第6話 ローナイト村の秘宝 (3)
ユリ、アッシュ、私の順番で洞窟を進んでいく。洞窟の中は暗く、光源は手に持っている松明だけが頼りだ。
「結構奥が深いですね。アッシュさんは足元に気をつけてください。」
「あ、はい。アザレアさんも大丈夫ですか?」
「ああ、お前に心配されるでもないさ。で、ユリはなんでこの穴にしたんだ?あんなにいっぱいあったのに。」
私は気になっていたことを口にした。あの大量の穴からなぜここを選んだのか。まさかの勘とかじゃないとは思うが。
「ああ、洞窟の入り口がやけに綺麗でしたしそれに穴がほぼほぼ等間隔に並んでいたんですよ。だからここって、、、ほら。やっぱり。」
「なんだこれ、、、?こんなものがこんなところに、、、?」
「こんなものが村の近くに、、、?」
緩やかにカーブしていた洞窟が急に真っ直ぐになった。そして、その洞窟の奥に巨大な空洞があり、そこには巨大な建造物、それも見たことのない意匠の建造物が建っていた。
全体は四角錐のような形で、階段が面の中心に一つ付いていた。高さは4階建ての建物くらいだが横幅は街のブロック一つ分くらいはあるだろうか。
「なんだあれ?遺跡?おいユリ?お前何か知っていたのか?」
「いえ。まさかこのレベルの遺跡とは思っていませんでした。精々ちょっとした村の役場くらいの大きさだと思っていたのですがこれは、、、。」
「まさか、、そんな、、?」
「アッシュさんは何か知っているのですか?アレは何ですか?先史文明の遺産ですか?もしくはどこかの亡国の秘密兵器ですか?」
何か意味ありげなそぶりを見せるアッシュとそれを見て食いつくユリ。
「アレですか?ローナイト村は実は亡国の王族の生き残りの村でそこには自分たちの国を滅ぼした国への対抗として作られたけど時間が足りずに参戦できなかった秘密兵器が、アダっ!!」
「落ち着け。アッシュのことブンブン揺らすからアッシュが死にそうになってる。」
テンション上がりすぎでアッシュを揺らしすぎていたユリの頭を叩いて無理やり止める。
「あ、やっと止まった、、、、。」
「アッシュさん、すみません。大丈夫ですか?」
「一応回復魔法かけとくな。あとユリは反省。」
「はいぃ、、、、、、、、」
「で、アッシュ。何か知っているような感じだったが何かあったか?」
ようやく本題に戻れる。まったくユリには困ったものだ。
「ああ、この建物の表面の紋様が村の旗の模様とよく似ていて。」
「村の旗ってどんなやつだっけ?」
「こう、二重丸の真ん中に四角が書いてあって周りに線がちょんちょんって、、、」
そう言いながらアッシュは地面に絵を描く。
そして、確かにその模様はちょっと線の角度や縦横比が異なるくらいで建物の紋様と似ていた。
「その模様の意味ってなんかあるのか?よくそういうのって何かをモチーフにして作ってるだろ?」
「昔からこう伝わってるっていうだけで特に意味は聞いたことないですね、、、。もしかしたら何かあるかもしれませんが。」
「え!?じゃあつまりあの村の人はここを作った人々の末裔で忘れないように旗にその紋様を使ったけど時間が全てを忘れ「はいユリ。ヒートアップしすぎだから落ち着くように。」「アッハイ。」
テンション上がりすぎでおかしくなっているユリをとりあえず抑えた。
「まあとりあえず先へ進みましょう、アッシュさん、アザレア。皆さんが変なトラップに引っかかってるかもしれませんし。」
「確かにな。考察はまたあとだ。とりあえず進もう。」
そう言って私たち3人は再び建物の方へと進み始めた。
ーーーーーーーー
「ヒッ!!これもしかして、、人ですか?」
「そうですね。これ人の骨みたいですね。」
少し進んだところにあった窪地。そこの中には多くの人骨があった。
「じゃあ、もう彼女もこの中に!??」
「落ち着いてください。ざっと見ましたが大分、、おそらく年単位で風化が進んでますから違いますよ。」
「そうだな。野生動物も来ないし風雨に晒されもしないから結構昔の骨だと思うぞ。年単位と言ったがおそらく200年くらいは余裕で前のものだと思う。」
ただ何か引っかかる。人骨は比較的規則正しく並んでいる。それに時間の経過によって分かりにくくなっているものもあるが手と手を胸骨の上で組んだ状態のお骨が大半である。
そう。つまり、、、
「「誰がここにこの人達を埋葬したのか?(でしょう?)」」
同じことを思っていたらしくユリと発言が被る。
「誰って、、この洞窟に住んでいた人じゃないんですか?」
「アッシュさん。最後の1人がやったのは分かってます。このお骨はおそらく200年以上前のものです。その最後の1人も人間であればもうお亡くなりになっているはずですよね。じゃあ、その人のお骨はどこにあるんですか?」
「それはこの中にあるんじゃないですか?その人が亡くなるときにここで他の人と同じように死んだとか?」
「まあ、大半の場合はそうなんだが。今回の問題は手の組み方だ。殆どの遺体は手首がほぼ垂直にして胸骨、、胸の骨に垂直に立っている。これは自然にはできない。」
「死ぬときに手を組んでおけばいいんじゃないですか?」
確かに普通はそうだが、今回は一つおかしい点がある。
「いや。白骨化するまでには皮膚や筋肉といった無くなる組織がある。もちろん亡くなるまでの間にうまくバランスをとって倒れずに胸の上に乗るとは考えにくい。1体や2体ではなくこの人数だ。」
「そうです。つまり白骨化後に誰かがそうなるように揃えたわけです。そしてここにある骨は手と手が組んであるものが殆どです。組んでいないものは殆ど中心部にあるこの中でも古いもの。おそらくなんらかの事故か経年的なものかといったところでしょう。」
「最後の1人はここにはいないということですか、、、。でもそれが一体何に関係が?」
「いいですか?最後の1人がこの洞窟から出て行ったか又は洞窟の別のところで死んでいれば問題はありません。冥福を祈るのみです。ですが、もしも、もしもですよ?もしも、最後の1人が、、、」
グギャオオオオオオオオオオ!!!!!!
ユリがその懸念事項を言おうとした瞬間、洞窟内に”何か“の叫びが響き渡る。それと同時に小さいが人間の悲鳴も聞こえた。
「な、何ですか!?ユリさん、アザレアさん!?」
「これは、、、懸念事項が的中したと考えていいんだろうな、ユリ。」
「ええ。おそらく”最期の1人は人間ではなかった。“のでしょう。それも、現在は人間に敵対的であるとなると厄介ですね。とりあえず声の方に行きますよ!」
「でも反響してどっちからきたのか、、?ってユリさん!?そっちで合ってるんですか?」
「私耳には自信あるんです!多分建物挟んで裏側です!アザレア!先行っているのでアッシュさんを連れて安全に来てください!本当は洞窟の外に出したいところですが、アザレアをそっちに割く時間はないと思うので!アッシュさんはアザレアにちゃんと守ってもらってください!では!」
声はどうやら建物を挟んで反対側から聞こえてきたようだったらしく、ユリが全速力で声の方へ向かう。
「さて、私たちも向かおうか。ユリみたいな身のこなしは流石に出来ないから走っていくよ。建物登ったほうが回り込むより早そうだから階段登るよ。」
「はい!」
「一応後ろをたまに振り向いて確認してほしい。何かあったら困るから。じゃあ行くよ。」
「あ、はい!分かりました!」
ユリほど走るのは早くないので建物の大きさ的に回り込むより登ったほうが早いと思い、私とアッシュは建物に向かって走り出した。
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