第12話 とある少女の思い2

 話が長くなっちゃったけど、とにかく佐藤に感謝していることが言いたいわけ。だからあたしは落ち込んでいる佐藤に何かしてあげたかった。

 でも、そもそも佐藤に会えなければ何もできないしどうしよう……てか、なんで今まで連絡先交換しなかったんだろう……

 そんなことを考えているといつの間にか授業が終わって放課後になっていた。クラスメイトが部活や遊びに向かう中、担任の先生が佐藤の机の中のプリントを回収しているところが見えた。

 あたしはもしかして、と思い先生に声をかけた。


「先生、そのプリントどうするんですか?」


「今日、佐藤君の家に届けようと思ってね」


 やっぱり、思った通りだ。

 あたしが先生の代わりに届ければ佐藤に会える、そう思い先生に必死にお願いした。


「あ、あたしが届けてたいです!良いですか!?」


「ひ、柊さん?落ち着いて?ね?」


「す、すいません」


 あたしの鬼気迫る勢いに先生が驚いてタジタジになっていた。やっちゃった、あたしは恥ずかしくなり、顔が熱くなっていく。


「ふふっ、ん~そうね~、佐藤君もクラスメイトが届けたほうが嬉しいわよね。分かったわ、じゃあお願いするね」


「あ、ありがとうございます」


 先生は最初は驚いていたけど、あたしの様子を見て急に優しい表情を浮かべてプリントを手渡してきた。


「プリントに貼ってある付箋に住所が書いてあるからね、気を付けてね」


「分かりました」


「佐藤君のこととても心配してるんだね」


「そ、そんなんじゃないですからっ」


「はいはい、お願いね」


 そう言って先生は教室から出て行った。

 途中、先生がニヤニヤしながら聞いてきたので思わず声を荒げてしまった。


先生から思わぬ質問をされて戸惑ってしまったけど、なんとか佐藤に会うことが出来そうだわ。


 そんなこと考えていながら教室を出ようとすると誰かにぶつかりそうになってしまった。


「きゃあ!気をつけなさいよ!……あれ?……松浦?」


 ぶつかりそうになった相手は、佐藤と同じ部活の松浦だった。どこか気まずげな表情を浮かべてあたしに話しかけてきた。


「柊か、ちょっと聞きたいことがある。今日も佐藤来てないのか?」


「来てないわ」


「そうか……手間かけさせたな」


「あたしこれから佐藤の家にプリント届けに行くんだけど、なんか伝えとこうか?」


 直ぐに去ろうとする松浦の後ろ姿があまりにも哀愁漂っていた為、思わず声をかけてしまった。


「……じゃあ、佐藤に俺はいつまでも待ってる、そう伝えてくれ」


「分かったわ」


 松浦はそれだけ言って去って行ってしまった。恐らく部活に向かったのだろう。佐藤にも心配してくれる友達がいることに少し安心した。きっと佐藤に伝えたら喜ぶわ、そう思い少し嬉しくなった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あたしはスマホ片手に住宅街を歩いていた。スマホを持っていない方の手には道中購入した菓子折を携えている。


「この辺りだと思うだけど……」


 そうつぶやきながら周りを見渡す。

 すると佐藤という表札が目に入ってきた。少し小さめの二階建て一軒家だった。


「あ、あったわ」


 良かった。迷子になったらどうしようかと思ったわ。少しほっとしながらインターホンの前に立つ。


「ちょっと緊張してきたわね……」


 いざ、佐藤の家を目の前にすると緊張してきた。

 いきなりクラスメイトが来たらびっくりするわよね……佐藤の両親に会ったらどうしよう……というかそもそも佐藤は一人になりたいかも……

 ついにはそんなことまで思い始めてしまった。


「ええい、どうにでもなれっ」


 考えたらきりがないので勢いでインターホンを押すことにした。


ーピンポーン


 はいはい~という女性の声と共にとても美人なお姉さんが玄関から顔を出した。あれ……?佐藤にお姉さんっていたっけ……?お母さんにしては若すぎるし……


「佐藤君のクラスメイトの柊です、佐藤君に学校のプリントを届けに来ました、あとこれ、菓子折です」


「こーくんのクラスメイト……、あ、あ~、わざわざありがとう~、私から渡しておくから代わりに私が受け取るね」


 あたしがクラスメイトと知るとお姉さんは焦った表情を浮かべ、早口でまくし立てた。


「いえ、佐藤君に直接会って渡したいんですけど大丈夫ですか?」


「だ、だめよ、こーくんは体調悪いんだからっ、うつしちゃわるいし」


「少し会うぐらいいいじゃないですか、そもそもあなたは誰なの?佐藤にお姉さんがいるなんて聞いてないけど……」


 あたしはお姉さんが佐藤に会わせる気がないことを感じ取り、お姉さんを問い詰めた。正直、途中から敬語を取り払うぐらいイライラしてきた。


「私はこーくんの幼馴染。こーくんの姉みたいなものよ」


「幼馴染……、ならあんたにあたしを止める言われようはないわね」


「やめて!こーくんはあなたたちのせいで傷ついているんだよ!」


「あたしは学校の人たちとは違うわ!」


 あたしはそう叫んで半ば強引に家に上がり込んだ。正直自分でも驚いてる。普段であればこんな無理矢理押し入る事なんてしないのに……

 あの幼馴染を見ていたらなんか自分でもよくわからない感情が沸き上がってきたのだ。


 取り合えず今は佐藤に会うことが先だ。


 恐らく佐藤の部屋は二階だろう。家の中をぱっと見た感じ、空気感が違うのが分かる。一階は大人な落ち着いた感じの空気感で、二階からはいつも佐藤から感じる空気感が伝わってきた。決して佐藤の匂いをかぎ分けて向かってるわけではない。


 二階に上がると光希という名札が貼られた扉があった。後ろからはさっきの幼馴染が追ってきていることもあり、あたしは勢いよく扉を開けた。


ーバンッ!


「佐藤!!!あんた何してるわけ!?」

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