。


「街の場所によっては全裸OKの所もありますので随時確認してください。続きまして----」


 講義は2時間程続き、冊子は入街者全員に配られた。


 ・・・・・


 コアン達は荷物を受け取り、やっとメーフォの入り口まで辿り着く。


「では開門します。皆様、メーフォを思う存分楽しんで下さい」


 ゆっくりと巨大な門が開き、メーフォの街が見えてくる。そして、コアン達はメーフォへ足を踏み入れた。


 

 そこはきらびやかで背の高い建物で埋め尽くされ、まるで未来の街を見ている様だった。



 道路は舗装ほそうされ、不安定な道は一つも無い。だが、花壇や木が所々植えられ、自然を感じる所が一部存在している。建物には魔石光で装飾された看板が輝いており、それぞれ激しく主張し合っている。建物からは音楽がれ出し、雰囲気ふんいきにぎわせていた。


 そんな未来的な街をサキュバス族やインキュバス族が沢山行きかっていた。


 女性はサキュバス族、男性はインキュバス族で、全員が見たことも無いデザインのファッションで身を固めている。共通しているのは、全員布面積が少ない事だ。あと少しで隠すべき部位が見えそうな物が多く見られる。しかし、それを恥ずかしがる事無く普通にしている。



 あまりの光景に言葉を失っていたコアン達だったが、コアンが我に返る。


「み、皆! 早く宿へ行きましょう! 我々の目的地はまだ先です!!」

「おお、そうだな! 確か『マークラ・イン・ホテル』だったか?」

「シャトルバスが出てるはずですよお」

「あ、あれだあれだ」

「早速乗り込め!!」

「ちょ、置いていくな!」


 騒がしい5名を乗せて、シャトルバスは発進する。


 

 ・・・・・



 しばらくバスに揺られてホテルに到着する。


「……なあコアン」

「何ですボーボ」

「ここ本当に5000ヴェルで取ったホテルか?」

「ええ、そのはずなんですが……」

「いやいやいやいや、デカすぎだろ……」


 見上げれば首が痛くなる様な高さの超高級ホテルだった。


 玄関前には立派な石像や噴水、植物が大量に植えられ、豪邸の庭の様だ。中に入れば天井が10mもあるエントランスホールが出迎えてくれる。内装も城の様に豪華な装飾が付けられ、汚れ一つ無く、光り輝いている。従業員の格好はスカートがギリギリだったり胸の谷間が丸出しだったりと気になる所はあるが、それを気にさせない程礼儀正しかった。


 部屋の中も大層豪華で、ウェルカムドリンクと高級果物が置かれていて、ベッドはキングサイズ、スペース数は3つだがどれも一辺10m以上、ジャグジー付きバスユニットにシャワー完備のとんでもない部屋だった。しかも一人一部屋。


 荷物を置いて慌ててエントランスホール隣の休憩スペースに集合する。


「やっぱ桁一つ間違えたかもしれない」

「落ち着けコアン! とにかくまず確認だ!」

「すいません従業員さん!!」

「はい何でしょうか?」


 そういって近付いてきたのはスタイル抜群の巨乳サキュバス従業員だった。


「ここって一回の宿泊が5000ヴェルって本当ですか?」

「はい。我がマークラ・イン・ホテルは一回のご利用で5000ヴェルです。何か問題がありましたか?」

「…………マジすか」

「夢じゃ、無いよね?」

「マジですし夢でもありません。当ホテルはリーズナブルに最高のおもてなしをするのが基本です。お食事とセルフサービスはライフマネー支払いとなりますのでご了承ください」


 あまりの衝撃に一時放心する。


「…………スゲエな、メーフォ」

「ああ……」

「大丈夫ですかお客様? セックスします?」


 従業員が服を脱ぎ始める。


「「「「「いえお気持ちだけで結構です!!」」」」」


 童貞故に踏み入る勇気が無いコアン達だった。



 ・・・・・



 翌日


 コアン達はエントランスホールでそれぞれのライフマネーを確認する。



 コアン:1800000ライフ

 ボーボ:4500ライフ

 レイ:144000ライフ

 ワックス:6000ライフ

 ターメ:2400000ライフ



「何でターメとコアンそんなに多いの?!」

「ボーボ君、これは多分寿命が関係していると思うぞ」

「二人はエルフ族ですからねえ。そりゃその分生命エネルギーもあるってことでしょお」

「それ言ったらレイさんも相当かと」

「レイはピクシー族だったな」

「はいぃ。僕らの種族は身体が小さい割には結構長生きなんですう。確か平均寿命が500歳くらいですかねえ」

「だああああああ!!? お前らずるいだろおおお!!」

「まあ待てよボーボ、まだ【魔力生命変換】してないだろ?」


 魔術【魔力生命変換】はその名の通り、魔力を生命エネルギーに変換する魔術だ。この魔術は希望があれば検査場で覚える事が可能だ。


「そうだった! 【魔力生命変換】!!」



 ボーボ:54500ライフ



「よっしゃあ!!」


 思わずガッツポーズを取る。


「では私も、セイ!!」



 ワックス:51000ライフ



「おお、これはいい!」

「では私達も……」


 コアン、レイ、ターメも【魔力生命変換】を使う。


 コアン:1890000ライフ

 レイ:194000ライフ

 ターメ:2600000ライフ


「おや、私とターメ君は伸びが悪いですね」

「いや、十分過ぎるだろ」

「それじゃあご飯にしようか。昨日食べてないし」

「そうだねえ」


 ・・・・・


 食事を終えたコアン達は街へ繰り出していた。


「一食0.3ライフって、破格過ぎない?」

「しかも時間経過で回復してる。これは凄いぞ……!」

「これなら遊び放題なのではなかろうか」

「おいおい、まずは目的を果たそうぜ」

「それもそうだが、こんな時間から開いてるのか?」

「そこはリサーチ済みだ。メーフォでは24時間いつでも店は開いている」

「流石ターメ。調査はお手の物だな」

「とにかく中心街に向かうか」

「バスが出てるよ。早速行こう」


 バスに乗って1時間、中心街に入る事が出来た。


 中心街は入街した場所と違ってせ返る程の淫気で溢れていた。そこらかしこでサキュバス族、インキュバス族と性行為に明け暮れている。人目を全く気にせず貪り合い、快楽に身を沈めていた。


 風俗や娼館にも沢山の他種族が出入りし、活気に溢れていた。


 それでも街は清潔なのは清掃用ゴーレムがいるからだ。性行為による汚れなど、街中の汚れを綺麗に清掃している。他にもポイ捨てされたゴミも回収しているため、街が荒れている所は見られない。


「……もうすぐですね」

「バスを降りたら各自解散。童貞を捨て終えたら一旦集合でいいな?」

「OKですう」

「間違いなく!」

「それじゃあ、行くぞ」


 バスが停車し、コアン達はそれぞれの願望を叶えに、童貞を捨てに一時解散した。


「「「「「次会う時は、男になってからだ……!」」」」」



 ・・・・・



 数時間後、コアン達はバスターミナル前に集合していた。


 童貞を各々の願望で捨てた者達の顔は全てをやり終えた戦士の様な顔になっていた。


 ちなみに減った数値はそれぞれ5~30と言った所だ。


「爆乳は存在していた! 爆乳万歳!! さらば童貞!!」

「ハーレムの感触最高だった! あれで童貞捨てられたなんて今でも信じられねえ……!」

「人妻寝取りプレイの興奮が抜け切らない。これが、背徳! 脱童貞!」

「亀甲縛りはやはり至高! 童貞最後の日冥利だった!」

「俺の赤ちゃんは童貞と共に去った。もう何もいらない……!」


 しょうもない理由が始まりだったが、それぞれ満足したようだ。


「では童貞を捨てたので私はそこら辺の爆乳っ子とセックスして来ます! そこの彼女ー!!」

「俺も引っ掛けまくってハーレムでやってくるぜ! しばらく戻らねえからよろしく!!」

「僕もお店でしてくるよお。丸2日のネットリコースとかもあったから試してくるねえ」

「私もSMプレイ専門店で遊んできます! この精力果てるまでやり続けますぞ!!」

「次は幼児プレイだ! 俺達のセックスはここからだ!!」


 馬鹿な発言をしながら風俗、娼館、立ちんぼに突撃していく。



 それから1週間、彼らは精根果てるまで性交し続けた。



 ・・・・・



 メーフォ ハーデス城


 街の8割の生命エネルギーを管理し、供給分配を行っている。他にも政治や揉め事処理と言った行政の建物でもある。この城主をしているのも、リリアーナである。


 リリアーナは【加速アクセル】、【書類作成】で書類を片付けて、趣味のアロマをいていた。



 リリアーナ・アンジェリカ


 十二魔将の一柱で、サキュバスの上位種族『リリス』に至った数少ない上位存在。

 大きな紺色の角、派手な金と銀とピンクのロングヘア、黒に近い青肌、白目部分が黒で金色の瞳、爬虫類に似た悪魔的翼、巨大な尻尾、変幻自在なスタイルが特徴で、服装も布面積が少ないが、金色の刺繍が施された漆黒のハイレグ、黒革のハイヒールとインパクト抜群だ。

 幻覚魔術だけで十二魔将に登り詰めた天才で、政治も仕事もこなせる。今年で1000歳を迎える。


 

 アロマを楽しんでいる所に、来客が現れる。


「あら、魔王様♥ 今日も視察ですか♥」

「そうだ。今日も問題は無さそうだな」

「ええ、もちろん♥ 報告通りまたカモが入りましたわ♥」

「入街者の人数がここ数ヶ月で増加傾向にある。あまり増やすなよ」

「は~い♥」


 入街者はいずれ返さなければならない。そうしないと他地方に影響が出始め、バランスが崩れる可能性がある。技術者や有力者の場合、特に影響が出る。


「とは言え、インキュバス族の方の回収率が悪いのは問題だ。エフォート大陸とリングネル大陸からの女性集客を考えている」

「エフォート大陸はエルフ族やアラクネ族だからいいですけど、リングネル大陸って事は天使族とか有翼族ですか?」

「それもあるが。ギガス族やサイクロプス族も取り込むのはどうだ?」

「う~ん♥ 私はいいですけど~、他の子達がどう言うかですね♥」

「では後日会議を開いて提案してくれ。種族間格差が出るのは避けたい」

「了解しました魔王様♥ ところで、そろそろ魔王様と『分体』を作りたいのですが……♥」

「そうか、もうそういう時期か」


 サキュバス族とインキュバス族は子を産むことは出来ない。『分体』することでその個体数を増やすことが出来る。分体の方法は、他種族から一定量以上の魔力を受け取る事だ。手段はそれぞれだが、大体は精を搾り取ったり、スキル『生命吸収ライフドレイン』で魂の一部ごと魔力を吸収したりしている。後者の方は吸い取られる側の生命が危険に晒されるため推奨されていない。


「この後は夜まで時間がある。それまででいいなら相手をしよう」

「それで構いません♥ では早速寝室に行きましょう♥」

「後、我に『状態異常耐性』があるのを忘れた訳ではあるまいな?」

「……バレましたか♥」

「強力な媚薬だが、我には微塵も効いてない。他の者には嗅がせないように」

「は~い♥」



 魔王とリリアーナは寝室へと入り、分体作りに励んだ。


 生まれた分体は男女合計500匹。しばらくは世話役達が面倒を見る事となった。


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