第13話『紅い炎』

フリードは今、貰った地図を頼りに街を徘徊していた。


「ここかギルド長が紹介してくれた鍛冶屋は…」


――ガシャッ―


「すいません」


(いないのかな)


「すいません!!」


「聞こえてるわッ何度も呼ぶな鬱陶しい」


「あ、すいません…」


「で、なんの用だ小僧」


「剣と装備を作って欲しくて」


「あぁ?お前のようなひよっこに作ってやるもんはねぇ」


「あのッ」


「いいから帰った帰った」


「あのッギルド長から紹介があったと思うんですけど!!」


「ん?そういやそんなのもあったな、でギルド長が言ってたのがお前か?」


「はい、そうだと思います」


「なんだ、それならそうと早く言えよ」


言おうとしたんだけどそっちが遮ってきたんじゃとは勿論言わない。機嫌が悪くなられると困るのだ。


「名前は何て言う?」


「フリードって言います」


「そうか、俺はファブロっつーもんだ」


「ファブロさんよろしくお願いします」


「いや、ファブロでいいぞ」


「わかったよ、ファブロ」


「素材持ち込みと聞いているんだが、あるんなら出してみろ」


「はい、これです」


そう言って、オークの素材と使っていた武器を差し出す。


「おお、これは中々いいな、これは自分で刈ったのか?」


「はい、ギリギリ勝てました」


「そうか、これはオークの素材に見えるが少し違う…?いや、変異主か?」


「そうです」


「やっぱりか、このレベルの素材があればかなりいい装備が作れるぞ、何を作ればいい?」


フリードは要望を伝えた。


「わかった、完成まで一月ぐらいかかる、また1ヶ月後に来い最高の装備を用意しといてやる」


「よろしくお願いします」


―――――――――そして1ヶ月がたった今、装備が完成したという知らせが届いた。


「すいません~」


「おう、よく来たな出来上がってるぞ」


「ありがとうございます!!」


「装備は最高の出来だ、剣に至っては今までで創った中で1番の一振りになった」


「おぉ!!」


そう言ってファブロは店の奥から、2つの箱を持ってきた。


「よしっこれだ、まずは装備だ」


「オークの皮を主に使ったレザーアーマーだ。軽くて伸縮性が非常に高い、その上変異主だから防御力が通常のオークの皮より高く頑丈、しかもかなりの火炎耐性を誇る。近接で戦う冒険者にはピッタリの装備だ、フリードちょっと着てみろ」


フリードが装備を着けてみると、驚くほどフィットした。少し着けただけで性能の高さに気づくほど、今までの装備とはレベルの違う出来になっていた。


「すごい…」


「だろ?だが驚くのはまだ早い、次はこいつだッ」


ファブロが取り出したのは、深紅に輝く両刃の剣で、刃身は燃え盛る炎のように見える。


「そ、それは?」


「これは、オークの使ってたあの武器を溶かして打ち直して、それを基礎として魔石やらなんやらで加工して造った剣だ」


「この剣は、今まで俺が作ってきた中でも最高傑作だ。この剣は両刃の片手半剣になっていて両手でも片手でも使うことができる。俺の腕と素材の質によって切れ味、耐久性共に高水準になってる。そして、なんと言っても発火能力だ、もともとのオーク武器にあった発火能力をオーク変異主の魔石によって強化したんだ。」


「使ってみていいですか?」


「良いぞ、存分に使え」


フリードが、鞘から剣を抜くと真紅の刃が姿を表した。その刃身は思わず見とれるほど美しかった。


気を取り直して、真紅の剣を構え…振る、色々な角度から確認するように、一回いっかい確かに振り抜く。


「どうだ?」


「最高です…」


「まだだぞ、そいつの真骨頂は魔力を込めてみろ」


「魔力を込めるってどうやるんですか?」


「スキルを使うときと同じ要領でやってみろ」


「はい」


そうして、フリードが剣に魔力を込めると…


――――ボウッ


刃身から炎が上がった。それはあのオークの使っていた技そのもの、否それ以上のものだった。


「すごい…これがおれの剣…」


「おい見とれてないで、次いくぞ、そいつにはまだ最後の仕上げが残ってる」


「最後の仕上げ?」


「ああ、最後に剣に銘を刻むんだ」


「銘…」


「その剣の名を決めるんだ」


「俺が決めていいんですか?」


「当たり前だろ、お前以外に誰がつけるんだ、お前の剣だろ」


「俺の剣…」


(俺の相棒、炎を纏う真紅の剣、俺の前に立ちふさがる障害を真っ直ぐに焼き払う。オーク変異主との死闘の末手に入れた新たな力……よし、決まった)


「コイツの名は…猛火、……炎剣【猛火】だ。」


―――――こうして、長き旅を共にする相棒【猛火】が誕生した。



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