ボトルメール
鳳雛
第1話 拝啓 どこかの誰かさんへ』
Side.???
「拝啓 どこかの誰かさんへ」
HBの鉛筆を手に取って、一言。
そのメッセージを丸めてボトルに。
フタをして、日が昇る東の海へ・・・
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Side.湊
ザザァーーー・・・
「・・・綺麗なぁ」
ここから見る夕日は、嫌なこと全部忘れさせてくれる。
喬木に隠れたこの浜辺は、私しか知らない秘密の場所。
「・・・ハァ~」
もう帰ろ。
おなかすいた。
今日はお魚いっぱい食べよ。
・・・って、ん?
夕日に照らされて、何かがオレンジ色に光っている。
なんだろう、ゴミでも漂流してきたのかな?
でも、島々の決まりで海へのポイ捨ては固く禁じられているから、少なくとも私が生まれてから今までで、この浜辺でゴミなんて見たことはなかったのになぁ。
いつからあったんだろ?
ずっと夕日を見ていたから 気づかなかった。
漂流物があまりにも珍しいから、恐る恐るそれに近づいてみた。
「・・・」
ゴミにしてはキレイ。
手に取ってみると、漂流物の正体は透明なボトルビンだった。
ん、中に何か入ってる。
開けてみよっ。
パカッ
ボトルの中には紙が一枚、丸まって入っていた。
え、なんだろう、もしかして手紙?!
なんだろ~ドキドキしてきた!
私が中身を見ていいのかわからなかったけど、生まれて初めて見る漂流物の中身が気になってしまい、誰かの許可を待つことができず、気づけば中に入っていた手紙を手に取って広げてしまっていた。
クルクルクル・・・
「っ!?」
胸を高鳴らせながら手紙の中身を見てみると、短く一言、『消えたい』とだけ書かれていた。
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「いやダメでしょ!!」
日が沈んで、私は家に帰った。
紙とボトルも持ち帰った。
こんなものを拾って、どうしたらいいかわからなかったから、、、とりあえず大量に魚を食べた。おいしかった。
「・・・」
『消えたい』って、一体何があったんだろ?
よっぽどつらいことがあったのかな?
それとも・・・また、イタズラ?
・・・ダメダメダメ!
本気で悩んでたらどうするの!
私だって、嫌なこととかいっぱいあるよ。
でも…でも、いなくなってしまったら、嬉しいことも楽しいことも全部おしまいだから・・・!
「っ手紙書こう!」
これ書いた人に、ちゃんと届いて読んでもらえるかわからない。
それに、私なんかの言葉がその人の心に響くかもわからない。
でも、何もしないよりマシだ!!
・・・とは言ったものの、何書こう?汗
パターン① 『消えたらダメだよ!』
って、ストレート過ぎる?
捉え方によっては、逆に責められているような気もするし…
パターン② 『はじめまして。手紙読みました。いいですか?人生とは・・・』
って、うっとうしいな私。何様だよ。
「う~ん・・・」
こういう手紙だから、相手の顔も性格も、名前もわからない。
そんな相手に、どういう目線で書けばいい?
一番伝えたいことは…?
パターン③ 『お元気ですか?』
…元気なわけないでしょ。消えたいんだから。
パターン④ 『あなた誰ですか?』
いや向こうからしたらお前が誰だよって感じだよね!汗
っていうか、もう何の励ましにもなってないじゃん!!
「・・・(-_-;)」
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ザザァーーー・・・
「・・・朝に、なってるじゃん・・・」
朝日は反対側から昇るから、この時間の秘密の浜辺は薄暗い。
寝ないで夜中ずっと手紙の内容を考えていた。
手紙のパターンは94まで考えたけど、しっくりきたのはこのたった一言。
私が拾った時と同じように、返事を書いた紙を丸めて例のボトルの中に入れる。
「よし、これでいいね」
ボトルのふたをしっかり閉めて、このボトルがちゃんと手紙の主に届くよう祈りを込めて、
いつもの夕日の方向、
日が沈む西の海へ、ボトルを手放した。
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