第23話

燃え上がる議会のタワーから出てきた変異体の群れが地上に下り、ロンドの住人を見境なく殺戮していく。男も女も関係なく、見るも無残な殺され方を見て住人達は叫び声を上げながら一心不乱に逃げ、それをサポートするように警官達が変異体に果敢に挑むが、警官達が持つ武器では変異体を殺すことは出来ず、瞬く間に殺されてしまう。


「お母さん!お父さん!」


一人の少女が、動かなくなった両親を必死に揺すって動かそうとしている所に、異様に首が長い人型の変異体が近づき、顔全体に開いた口が大きく開き、少女を飲み込もうとした。

そこへ、駆け付けたシェリルが変異体の首を斬り落とし、泣きじゃくる少女を変異体から逃げていく一人の若い男に任せた。


「その子を連れて逃げろ!」

「あ、あなたはどうするんですか!?」

「私はこれから仕事さ。邪魔になる前に早く行け!」


男は少女を抱え、走り去っていった。


「さて・・・ここ一ヶ月で大分減らしたと思ったんだが、そうでもなかったようだな。ま、なんにせよだ!一か所に集まったのは丁度いい!全員まとめて斬り殺したやるから、今の内に祈りでも捧げとくんだな!」


シェリルは変異体の群れに走り出し、次々と斬り裂いていく。逃げ惑っていた住人達はシェリルの戦う姿を見て、次第に足を止め、やがてシェリルに歓声を送り始めた。


「頑張れー!」 「いいぞー、姉ちゃん!」 「そんな化け物共ぶっ殺しちまえ!」


野次馬の声に気付いたシェリルはハッと住人達の方へ顔を向け、叫び声を上げた。


「馬鹿野郎!!!さっさと逃げろ―――!!!」


住人達に逃げるように叫ぶシェリルだったが、その瞬間、空から降りてきた飛行型の変異体が野次馬達を掴み、空中に放り投げて飲み込んでいく。


「言わんこっちゃない・・・!」


シェリルは剣を銃剣に変形し、空を飛ぶ変異体を撃ち落としていく。そこに、地上にいる変異体がシェリルに襲い掛かり、シェリルは急いで剣に変形し、今度は鞘も使って変異体達に対処する。


「くそっ、レオ!手を貸せ!」


なだれ込む変異体に苦戦するシェリルの元に刀を抜刀したレオが、次々と変異体達を斬り殺していく。

二人は健闘するが、変異体の数は一向に減る事は無く、続々と二人がいる場所へと集まってくる。

変異体に囲まれたシェリルとレオは背中合わせになり、お互いの安否を確認し合う。


「シェリル、もうギブアップか?」

「馬鹿言うな。あんたこそ、ご老体の体には堪えるものがあるんじゃないのか?」

「なら、お前が奴らの6割を相手にしろ。ご老体を気遣いたいならな。」

「はいはいよ、任された。」


二人は一斉に前に飛び出し、変異体の群れの中に飛び込んだ。シェリルは大剣で縦横無尽に叩き斬り、レオは素早い動きで変異体を斬り裂いていく。

すると、上空に三機の武装ヘリが現れ、見ると機体には議会のマークがあった。願っても無い援軍の登場に安堵したのも束の間、三機のヘリに地上から伸びてきた触手が機体を巻き付き、そのまま握り潰してしまう。

シェリルが触手が伸びてきた方を見ると、変異体の群れに混じって異能体が紛れ込んでいた。


「異能体まで・・・!レオ!変異体は任せた!私は異能体を片付ける!」

「なるべく早く済ませろ!一人でこの数は手に余る!」


シェリルは変異体の頭の上を跳び回っていき、異能体の元へと辿り着く。異能体はタコの足の様な髭を生やし、腕にも触手がいくつも生えており、シェリルへ触手を鞭のように振りかぶった。

上や横から迫ってくる触手を剣で斬って異能体に近づき、異能体の心臓部分に向けて突きを放った。

だが、地面から生えてきた触手が剣を掴み、異能体の体に突き刺さる前に止められてしまう。

無防備になったシェリルの胴体に異能体は伸ばした触手をぶつけ、シェリルの体を変異体の群れの方へ吹き飛ばした。

吹き飛んできたシェリルを変異体達は大きく開けた口で迎える。シェリルは吹き飛ばされながら剣から大剣へ変形し、口を開けて待ち構えている変異体達の体を真っ二つに叩き斬った。

転がりながら着地したシェリルはもう一度異能体へと走り出し、もう一度突きを放った。だがまたしても触手に止められてしまう。

すると、シェリルは剣へと変形させて、掴まれている鞘から剣を引き抜き、今度こそ異能体の心臓部に向けて突き刺した。

異能体は籠った声で叫び声を上げ、灰と化した体が空に舞い上がっていく。


「よし、それじゃあ早くレオの所に・・・!」


異能体を倒し、レオの援護に向かおうとした矢先、シェリルの前に体の節々から炎を吹き出す巨人が立ち塞がる。


「二体目!?」


突然現れた二体目の異能体に釘付けになっていると、背後から現れた蜂の顔をした異能体が発射した毒針が背中に刺さり、すぐに針を抜くが、体に入り込んだ毒で目の前が歪んで見えてくる。


「くそっ・・・三体目、かよ・・・。」


前と後ろにいる異能体を交互に警戒していると、シェリルの真下から地響きが鳴り、シェリルが後ろに飛んだと同時に、地中から巨大なイモムシの形をした異能体が現れた。


「・・・勘弁してくれよ。」


一体だけでも脅威となる異能体が、今シェリルの前に三体も現れ、おまけに自身の体は毒に蝕まれ、ハッキリとした景色を認識できずにいた。視界だけでなく、手は震えだし、酷い寒気にも襲われるようになる。

シェリルは自分の頬を殴り、意識を無理矢理にでもハッキリとさせ、目の前にいる三体の異能体に剣を向けた。


「先にぶっ倒れるのは私か、あんたらか・・・いずれにせよ、私が倒れる時は、てめぇら全員私に殺された後だ!」


シェリルは自身を鼓舞し、待ち構える三体の異能体に向かって斬りかかっていった。



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