色欲の魔女さん

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女と子犬が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


カランコロン。

「いらっしゃいませ……ん?」

確かにお店の扉が開いたはずなのに、そこには誰もいません。

「風で扉が開いちゃったのかな」

「ふふふ。そんな訳ないでしょ!私がやったのよ!」

「うわっ!」


私の後ろには、小学生くらいの姿をした1人の女の子が立っていた。

いや、女の子ではない、魔女さんだ。


「あなたがサテラ?」

「そ、そうです」

「私の食料になりなさい」

「え?!」


突然の事過ぎて私は理解する事が出来なかった。


「い、今なんと……」

「だから、私に喰われなさいって言ったの」


私の聞き間違いでは無かったようだ。


「キール様、この方は魔女ですよ?魔女をお食べになったらお体を崩されますよ?」

「そうだったわね。じゃあ他の奴を喰らいに行くわよ」

「かしこまりました」


なんだか、あっちで勝手に解決してしまったようだ。


「それじゃあ、邪魔したわね」

「あ、ありがとうございました」


謎の魔女さんと喋る鳥は、異次元へのゲートに入り姿を消した。


「な、なんだったんだろ。でも、キールって名前どこかで聞いた事あるような……」

私は、少し考えながら店の中に戻った。


「ん?これって……」


お店の地面に落ちていたのは、キールという魔女さんがつけていた指輪だった。

私はその指輪を拾い上げ、落とし物入れに締まった。


「取りに来てくれるといいんだけどな」


私は知らない。彼女が七つの大罪の一つである、色欲の魔女である事を。

そして、とんでもない事態を引き連れて再び来店してくる事を。


まぁ、それはまだ少し先の話なのだけれど。


では、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様は色欲の魔女キールさん。会話する間もなくいなくなってしまいましたね。ただ、再び登場するので、こうご期待です!さぁ、明日はどんなお客様が来るでしょうか。

楽しみですね♪


それでは、いい夢を🌙

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