第4話
3ヶ月が経った。
陽菜や勇者レーゲンヴルムの情報は全く掴めていない。
陽菜は無事なのだろうか。
俺は今では
【気配遮断】を完璧に使いこなし、相手に一瞬で間合いを詰める技【縮地法】を新たに獲得して、ラシェンドに近い動きになったのだ。
【空間感知】は【魔力感知】に進化している。感知能力も大幅に上がったのである。
ーーー魔力感知でもラシェンドの動きを感知できないのだがーーー
俺は双剣を使うよう勧められ、刃渡り50センチの双剣を使って戦っている。
剣道の二刀流とは全く違う。どちらかというとスターウ〇ーズのスピンオフアニメに出てくる女の子の戦い方に近い。
俺の武器はサーベルと日本刀を合わせたような武器である。刃が軽く反っていて、鍔の部分は日本刀スタイルに改良した剣は、斬れ味、攻撃力、頑丈さを併せ持つ。
これを打ってくれた鍛冶職人も、相当な腕を持つ職人だった。
ラシェンドの古い友人で、伝説の鍛治師と呼ばれるドワーフの男だという。
この剣を作ったはいいのだが、職人も伝説級で、材料も高額なため金貨50枚の入った財布に大きな穴が空いた気がした。
ラシェンドは、
ラシェンドの家の庭で俺は鍛えて貰っている。
木刀で戦うことはしない。
本物の剣での稽古である。
通常の持ち方でラシェンドの首筋目掛けて振る。
「まだまだ遅いぞ」
俺の攻撃を避けられる。
「まだまだ!」
後ろに回り込んできたラシェンドの一撃を、左の剣を逆手に持ち替え防御する。
キィィィィン
金属音が森の中に響き、鳥たちが一斉に飛び立つ。
「やっ!」
ラシェンドの方向に回転斬りを仕掛ける。ラシェンドは避けずに剣で防御し、俺の剣を受けた反動をそのまま俺に返す。〝怒龍の反撃〟という物理の反動を相手に跳ね返す技だ。
「くっ…」
俺は弾き飛ばされる。しかしここでやられるような雑魚ではない。空中で剣を逆手に持ち替え、地面にぶつかる瞬間に手をつきバク転する。
再び構え、【縮地法】で間合いを詰める。
しかし、俺が攻撃する前に、ありえない角度から猛烈な勢いの剣撃が嵐のように襲ってくる。
呼吸をしただけで命取りだ。
ラシェンドの剣を受け流しながら空中回転斬りを行う。
しかし…
着地に失敗した。
昨日の雨でぬかるんでいた所に着地してしまった。
「ぬかるみの中に落ちた時時こそ縮地法を使えと教えたはずじゃ」
顔から泥にダイブした俺の頭に、ラシェンドが峰打ちする。
今日も勝てなかったーーー
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「さて…亮太。お主は相当強くなった。短期間の稽古で儂とここまで戦える者はお主が初めて。お主はすでに強い。
じゃがの、剣技と【詠唱破棄】を組み合わせれば、更に強くなれるぞ」
「そ、そうなの⁉︎ 組み合わせるってどういう事…?」
「組み合わせれば剣先から魔法を発動させる事が出来るのじゃ」
「え、そんな事も出来るの…?」
「左様。儂はその術を使えないのじゃが…隣国に魔王が暮らしておる。
あやつは我が弟子であり魔術と剣術を組み合わせた戦術を得意とする。どうだ亮太。あやつの元で学んでみては如何かな?」
断るわけがない。YESだ。
隣国の魔王は、《
アドラーはラシェンドから剣術を学び、魔術と剣術を組み合わせて侵略した勇者軍を破ったという。
その時に魔王に認められ、現在は11名の魔王の
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アイナノア王国。そこはエルフの王によって建国された国だ。
首都ノールは、中世ヨーロッパのような美しい景観の街で、魔法によって作られた完璧な都市である。
ノールの中央にあるのが王の城。周りの木と調和された美しい城の中で、俺たちは魔王アドラーと話をしていた。
魔王アドラーは、プラチナブロンドの髪を靡かせた。
アドラーの蒼眼が俺をじっと見つめる。
アドラーのランクを測ったら、ラシェンドと同じくSランクという結果が出た。
「久しいのう。アドラーよ」
「おひさしぶりでございます。ラシェンド師匠」
「其方に教えたのはもう340年も昔になるのう…」
「そうですね…とても懐かしいです」
「ところで、アドラーよ。今、儂は新たに人間の弟子をとっておる。この少年は異世界から来たようでの…」
ラシェンドが俺の説明をする。
「剣術の上達速度はこれまでの弟子の中でずば抜けて早い上に、【詠唱破棄】スキルまで持っておる少年じゃ」
「!?」
驚いた魔王アドラーが俺を見る。
「アドラーよ。この者に術を教えて欲しいのじゃ」
「……」
「アドラーさん。俺に教えてください」
「…構いませんよ。むしろ大歓迎です、師匠。亮太君、宜しくな」
「宜しくお願いたします」
「さて…亮太君。俺と手合わせ願おうか。師匠が認める程だしな。俺についてこい!」
俺たちは城の中の訓練場へ案内される。
「木刀を構えろ!」
アドラーが俺に言う。
構える。アドラーはすぐに動いた。
「ふっ!」
アドラーが縮地法で間合いを詰める。
ーーーこいつ、ラシェンド並にクソ速いーーー
ヒュッ
剣の軌道がギリギリ見える。
俺は回避しようと身体を動かすがーー
剣が物凄い速さで俺の頬を掠った。
頬から少し血が出る。ヒリヒリする。
既にアドラーは第二撃を出そうと構えている。
ヒュン
ガッ
回避する時間が無い。必死に受け止める。
アドラーが横振りする。
俺はバク宙で躱す。
「ほぅ。中々の身体能力だな。」
「ありがとよ!」
今度はこちらの番だ。
縮地法を使いアドラーの背面から、頭部を狙った空中回転斬りを仕掛ける。
アドラーが剣で受け止めた。
「ほう!やるな!流石は俺の弟弟子よ!
喰らえ!
炎の渦が俺を囲む。炎の監獄魔法だ。
縮地法で炎の渦を突破する。
「このくらいならやはり効かぬか…」
「当たり前だ。ラシェンドから教わったからな。」
今度はアドラーが真上から剣を振り下ろす。
俺はアドラーの背後に回り込み、首筋を狙う。
「フッ…」
アドラーは瞬間移動する。ラシェンドと同じように魔力感知をくぐり抜けて。
嵐…と言うほどじゃないが、数多の剣撃がえげつない角度から切り込んでくる。
回転斬りと蹴り技で守り抜く。スピードをかけて畳み掛ければ勝てる。
閃光。
激しい光。魔力感知が無ければ、完全に目をやられていた。
空間感知から進化して良かった。と心から思う。
今度はアドラーが俺から距離をとった。
「さて…そろそろ終わりにしよう!」
アドラーが剣先を俺に向ける。
「「煉獄の極められし炎よ、敵を骨ごと焼き尽くせ! 〝極炎球ノワファイア〟!!」」
アドラーは必殺技のようなセリフを言った。
アドラーの剣先から高圧縮された火の球が出現する。
ーーーこいつ…炎の最上位スキルを出しやがったーーー
名前は知っている。魔法ではない。アドラーのスキルだろう、
極炎は、炎のスキルの中で上位に位置するスキルである。
炎の最大温度は摂氏2700度。えげつない。
制御できない者がこの技を出すと、その者や辺り一面が焼き尽くされる。
その魔法を、周りが燃えないようアドラーは制御している。
「まさか、俺を殺す気…?」
「お前ならこれを避けられるだろうし、最悪当たっても死ぬことはない。」
「はぁ?1000度で人間は死ぬぞ!?俺が死ぬだろうが!」
「まぁまぁ、避けてみなさい」
向かってくる極炎球。縮地法を使って避ける事には成功した。
その時…
《大林亮太、熱無効耐性を獲得。これにより温度の影響を受けずに活動できます。
また、スキル『極炎』を獲得。》
天の声が響く。
アドラーが嬉しそうに笑う。
(なるほど…俺に耐性とスキルを付けるために極炎を放ったのか)
これで合格かな?と思った時。
「甘いぞ!〝バインド〟!!」
終わったと思って安心しきっていた俺に、アドラーの魔法が襲いかかる。
「ぐっ!!」
俺は縄で縛られた。
油断した俺の敗北である。
そんな訳で、俺の弟子入りは決定した。
早速勇者レーゲンヴルムについて質問したら、
「うーん、こっから西の地に城を建ててるのは知ってるけど…。それ以外の情報は持ってないな…」
そういえば…商人3人組が逃げて行った方向も西方向だった。
特訓が終わったら西方向に情報収集をしようか。
「あ、商人3人組は3ヶ月に1度くらいの割合で来るぞ?多分次に来るのは1ヶ月後かな」
思いがけない情報だった。
この3人には相当な恨みがある。レーゲンヴルムの事を
2ヶ月の間猛特訓し、情報収集後にレーゲンヴルムを叩く事にした。
「俺、頑張るよ。陽菜」
こうして、俺の魔術の特訓が始まったのである。
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《大林亮太》
[
【気配遮断】 【魔力感知】 【縮地法】【詠唱破棄】 【
[極炎]
耐性:熱無効耐性
所持魔法:爆発
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