第12話『事後処理』
目を覚ましてから、数日後フリードは家に帰ってきていた。
何故、数日かかったかと言うと傷の経過を見るために解放されるまで時間がかかったのである。
迅速な治療のお陰で後遺症などはないのだが、右手から肘まで燃え盛る炎のような火傷のあとが残ってしまった。ちなみに、何故そこだけ火傷の後が残ってしまったのかというと、魔物にとどめを刺したときに炎の爆発をくらい、一番近かったのが剣を持っていた右手であった為、火傷の具合が酷く痕が残ってしまったのである。
(まぁ、ちょっと気になるけど体に異常はないし大丈夫だろう、なんなら火傷だけですんだのは奇跡だよな)
実は、刺青みたいでちょっと格好いいかもと思っていたりしたフリードだった。
―――――――
「ただいま」
家に帰ると直ぐに両親が迎え入れてくれた。
「おかえりなさい」
「よく帰ってきた、怪我は大丈夫か」
「うん、もう大丈夫だよ」
フリードはその場で跳びはね元気な様を両親に見せた。
「ふっ、もうすっかり良いみたいだな」
「良かった、本当に良かった」
「母さん、心配かけてごめん」
「本当に心配したのよ、でも無事に帰って来てくれて良かった」
フリードは母がそう言って涙を流してるのを見て、初めて母の涙を見て焦るのと同時に、両親の愛を感じて心が熱くなった。
「んッフリードが無事帰ってきたお祝いに今日はご馳走よ!!」
「やったぁー」
その日の夜は、母の心のこもった料理に舌を打って久々の家族との時間を楽しんだ。
「フリード今度からあまり心配かけないでよね」
「わかってるっ」
「ちゃんとわかってる?」
「ははっ、しょうがないよ冒険者には危険がつきものさ」
「もう、貴方までー」
……
「ところで、フリードお前はこの街を出るのか?」
「うん、そのつもりだよ、俺はこの世界をみて回りたいんだ」
「冒険者になると聞いたあの時から、いつか来ると思ってたが今がその時なんだな……ついに来たかこの時が…」
「ん、何て?」
「いや、なんでもない、でいつこの街を旅立つんだ?」
「まだ決めてないけど、もうしばらくは、いるつもりだよ」
「そうか、じゃあそれまでこの街を目一杯楽しんでおけよ」
「うん」
フリードは久々の我が家で、ぐっすりと眠った。
――――――――――
次の日、フリードは冒険者ギルドの一室に訪れていた。先日の魔物の件について話をまとめていたのである。
そして今、目の前で深く頭を下げている老人はこの冒険者ギルドの長、ギルド長である。
「すまんかった」
フリードとギルド長は初対面である。初対面で頭をいきなり下げられているこの状況にフリードは困惑していた。
「どうして頭を下げているんですか?」
「それは、あの魔物にお主が襲われてしまったからじゃ、お主はギルドの依頼を受けてあの森を訪れていた、そこであの魔物に襲われた、キッチリ森の状況を把握できておらず規定のランクに合っていない魔物にお主が襲われてしまったのはギルドの落ち度じゃ、だからすまんかった」
「わかりました、許します」
「ありがとう、感謝する」
「ギルド側としてもあの魔物は把握できていなかったんですよね?」
「そうじゃ、面目ない」
「じゃあしょうがないですよ、それに今こうして生きてる訳ですし、必要以上の謝罪は要りませんよ」
「お主は優しいの、でここからが本題じゃ、現場から回収された死体から、あれはオークの変異主だということが確認された、オークの推定ランクはE、それに対して変異主はDランクに相当すると調べがついた」
「Fランクの冒険者がDランクの魔物を倒すのは前代未聞とは言わないがとても稀なことじゃ、申し訳ないことに飛び級とはいかないが、お主をEランクに上げることが決定した」
「本当ですか?ありがとうございます」
「いやいや、本当はDランクにしたいんじゃがギルドの規定で無理なんじゃすまんの」
「いえ、Eランクでも十分です」
「謙虚じゃの、では次じゃ今回のオーク変異主の素材についてじゃ、少しボロボロじゃが全然使えるぞ、それに加えてオークが使っていた武器もある、どうする纏めて売るか?」
「うーん、ではオークの皮と魔石、そして武器を貰ってそれ以外は売ると言うことでお願いします」
「了解した」
「そこで、少しお願いがあるんですが」
「なんじゃ、今回の報いとしてワシに出来ることならなんでもするぞ」
「それなら、このオークの皮と魔石、武器使って俺の装備と剣を作って欲しいので誰か職人を紹介してくれませんか?」
「ほぉ、そういうことか、それならこの街一番の職人に依頼しておこう」
「ありがとうございます」
「ついでに代金もギルドで負担するということにしよう」
「いいんですか?ありがとうございます!!」
「なんのなんの、これぐらいならお安いご用じゃ」
「では、よろしくお願いします」
「ほい、承ったぞ」
その後、新しい装備と剣のことを考えながらフリードは帰路についた。
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