第5話

「エルフ!エルフ!エルフ!」


 ヤバい、俺はめっちゃ興奮してる。


 森耳族エルフは相当な歳をとっていても、外見は20歳前後。

 20歳までは人間と同じように成長するが、そこから先はほとんど成長しないらしいのだ。

 エルフの男も女も皆が顔が整っている。女性は胸もデカくて、尻の形も美しいという評判である。

 エルフの身体、それは男女とも極上の肉体であった。

 それ故に、はるか昔からエルフの女性は奴隷売買として売られることが多かったという。

 本当に可哀想な種族であるが、アイナノア王国は比較的安全な国として成り立っていた。

 エルフの男性も、女性も人間よりも背が高い人が多い。

 因みにであるが、アドラーの身長は214cm。エルフの中では大きい方である。






 さて…

 歩けば目の行き場に困る。

 女を見るとつい2度見してしまう。


  ーーー胸にダイブしたいーーー

  ーーー尖った耳を舐めたいーーー


 道を歩くだけで欲望が次から次へと湧いてくる。

 我がムスコは興奮状態。

 道行くエルフたちにニヤニヤ見られてクソ恥ずかしい。

 そもそもエルフの女性がエロ過ぎるのだ。



 エルフ、ヤバすぎである。





 俺は、魔王アドラーの城の中に住んでいながら、1ヶ月、アドラーから魔術を習った。

 魔力はアドラーとほぼ変わらない量まで増えたという。

 もう魔王を名乗っても良い魔力量まで上がったのだとか、アドラーは言っていた。

 魔王は強くなくてはならない。それ故に、一定の魔力量以上ではないと魔王を名乗ってはいけないのだ。

 俺は魔王になるつもりは毛頭無い。魔王とかになったら間違いなく日々は忙しくなる。

 そんな日常を俺は望んでいないし、陽菜も望んでいないだろう。

 俺は陽菜を勇者レーゲンヴルムから救ったあとにのんびり暮らしたいのだ。のんびり冒険者でもしてみようか。



 ………………

 …………

 ……



 午前中は王立図書館で魔法を頭に叩き込む。

 頭に叩き込めば、勝手に魔法として俺の技となってくれるのだ。

 俺は今までに287個の魔法を習得した。スキルの【情報具現化】で習得する為のスピードが早くなっていたから出来た技である。


 天使魔法、悪魔魔法、精霊魔法、妖精魔法、古代魔法を結構な量覚えた。

 因みに最初から持っていた爆発魔法は精霊魔法に分類される技である。



 当然、魔法は習得しただけでは使えない。午後からはアドラー指導のもと、魔術の発動訓練をする。

 指先から魔法を発動させるのは思った程簡単であった。しかし、剣先から魔法を発動させるのは至難の業であった。

 剣を握り強く魔法をイメージすることによって、剣先から魔法やスキルを出すことが出来るのだが、これが案外難しい。剣を握ることや振り回す事に集中しすぎて、念じた魔法やスキルが剣先から出てこない事が多かった。


 エルフの一族に伝わるモン○ターエナジーみたいな少し怪しい魔力活性薬を飲んで、深夜もドーピングしながら極めるのだが、睡眠不足はとてつもなく厳しいし苦しい。

 睡眠時間は2時間。残りは全て魔術の特訓なのである。

 ダンジョンの奥にいる強力な魔獣と戦ったり、空を飛ぶドラゴンと戦わされたりもした。いきなり海に突き落とされて、そこから岸まで30キロ泳がされたり、山からノールの町まで丸1日走らされた日もある。

 言うまでもなくアドラーは鬼教官だ。しかし、アドラーのお陰で、沢山の魔法やスキル、耐性を手に入れたのだ。

 そこは感謝しなきゃならないのである。








 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 エルフの国、アイナノア王国は三方を森、一方海に囲まれた国である。

 海では、豊富な魚介類を獲れる。陸では、キノコやじゃがいも、野菜を収穫し、高原の牧場では沢山の食用肉を育てている。


 しかし。

 ここの世界の食べ物は、ただ焼いたり茹でたりしただけであった。

 トリュフとかスパイスとかも森に入れば腐るほどあるのだが、食べ方は似たり焼いたりするだけ。味は塩味が殆どである。

 正直なところ勿体ない。元いた世界なら、もっと色々な調理方法があっただろうが。

 人間の国だろうと魔物の国だろうと、料理がつまらないのである。

 そこで俺は、休暇を取っていた今日を利用して、今から催し物をする予定である。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 俺はアドラーに許可をとって、首都ノールの大広場に調理用具を並べていた。

 今からハンバーグを作るのだ。

 観客席には、アドラーや大臣、貴族までいる。ハンバーグ作りを楽しみにしてくれていて、とても嬉しい。


 まずは目の前にある牛肉をミンチにする。ラシェンドの友人のドワーフが作った包丁で、今までの料理でも使用していた。この包丁はとてつもなく切れ味がいい。

 包丁を鞘から抜いて、牛肉に切りかかる。


 シュパッ!シュパパパッ!



 3000人分のミンチが一瞬で出来上がった。

 王城のコック30人と一緒に、それらに炒めた玉ねぎ、牛乳に浸したパン粉、卵、香辛料を入れて冷やしながらよく混ぜる。

 冷やしながらじゃないと、手の温度で肉の油が溶けだしてしまうのだ。

 混ぜたら、一人一人の大きさに分けて、焼く。


 トリュフの極上の旨みと、トマトソース、ワインの香りが引き立つソースを加えて完成!


 早速アドラーに食わせると…


「う、美味い!よくやった、亮太!毎日これが食べたいぞ!」


 涙を流しながら感動してくれた。

 匂いに連れられたエルフもやってきて、広場は大混乱だ。

 必死に抑え込んでいるのだがドヤ顔になってしまう。

 みんなの笑顔が見れるだけで、こんなに嬉しいんだな。



 俺が使った材料は、全てこの国で賄えるようになるだろう。

 香辛料、小麦、稲は隣国の商人から買い取り、それを大規模に栽培させていくつもりのようだ。

 いずれは大量生産も可能だろう。




 エルフの女の子がハンバーグを欲しそうにしている。

 同年代だろうか。今までにエルフの中で最高級レベルで可愛いし、堪らなく身体がエロい。

 美しい髪と胸。なだらかな双丘とエメラルドブロンドの髪はこの世の美しさの象徴のようだった。髪に着けた蝶のアクセサリーが似合っていてとても可愛い。

 極めつけは足であった。

 スカートから伸びる2本の足は、細すぎず最高な美しさを放っている。

 更に、ニーソが柔らかい太ももに、ハイレベルの絶対領域を作り出していた。


 この子を彼女にしたら、俺はどれだけ最高な毎日を送れるだろうか。

 そんなことを想像すると鼻の下が伸びそうになった。

 しかし、現実は甘くないだろう。

 俺みたいな陰キャがこんな美少女とくっ付くのは良くない。せめて友達で止めなくてはならないのだ。





 その子はハンバーグを食べたいと言う。

 笑顔に負けて、ハンバーグを食べさせる。ハンバーグを、幸せに溢れたような表情で食べてくれている。


「美味しい!こんな料理初めてだよ…!作り方、教えて!こんどは私が作ってリョータくんに食べさせたいの!」


 と、言ってきた。

 声も本当に可愛いし、頬張る時の可愛い表情が俺の性癖にぶっ刺さった。

 ムスコは既に超興奮状態である。

 満面のスマイルで必死にそれを誤魔化す。


(ダメだ、この子にはもっと良い他の人がいるんだ。俺は絶対に恋愛感情を抱いてはダメだ!)

 強力な精神で感情を押し潰す。


「そうだな…友達になろうよ!そしたら教えてあげる」

「解った!私はシャルロット。よろしくね!」


 シャルロットは可愛いだけじゃない。スキルで見たところ、魔力量が半端ない。

 俺に並ぶくらいの魔力量だ。

 こいつ、只者じゃない、そう直感で悟った。

 友達になりたいと思ったのは、強いから敵に回したくないと思ったという理由もある。

 それに、こんな可愛い子と仲良くなりたくない男子なんて、いるはずが無い。

 現実は甘くないのだが。



 俺とシャルロットがイチャついているところに、1人の男が現れた。

 アドラーである。


「シャルロット?お前も来てたのか!」

「はい!叔父上陛下!」

「え…?」


 どうやら、シャルロットはアドラーの姪っ子のようである。

 17歳で、両親は既に亡くなっているという。今はアドラーの保護のもと屋敷に住んでいるらしい。

 今日は護衛を振り切って屋敷を飛び出してきたのだとか。

 今日も俺がハンバーグ作りを公演すると聞いて、新しいもの見たさで飛び出して来たらしい。

 しかし、アドラーと歳が離れすぎである。アドラーは5200歳だと言うが、姪のシャルロットは17歳。どうやったらそんな家庭になるのだろうか。サ〇エさんもびっくりである。



 (アドラーの親戚だから、魔力も多いのだろうか)



 シャルロットと別れて、俺とアドラーは城に戻る。

 これから厨房のコックに、料理をを教えるつもりだ。


 俺は家で1人の時間が多かったから、料理は一通りこなせるつもりだ。

 しかし、向こう前世ではトリュフって高級品なのに、ここでは大量に採れている。


 (もしかして、ここではトリュフの価値ってそんな無いのかな…)


 そんな事を考えていたら、急にアドラーの持つ水晶から、


「報告します。アドラー様、リョータ様。“例の3人組”が国境付近に現れました。

 まもなく、西の検問所の馬車の列に並ぶでしょう。至急、西の検問所へお越しください」



 という国境警備隊からの報告が入ってきた。

 アドラーは、勇者レーゲンヴルムの情報を得る為、時々国に来るレーゲンヴルムの部下の商人3人組から情報を集めようとしてくれているのだ。

 もし来たら2人で聞き取り拷問をする事になっている。



 (しかし…今来るとかタイミング悪すぎるだろ。

 料理を教えてエルフにモテるチャンスだったのに!)

 俺は心の中で愚痴をこぼす。


「亮太。武器を持って俺に触れろ。今から移動するぞ。」


 軽く頷き、アドラーがワープ呪文を発動させる。

 俺とアドラーは光に包まれる。


【空間転移】を利用して、俺とアドラーは検問所へ着いた。


 《大林亮太、スキル【空間転移】を獲得しました。》


 ついでに新スキルゲット。この技は使いやすそうだから使い慣れておきたい。



「亮太。復讐したい気持ちは解るが、聞き出す前に殺すんじゃねぇぞ?」


 アドラーがなんか言ったが、はっきりと聞こえなかった。

 アドラーはそのまま検問所に入る。

 俺は城壁の外に出て、検問所に入ろうとする馬車たちを見つめていた。






 俺はニヤリと笑う。


「………さて、復讐の時間だ。」


 紅く染まる空の下、俺の低く不気味な声が響いた。







 未来では、アイナノア王国の未曾有の大災害と呼ばれる事になるのだが…

 この時は馬車の中にいたシュバイス以外、誰もが知らなかった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 《大林亮太》


 ランク:A+

 魔力:1440000

 種族:人間(転生者)

 個人特殊能力キャラクタリックスキル

 [暗殺者アサシン

【気配遮断】 【魔力感知】 【縮地法】【詠唱破棄】 【急所突きクリティカル】 【情報具現化】【思考加速】

 [極炎][極氷][極雷][極風][極水][極光弾]

 [空間転移]


 耐性:熱無効耐性、物理攻撃無効耐性、魔法無効耐性


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