第5話 ローナイト村の秘宝 (2)
「いいですよ。」
ユリが即答する。
「寄り道になってしまうのは分かりますがって、え?本当ですか?」
「ええ。困ってる人は見過ごせませんから。ね、アザレア。」
人助け大好き勇者のユリは助けを求められると断れない性格だ。まあ、しょうがない。いつものことだし。
「まあ、ゆりがぁ、いいっていうんならぁ、、いいけどぉ、、」
「アザレアは酔いすぎじゃないですか?あとで水持ってきますね。で、アッシュさん。具体的に説明していただけますか?」
「あ、はい。3日前に王都の学者先生が何人かを連れてやってきたんですよ。何でも『秘宝』があるとかで「何かそういう伝説でもあるんですか?剣ですか?鞘ですか?金銀財宝ですか?もしかして何かすごいマジックアイテムとか???!!」
珍しくユリがテンション高めに尋ねる。そういえば、ユリの好きなものの一つに『秘宝』とか『財宝』みたいなロマンをくすられるやつがあった。だからテンション上がったんだ。
「い、いえ。特に村にはそういうの伝わってなくて。なんかその先生曰く『うちの家系に代々伝わる古文書を解読したらこの村の近くの洞窟に秘宝が隠されているんだ!』とかで。」
「いや〜ロマンあっていいですねぇ、、。で、助けて欲しいのはその先生ですか?」
「いや、先生が連れてきた中にすごい可愛い女の子子がいまして、、。」
これはコ・イ・バ・ナですね!思春期のうぶな子の初恋話とかテンション上がってきたーー!!!」
「アザレア。途中から完全に声に出てます。酒に呑まれすぎですね。アッシュさんちょっと引いちゃってますよ。」
「あ、だ、大丈夫、ですよ。別に、、引いては、、。「こいつはあとでシメて置くので大丈夫ですよ。つまり、好きな人がなかなか帰ってこないから心配だというわけですね。まだ調査が終わっていないだけという可能性はないですか?」
まあ、確かに3日帰ってこないのが心配なのはわかるけどそれくらいは調査にはかかりそうな気もする。
「確かにその可能性もあるけど、食料と水は2日分あるかないかぐらいしか持っていかなかったんです。だからもう食料も水も尽きてるはずで、、。で、心配になったんで洞窟に行こうとして、、親の目を盗んでいこうと思ったら結局夕方になっちゃって、、。」
初恋ならではのエピソードいいわぁ、、。
「で、野生動物に襲われたと。よかったですね、私たちが通って。通らなかったら完全にそのまま餌でしたよ?」
「そのことは反省してます。流石に直情すぎました、、。」
「じゃあ、明日の朝になったら行きましょうか。洞窟までの道案内お願いしますね。」
「大体の方角しか知らないんですけど大丈夫ですか?」
おいっ!恋した相手のために文字通り飛び出したのか?! ただ、その男気よし!でも今後のために一応突っ込ませてもらう。
「おいおい、それで助けに行ったのは無謀すぎやしないか?」
「まあ、アザレアのいう通りですね。そこは反省してください。具体的な場所は、、、まあ当日なんとかしましょう。アテはあります。」
方角しかわからないのに目的の洞窟を探し出すのは難しいし見つけ出すまでに2-3日かかりそうな気もするが、、ユリにアテがあるならあるんだろう。
「あ、ありがとうございます!!では、明日の朝お待ちしてます!!」
「はい。アッシュさん、おやすみなさい。」
「明日歩くならちゃんとよく寝ろよぉ〜。」
そう声をかけると、アッシュは頭を下げながら部屋を出て行った。
「ほら、アザレアは飲み過ぎですよ。水どうぞ。」
ユリが水を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。で、明日どうするんですか?」
「いや〜!秘宝ってなんですかね?聖剣?魔剣?それとも装備品??楽しみですねぇ、、。」
まだテンション高いよこのヒト。
「ユリ、こういうのは大体何もないか古ぼけた何かが出てくると相場がきまっているんですよ。だから、あまり期待しないほうが、、「いえ!僕は信じていますよ!!」
「そうですか。私は酒の飲み過ぎなので寝ますね。」
未だテンションが高いユリに呆れ顔で返事をした。
「おやすみなさい、ユリ。僕は明日の想定敵の対処法考えてから寝るので明かりはつけたままでお願いします。」
「はーい。ではおやすみなさい。」
その日は歩き疲れていたこともあって、私はすぐに眠りに落ちた。
ーーーーーーー
翌日。朝食を食べ終わったくらいでアッシュがやってきた。
「ユリさん、アザレアさん、おはようございます。」
「ああ、アッシュさん。おはようございます。準備できてますか?」
「はい。食料と水とあと、、「違います。その辺りはやって当たり前です。物ではなくココロ。あなたは彼女を助けに行く心構えはできてますか?無謀さではなく勇敢さの準備はできましたか?」
ユリがなんか難しいこと言ってる。
「、、、はい!自分は絶対に彼女を助けるんです。そのためにここに「まだ準備できていないですね。」
冷たい口調でユリが発言を割り込ませる。
「え?助けに行く。そのために食料や水、武器にもなる包丁も持ってきましたし「助けに“行く”のではなく助けて“帰ってくる”んですよ?そう認識できないとそれはただの無謀にすぎません。認識したとして、、いやこの話はいいでしょう。とにかく、そう認識し直してくださいね。無謀な人とは一緒にはいけませんよ?」
ユリさん?発言に割り込むわ冷たい声で叩き伏せるわなんか怒ってません?アッシュ黙っちゃったじゃないですか?空気が凍りついてません?ユリさん?黙らないでください?アッシュをじっと見つめないで?アッシュがいたたまれなくなったよ?
ーーーーーーーーーーー
流石に空気が凍りついたままではどうにもないのでユリが言ったことを噛み砕いて説明してみようとした。自分にもいまいちわからなかったけど。
「ま、まあアッシュよ!要はな?えー後のことを考えろってことだよ。洞窟出会えても帰れなかったら意味ないだろ?そこまで考えて行動しろってことだよ。な?それを分かってれば大丈夫だから、、、多分。」
「あ、はい。自分、彼女を助けて、彼女とと生きて帰ってきます。絶対に死なずに帰ってきます。」
これでどうだ、、、?ユリの言いたいことはこう言うことではないか?
「まあ、なんとなくでも分かってくれたようで何よりです。では行きましょうか?アザレアは朝ご飯食べ終え、、、てないですね。早く食べてください。」
「ユリが食べるの速いんだよ、、、。」
「は・や・くと言っているのが聞こえないんですか?アザレア?」
いつもは優しいユリらしくないすごい冷たい目で見つめてくる。と言うかいつもよりも食べるの早かったしアッシュの発言遮りまくるし今日のユリは何かおかしいような、、、。
「スープくらい飲ませてあげますよ?さ、口開けてください?アッシュさんはちょっとアザレアを押さえつけてください?」
わかった。『秘宝』にテンション上がりまくってるからさっきから行動がおかしいんだ。ってちょっとまって?
「そのスープ熱いからダメだって!飲むから!早く飲むから無理矢理は辞めて!アッシュも抑えなくていいから!飲むから!飲むからぁあああ!!」
結局、無理矢理飲まされはしなかったが急いで飲んだせいで口の中を軽く火傷した。そして、テンションが上がったユリは何をしでかすかわからないことを知った。怖かった。
ーーーーーーーー
村からその洞窟がありそうな場所までは何事もなく、2時間くらいのハイキングだった。
「この辺りみたいなんですけど、、、この辺り洞窟多くて、、、どれに入ったのかわからなくて、、、。」
アッシュがそう言ったようにこの辺りの山肌には多くの洞窟が開いていた。確かにこの中から探し出すには多くの人手と時間がいるだろう。
「ふーん。じゃあ行きましょうか。この穴でいいですね。」
少し考えているようだったユリはそう言うと近くの洞窟へと入っていく。
「え?もうわかったのか?どうやって?」
「ちょ、ちょっと待ってください?本当に大丈夫ですか?」
私とアッシュはズカズカ進んでいくユリを追いかける。
「歩きながらお話ししますよ。とりあえず、この中予想より暗いので、アザレアの荷物から松明人数分出してください。」
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