第24話

突如としてシェリルの前に現れた三体の異能体。シェリルは三体の内の一体、蜂の異能体を狙い、斬りかかった。だが、異能体の背中から虫の羽が生え、シェリルの攻撃は避けられてしまう。すかさず銃剣に変形させて撃ち落とそうとするが、そこへ巨人の異能体が周囲に停められていた車を投げつけてきた。シェリルは投げつけてきた車を避けながら巨人に弾丸を放つが、弾丸が巨人の付近に近づくと、巨人の体から噴き出している炎の熱で溶けてしまった。


「ちっ!段々火が嫌いになってきた!」


巨人は雄たけびを上げながらシェリルに突進し、更に上空から蜂の異能体が毒針を撃ちおろした。シェリルは大剣に変形させて毒針を払いのけ、突進してきた巨人に大剣を勢いよく振りかぶった。大剣が巨人の顔面に当たり、巨人の体は建物に吹き飛ばされていく。

前回の反省を活かして、新しい剣は耐久性に優れており、巨人の熱に触れても刀身は無傷のままだったが、巨人の体が吹き飛ぶ際に火の粉が散布され、シェリルのコートに付着し、燃え上がっていった。急いでコートを脱ぎ、巨人がいない内に上空にいる蜂の異能体を仕留めようと銃剣に再度変形し、羽を狙って撃った。

弾丸が羽に当たり、バランスを取れなくなった蜂の異能体は地上に落ちていき、落下してくる場所にシェリルは駆け出し、大剣へと変形させて落下してきた蜂の異能体の体を引き裂いた。

蜂の異能体の上半身と下半身が宙を舞い、破損した部位を修復しようとする所へシェリルがトドメの突きを心臓部に突き刺す。

蜂の異能体は灰と化し、空へと舞い上がっていくと、巨人が吹き飛んでいった建物が爆発し、更に激しく炎が吹き出した巨人の姿があった。


「歩く火災現場かよ・・・。」


真っ向からの勝負では熱で体が溶けてしまう事を危惧したシェリルは、変異体の群れの中に飛び込み、変異体達を盾代わりにして利用する。

だが、変異体はただ盾として利用される程甘くはなく、目の前に飛び込んできたシェリルに次々と襲い掛かった。

しかし、これこそがシェリルの狙いであったのだ。


(巨人は私にブッ飛ばされて怒っているはずだ。そうなれば見境なく私に突っ込んでくるはず。突っ込んでくる巨人の熱を逆に利用すれば、変異体共をまとめて燃やし尽くせる!)


案の定、巨人は咆哮を上げながら変異体の群れの中にいるシェリルの元へと突っ込んでくる。巨人が衝突した変異体は溶け、通り過ぎていく時に散布された火の粉を浴びた変異体の体は激しく燃え上がった。

そうして周辺の大多数の変異体を燃やし尽くし、シェリルは突進してくる巨人に大剣を前に構えて、待ち構える。


(よし、後はあの巨人を倒すだけ!倒すとしたら心臓部に一突き、火の粉で多少は傷を負うが、奴を無傷で倒すことは出来ない!なら、多少リスキーにでも!)


そして、正面から突っ込んできた巨人の心臓部目掛けて、シェリルは突きを放った。大剣は巨人の心臓部に刺さったが、巨人の突進の勢い止まらず、大剣が突き刺さったままシェリルを押し出していく。

前に進むごとに大剣は徐々に巨人の体に深く突き刺さっていくが、シェリルと巨人の距離が縮まったせいで、巨人の体から散布される火の粉を浴びてしまう。


「ぐぅっ!?」


全身に感じる激痛に顔を歪ませるが、シェリルは大剣を離さず、逆に強く握りしめ、更に巨人の体の奥深くへと突き刺していく。


「ガァァァァァァ!!!!」


大剣は巨人の体を貫き、巨人は獣のような断末魔を上げると、燃え上がっていた炎は鎮火し、巨人は灰と化して空へと舞い上がっていった。


「やっと、くたばったか・・・。」


二体目の異能体を倒したシェリルだったが、シェリルの体は火傷で全身激痛に襲われ、体の中は毒に侵され、大剣を支えにしなければ立つ事もやっとの状態であった。


「くそ・・・結構キツイな・・・だが、後はあのイモムシ野郎だけ・・・!」


残ったイモムシの異能体の方を見ると、いつの間にかイモムシは地面に横たわっていた。


「何だ?まさか、勝手に死んだ―――」


すると、イモムシの体に一筋の線が入り、中から全身真っ白の人型の異能体が現れた。その異能体が太陽を浴びると、真っ白だった全身が黒く染まり、鎧のような外骨格が形成された。


「・・・訳ないよな。」


異能体は腕の鎧から鋭い剣を突き出し、シェリルに向かって襲い掛かってくる。鋭い剣で襲い掛かってきた異能体を大剣で防ぎ、クルリと異能体の後ろに回り込み、大剣を振り下ろした。

しかし、異能体の鎧は硬く、ガキンという金属音と共に大剣が弾かれてしまう。


(硬っ!?上手く力を入れられなかったとはいえ、この大剣が弾かれるなんて!)


鎧の硬さに驚いていると、異能体が振り向きざまに放った蹴りが脇に当たり、シェリルは吹き飛ばされてしまう。

宙を舞ったシェリルの体は地面に激突し、痛みと毒で意識が遠のいていく。


(まずい・・・意識が・・・)


意識を落とさぬよう必死に堪えるが、そこへ異能体がトドメを刺そうと走り出してきていた。


(このままじゃやられる・・・早く、立ち上がらないと・・・!)


体に力を入れようとするが、指を動かすのがやっとで、立ち上がれそうにない。最早ここまでか・・・そう思っていたシェリルだったが、駆け付けて来たレオが、シェリルの前に立ち、襲い掛かってきた異能体の剣を刀で防いだ。


「レオ・・・!」

「まだまだ甘いな、シェリル。」


レオは異能体の剣を払うと、左手に持っていた鞘で異能体の胴体を突き、吹き飛ばした。

倒れているシェリルを見下ろし、溜め息を一つ吐くと、ポケットから赤色の液体が入った小瓶をシェリルの目の前に落とした。


「それを飲め。絶望的な味だが、体を動かせる程度までには回復できるだろう。」

「・・・薬は嫌いだよ。」

「瀕死の身でウダウダ言うな。向こうの変異体は一掃した。後は、あの異能体だけだ。」


シェリルは目の前にある小瓶を取り、中に入っている液体を一気に飲み込んだ。口の中で鉄と生ゴミが混ざったような味が広がり、一瞬意識を失いかけたが、何とか意識を保ち、口直しにポケットからタバコを取り出し、吸い始めた。


「それじゃ、私は休憩してるから。後は頼んだよ。」

「随分とくつろぎやがって・・・まぁいい。」


レオは一度刀を鞘に納め、異能体の方へ向かっていく。異能体はもう片方の腕の鎧からも剣を突き出し、二刀流でレオに襲い掛かってくる。

二つの剣がレオに振り下ろされた瞬間、レオは素早く抜刀し、その二本の剣を真っ二つに斬り裂いた。


「この程度の相手なら、一人で十分だ。」

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