第19話 神では無かった魔法少女は極貧生活をする。
神を偽ったフィオネはそれがバレて、教会へは帰れなくなった。
当然ながら、金も無ければ、家も無い。そもそもこの世界の人間ですら無いので戸籍も何も無い。
結果、彼女はホームレスになった。
まぁ、ホームレスという言葉は彼女の世界には無いが、旅で野宿するのは当たり前で、掘っ立て小屋のような家で生活する者も多い。その為、フィオネもそれほど、悩む事無く、ホームレス生活を始めた。
橋の下の河川敷に近くの商店の裏から集めた段ボール板を組み合わせて、家を作った。
段ボール自体、フィオネの世界には無く、その断熱性は草木で作った家に比べて、とても住み易かった。
「結構、まともな家が出来ましたわね」
フィオネは満足気に段ボールハウスに住み始める。
家は何とかなっても、食料はそんなわけにはいかなかった。
何せ、一文無しである。都会の片隅では魚釣りをするわけにも獣を狩るわけにはいかず、異世界では食べられる草木が何かもフィオネには解らなかった。
腹が減り、街中を彷徨っている時、目についたのがゴミ箱であった。それがゴミである事はさすがのフィオネにも理解は出来る。だがゴミ箱から微かに臭いが漂う。
「美味しそうな匂いがします」
フィオネがゴミ箱を漁ると廃棄処分になったコンビニ弁当があった。まだ、捨てられて間もないようだ。
普通なら躊躇するところだが、仮にも古い時代の生活を送っていたフィオネである。平然と彼女はコンビニ弁当を手にして、段ボールハウスへと帰って行く。
「食べ物を捨てるとは勿体ない。これからはあのゴミ捨て場で食料を調達しましょう」
意外にもタフなフィオネであった。
ホームレス生活1週間目。
フィオネは同じ境遇のホームレスを街で見掛け、彼らに生きる術を教わっていた。
まずはアルミ缶集め。街中の路上やごみ捨て場から拾い集めて、リサイクルセンターで換金するのだ。なかなかの量を集めないといけない。フィオネは大きなゴミ袋一杯にして担いで歩く。
これは早朝、日が登る前にやらねばならない。なかなかの労働である。だが、それもフィオネにはたいした事ではなかった。それもそのはず、特に手下などを従えなかった彼女はかなりの苦労人でもあり、働くことに躊躇などないのだ。
フィオネは夕方の公園でコンビニ弁当を食べていた。この弁当はアルミ缶集めで稼いだ金で買った物だ。ちゃんと温めて貰ったので美味しい。
「やはり、食事は温かいのが旨い。しかし、どうやって、元の世界に戻るか。まずは研究拠点を設けないと、ままならないな」
フィオネは当初より、このホームレス状態はまずいとは感じていた。この状態では魔法の研究など不可能であったからだ。
「金を稼がねば…しかし、どうやって」
言葉は解るが文字は読めない。ホームレス仲間から、この世界のことは色々と聞いたが、元の世界に比べて遥かに発達した国である。だからこそ、住民票などが無いとまともに仕事も出来ないとか。
「こんなことならあの教会で神様をやっていれば良かったな。あの神父なら騙しやすかったのに」
迂闊であったと反省する。
フィオネの世界で民は文字を知ることは少ない。算術に至っては、商人以外は数を数える程度。だが、この世界では当たり前に文字の読み書きが出来る。つまり、文字が読めない時点で、働くことさえ不可能である。
北の大魔女と呼ばれた自分がこんな情けない事になるとはと思いつつ、コンビニ弁当のゴミを公園のゴミ箱に捨てた。
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