白熊さん

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女と人間の女の子が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


カランコロン。


「い、いらっしゃいませ」

「一人シロ」

「お、お一人様ですね。えっと……こちらの席へどうぞ」


葵ちゃん、初接客である。とても緊張している様子。


「ホワイトチョコケーキと、ココアをお願いシロ」

「か、かしこまりました」


注文を取り終えた葵ちゃんが、駆け足でキッチンの方へと向かってくる。


「どうだった?初接客は」

「き、緊張しました……。それに、白熊大きすぎです」

「あはは。白熊さん大きいよね。でも、とても優しいから怖がらなくても大丈夫だよ」


白熊さんは、常連さんなのだ。冬が近づくとお店に遊びに来てくれる。

注文するのは、いつもホワイトチョコレートケーキとココア。お気に入りらしい。


「はい、これを白熊さんのところまで持って行ってくれる?」

「わ、分かりました!」


少し不安ではあるけど、葵ちゃんなりに頑張っているので手は貸さない。

これも魔女になるための修業の一環だ。


「お、お待たせしました。ホワイトチョコレートケーキとココアです」

「ありがとうシロ」


何事もなく運ぶことが出来たらしい。


「サテラさん、こんな事を毎日一人でしてたんですね……すごいです」

「まだ簡単な接客しかしてないでしょ!もっと大変な事はあるんだからね?」

「え~~~」


初めての仕事は、正直覚える事もあるし大変だと思う。でも、誰しもが乗り越えなければいけない事なのだ。人間も魔女も。


「サテラさん、今日のケーキも美味しかったシロ。これよかったら貰って欲しいシロ」

「これって……」

「北極饅頭シロ」

「北極饅頭?」


北極饅頭とは、北極でしか作る事の出来ないあんこを使った饅頭なのだ。

今では、この饅頭を買うためだけに北極に行く人も多いらしい。


「いいんですか?頂いて」

「いいシロ。いつもお世話になってるシロ」

「ありがとうございます」


私は遠慮なく頂くことにした。


「それじゃあ、そろそろ帰るシロ」

「はい、またお待ちしています」

「お、お待ちしています」

「新人の方、頑張ってシロ」


この言葉は、嬉しいだろう。私も最初の頃にこの言葉を言われ、とても嬉しかった記憶がある。


「ありがとうございます!」


白熊さんは、ドスドスと音を立てながら、姿を消していった。


「サテラさん、私この仕事好きです」

「よかった。そう言ってもらえて」


と、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様は白熊さん。葵ちゃんの初々しい姿、とても可愛かったですね。

明日は、どんなお客様が来てくださるのでしょうか?お楽しみに!


それでは、いい夢を🌙

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