第2話 『どうして?』
Side.???
「あ」
昼。
海辺を散歩していたら、波打ち際でボトルを見つけた。
僕が昨日の朝、この場所で流したものだ。
うまく波に乗って ちゃんと流れていったはずなんだけど、途中で戻ってきちゃったのかな。
改めて自分が書いた内容を見てみようと、ボトルのフタを開けてみた。
すると、内容が変わっていた。
「・・・『どうして?』?」
誰かに、届いた…?
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作業場に戻って、資料室で地図を探す。
僕が流したボトルメールは、いったいどこにいる人に届いたんだろう。
「・・・あった」
手に取った地図を広げて、潮の流れからボトルの行き先を予測する。
この島から一番近い向かいの島は・・・しずく島。
東の空から昇る朝日に照らされて輝く、朝露みたいに素敵なところだって聞いている。
僕も朝日の方向に向かってボトルを流したし、間違いない。
間違いないんだろうけど・・・
このボトルが届いたであろうしずく島の浜辺は、背の高い木や植物が生い茂っていて、いかにも手入れされていなさそうな場所。
とてもこのボトルが流れ着いて、誰かの手に渡って返ってきたとは考えられない。
「・・・」
本当に誰が書いたんだろう。
海の妖精、だったりして。
「・・・」
これは、返事を書くべきだろうか?
・・・やっぱり書かないと。
返事をくれたのが誰であろうと、最初に送ったのは僕なんだし。
見つけて、もらったんだし・・・
何より、これの返事をくれた人のことが少しだけ気になったから。
でも、何を書こう?
『消えたい』っていう手紙に『どうして?』ってきたから、消えたい理由を書くべきかな。
「んー・・・」
ガチャ
「凪(なぎ)さん!生地のチェックお願いします!」
「あぁうん、今行く」
名前を呼ばれたので、地図を戻して作業台がある部屋へ向かう。
・・・こんな理由を書いて、怒られやしないかな。
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Side.湊
「あ!!来てる!」
昨日の夕方はなかったけど、今日の朝、昨日ボトルを流した時と同じ時間に秘密の浜辺に来てみたら、あのボトルが流れ着いていた。
「あっちの人は昨日の夕方にでも流したのかな?」
返事が来たっていうことは、まだ消えていないってこと…だよね?
でも、もしかしたらこの一通が最後の・・・
「いやいやいやいや!」
そんなこと考えちゃダメ!
おそるおそる、ボトルを開けて中の紙を取り出す。
そこに書かれていた言葉は・・・
「・・・へ?」
『なんとなく』・・・?
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「『なんとなく』、なぁ・・・」
すぐに返事を書きたくて、私はすでに紙とペンを持ってきていた。
岩に腰をかけて考える。
『なんとなく』『消えたい』、なぁ・・・。
「ん"ー…よし!!」
この人のことはまだ全然わからないけど、だったら返事はこれしかないよね。
私は返事を書いて、ボトルにまた「ちゃんと届いてね!」ってお祈りして、それを西の海に流した。
「って私、当然のように返事しちゃった」
どこの誰かも知らない相手に宛てて…
・・・いいよね!これが私だし!
疑うのは苦手なんだ!
「仕事行こ!」
ボトルが見えなくなるまで海を眺めて、浜辺を後にした。
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Side.凪
「・・・」
始業前。
浜辺に来てみたら、またあのボトルが流れ着いていた。
・・・別に、期待していたわけじゃないけど。
ボトルを拾って中を確認する。
「っ!」
・・・これを書いたの、子どもなんじゃないかな?
そうじゃなきゃ、『なんとなく』消えたがっている僕にこんなこと言わないよ。
その手紙には、力強い筆圧で、『消えないで』と記されていた。
「直球…」
長い文で何かを語るわけでもなく、ただ一言だけ。
僕がどんな人間なのかも知らないのに。
僕と、何の関わりもないのに。
「・・・眩しい」
拾って間もなく、朝日が昇る東の海にボトルを流す。
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Side.湊
「っ!またある!」
昼。
秘密の浜辺に来てみたら、またあのボトルがあった!
え、早すぎない?!
もしかしてそのまま返ってきちゃった?(笑)
ボトルを開けて中の紙を取る。
「・・・え?」
『どうして?』って・・・
手紙には、私が昨日の朝に書いたのとまったく同じ言葉が書かれていた。
「・・・やっぱ手紙、届かないでそのまま返ってきちゃった?(泣)」
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