先生

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女と人間の女の子が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


カランコロン。


「いらっしゃいませ!」

「あら、サテラちゃんじゃないのね?」

「私、新人の葵と言います!サテラさんのお知り合いの方ですか?」

「新人さんなのね!私はサテラちゃんの元担任なの」


私が通っていた、魔法学校時代の担任先生だったエミリ先生。

私にとっての師匠でもある。


「あ!エミリ先生じゃないですか!」

「サテラちゃん!久しぶりね!」


先生は誰にでもフレンドリーで、皆からの信頼も凄い。

そしてなんと言っても、最高位の階級の魔法使いである事。


魔女の位にも五段階の階級がある。

最高位の階級が七大魔女。その下の階級がベテラン魔女。そしてその下がプロの魔女。あとの二階級は私も該当する素人魔女と魔女見習いである。

階級を上げるためにはそれ相応の試験が設けられ、その試験をクリアすることで階級を上げることが出来る。


エミリ先生は、ベテラン魔女の階級にいる。

凄い魔女なのだ。


「先生がお店に来てくれるなんて嬉しいです!」

「私の教え子がお店をやってるんだもん、遊びに行かないわけないでしょ!」

「先生……!」


本当にいい先生だ。


「あ、そうそう。これを渡そうと思っていたのよ」

そう言って先生は、一つのアルバムのようなものをカバンから取り出した。

「これですか?」

「卒業アルバムよ。サテラちゃん、全く取りに来ないから渡しに来たの」


そういえば、取りに行くと言ってかれこれ一年近く経とうとしていた。


「すみません、すっかり忘れていました……」

「いいのよ。そのおかげでサテラちゃんに会えたんだから」


裏表なく、魔女なのに魔女で無いような。

そんなエミリ先生。 


「何か食べていきますか?」

「食べて行きたい所なんだけど、この後仕事があるから戻らないといけないのよ」

「大変ですね……」

「先生っていうのは結構大変なの。そうだ、今度一緒にお茶でもしに行きましょ!」

「あ、いいですね!行きましょう」

「じゃあ、また連絡するわね!」


短い時間だってけれど、そんな短い時間でも気持ちを温かくしてくれる。

とても素敵な先生だ。


「素敵な方ですね」

「本当に。私の憧れだよ」


と、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様は魔法学校時代の先生。私の卒業アルバムは、また見せますね!

さて、明日は、どんなお客様が来てくださるのでしょうか?お楽しみに!


それでは、いい夢を🌙

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る