第22話 コンビニの女神様
フィオネがコンビニで働き始めて、1週間が経つ。
器用なフィオネは仕事を完璧に覚え、一人で店を回せる程であった。
だが、それを上回る程に夕方以降のコンビニには人が押し寄せた。
すべては彼女が美少女であるからだ。
コンビニの女神様と近隣の会社や学校では噂されており、尚且つ、その雰囲気は男ならず、女子にまで人気があった。
「忙しい忙しい」
店長は忙しく動き回っている。
お客が押し寄せた結果、次々と商品が売れていくので、補充に忙しいのだ。
フィオネはレジカウンターで次々とお客を裁いていく。
フィオネ目当ての客達はデレデレとした表情で彼女の接客を受ける。
あまり男子の好奇に晒された経験の無いフィオネはそれが自分に向けられているとは気にする事もなく、普通に相手をしている。その塩対応っぷりが余計に彼女を神格化させている。
夕刻はまるで戦場のようだった。
それも7時を回る頃には落ち着く。
店長もようやく掃除を終えて、休憩をする。
「フィオネ君。凄いね。君目当てのお客さんがこんなに来るなんて」
店長の何気ない一言にフィオネは少し考え込む。
「私目当て・・・なるほど・・・よくわからないけど」
おばさん店員が笑いながら答える。
「フィオネちゃんは可愛いわよ。この辺の男共はみんな、あんた目当てで来てるんだから」
「そうですか・・・今まで気にした事が無かった」
「どんな生活をしてたのよぉ」
「そう・・・研究ばかりしていたから」
「へぇ・・・フィオネちゃんは学者さんだったの?」
「学者・・・みたいなものね。色恋なんて考えた事もなかった」
「勿体ない。店長、この子に正しい男性との付き合い方を教えてやりな」
おばさん店員に言われて、店長は顔を真っ赤にして、目を回しそうになっている。
「あんたもかい。わかった。ここはあたいに任せな。あんた達、今度の日曜日は互いにシフトが外れているだろ?デートをしてきな」
「デート・・・とは何?」
フィオネは少し頭を傾ける。その横で店長は倒れそうになっていた。
「デートは男女が一緒に遊びに行くことだよ。フィオネちゃんはもっと日本の事を知らないといけないし、店長は真面目過ぎて、このままじゃ結婚どころかいつまでも独りだからね」
おばさん店員に押し切られる形でデートを決められてしまった。
そうこうしている間にもコンビニには男子が押し寄せる。
否・・・男子だけでは無かった。
フィオネの美しさとあまり男子に媚びない雰囲気は女子にも人気が出始める。
コンビニの女神様。
そんな事を言われて、コンビニは盛況であった。
そんな事情を理解しつつもフィオネはただ、仕事をこなすだけであった。
コンビニで働き、アパートに帰って、廃棄済みの弁当を食べて寝る。
コンビニの仕事はなかなか、大変だった。
そもそも、研究にのみ、長い月日を費やしてきたフィオネは器用ではあるが、決して、労働に慣れているわけではなく、部屋に戻ると完全にバタンキューなのである。
「デートか・・・確かに、仕事をして、食べて、寝るだけの毎日ではこの世界の事を知り得る事は出来ない。休みでもやる事がないわけだしな」
フィオネはイマイチ、デートが何かを理解してはいないが、楽しみではあった。
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