第29話
屋根から出てくる変異体、そして前の車列から出てくる変異体の群れをレディは自身が手に持つ剣を鞭のように伸ばして斬り裂いていく。
自由自在に操る剣技で襲い来る変異体達を斬り裂いていくが、湧き出てくる変異体の数に徐々に距離が縮まっていき、レディは刃を元に戻して窓から外に飛び出した。
外に飛び出したレディは、すぐに列車のボディに伸ばした刃を突き刺し、体を空中で動かして列車の上に飛び移る。屋根に着地したレディの元へすかさず変異体達も屋根に上ってきた。
レディは剣を振り回して上ってくる変異体を列車から落としていくが、斬り漏らした二体の変異体が四足歩行の状態で駆け寄ってくる。
(斬り漏らした!?)
伸ばした刃を戻し、二体の変異体を迎え撃とうとする。待ち構えていると、突風が変異体を横切り、一体の変異体が姿を消した。
残された変異体が辺りを見渡していると、頭上から一人の若い男が降りてきた。男の両腕と両足は機械で出来ており、そこから奇妙な電子音が鳴っている。
突如現れた男に変異体が襲い掛かると、男は素早い回し蹴りで変異体の頭部を蹴り飛ばした。
変異体を一蹴した男は、レディの方へ振り向き、レディは剣を構えて警戒する。
「異能体はどこに?」
「・・・?」
レディは、男が話した事に首をかしげる。その様子を見た男は、さっきまで冷静な表情とは打って変わって、慌てた様子でレディに伝えようとしてきた。
「え、え~っと!さっきの化け物と似ていて、何か凄い能力を持っている化け物の事です!」
「え―・・・。」
男の説明で更に頭が混乱してきたレディは、構えを解いて男の頬を軽く叩いた。
「痛っ!な、何をするんですか!?」
「あなたが何を言っているか分からないけど、今は変異体を倒す事に協力して頂戴。」
「それは勿論です。そのためにも来ましたから。」
「それじゃあ私は後ろ。あなたは前の方をお願い。出来る?」
「任せてください。自慢じゃないんですけど、化け物退治は得意なんです。」
そうして、レディは男に前方に潜んでいる変異体を任せ、自身は後方に残っている変異体の元へと向かう。
「そうだ。君は、一体何者なの?」
向かう足を止め、謎の男にレディが尋ねてみた。
「僕の名前はコウ。正義のヒーローです!」
ニッと笑みを浮かべると、コウは前方に向かって走って行った。
コウが走っていると、前方に変異体が現れ、コウに向かって威嚇してくる。威嚇してきた変異体に臆することなく、コウは更に走るスピードを上げ、変異体の顔を掴んでそのまま外に自分もろとも飛び出した。
すると、コウの両足の義足の電子音が高まり、コウの体は空中に浮かんだ。掴んでいた変異体を前方の車列の場へと投げ飛ばし、列車のボディにぶつかった変異体に飛び蹴りを当てて列車内に入り込む。
列車内には三体の変異体が乗客を喰い漁っており、その様子を見たコウは激昂しながら変異体に飛び出す。
コウは素早い動きで変異体達を殴り、蹴り、一瞬の内に殲滅する。
「ミオ!異能体の居場所は分かった?」
コウが自身の影に向かって話すと、コウの影から金色の長い髪をした女性、ミオが現れ、コウの背中に抱きついてきた。
「ひゃっ!?い、いきなり抱き着かないでくださいよ!」
「ん~、いつも面白い反応をしてくれるね。」
「そ、それよりも!異能体の居場所は分かったの?」
すると、ミオは右手で前方を指差し、左手でコウの目に覆った。コウの暗闇に包まれた視界の中に、ミオが指さした方に縦状の赤いノイズが走っているのが見えた。
「あそこか・・・ミオ、ありがとう!君は僕の影に隠れてて!」
「えー、またあの暗闇にいろっていうのー?」
「これから異能体と戦うから危ないでしょ!?ミオは戦えないんだから!」
「けど、つまんないよー!」
「あ―もう!後で遊ぶから!」
「約束?」
「ああ!」
「・・・分かった。じゃあ後で赤ちゃんごっ―――」
「ちょっと!?最後何か不穏な・・・ええい!覚悟を決めろ、コウ!」
自分の頬をバシッと叩き、気合を入れ直し、先程見た異能体がいる場所へ走り出す。道中にいる変異体を通りぬき様になぎ倒していき、異能体がいる車列へと辿り着く。
そこにはサングラスを掛けた男が優雅にコーヒーを飲みながら、自身が作った人間の剥製を眺めていた。
「ん?人がここへ・・・いや、君は少し違うようだね。」
男が席から立つと、コウの予想よりも男の身長は高く、頭が天井に届きそうなほどであった。
男が手を伸ばし、コウに手の平を合わせて手を握ると、コウの前方で爆発を起こし、コウの体が吹き飛んでいく。
「ぐっ・・・今、目の前が爆発したような・・・。」
「素晴らしい!私の爆発を受けても平気だとは!」
「平気?そんな事はないよ・・・。」
起き上がったコウの両足と両腕の電子音が叫び声のような音を上げ、コウが一歩前に飛び出すと、一瞬の内に男の懐に入り込んだ。
懐に入り込んだコウは、振りかぶった拳を男の腹部に放つと、男の体は五列先の車列へと吹き飛んでいく。
「僕は怒っているよ・・・!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます