気持ちよく作者様の手中に落とされてしまう作品

  • ★★★ Excellent!!!

本作を書かれた野水はた先生の『働く私と彼女の同棲』を読んで物凄くファンになり、他作品をぜひ!と思ってこちらに辿り着きました。

タイトルでまず、あ、こういう作品も書かれるんだ!という驚きがあり取り敢えず読み進めていくと、同じ方が書かれたとは思えない様なガラッと違う印象を受けました。でもやはり表現のストックを沢山お持ちであるという印象は変わらず、読んでいてそのシーンがどんどん浮かんでくる臨場感と、言葉選びのセンスを楽しみつつ、ストーリーの予測もつかないまま、どんどん読み進めてしまいます。
序盤、コメディ路線で纏められており、このまま最後まで楽しく進んで行くのかなと思いきや、途中で劇的に切り替わっていきます。ここでは、登場人物の心情が情景と共に表現されていくのですが、ここでもその繊細さにどっぷり感情移入させてくれます。
切り替わりも、唐突なものでは全くなく、且つ先を予想出きる程あからさまでもなく、絶妙なお話の運びにも驚かされました。
題材としては書く方によってはかなり重めのものになるかと思いますが、そこは終始コメディがぶれることなく、読了後は、日常の細々とした悩み等がふっ切れるような心持ちになれます。
続編が読みたい!...いやでもあのままがよいような...どちらにも思える、不思議な魅力のある作品でした。