第14話 魔法の先生
アリスは夕飯の時に隆に魔法同好会の話を楽しそうにした。
「へぇ・・・あの・・・魔法を見せたの?」
隆は唖然としながらアリスに尋ねる。
「勿論。魔法同好会なのだから当然だろう?」
アリスは当たり前のような顔をしている。
「いやいや・・・この間、異端がどうとかって話は?」
「安心しろ。みのりは仲間だから」
「仲間って・・・」
隆は呆れ果てた。もう何を言っても仕方がないから、好きにさせる事にした。
「まぁ、この世界で集められるマナじゃ。魔法陣を使ってもせいぜい、マッチ程度の火を点けるのが精一杯だからな。はっきり言えば、何の役にも立たない」
「元の世界だとどんな事が出来たの?」
「あぁ、そうだな。並の者でも空気中の水分を凍結して、氷を作ったり、目玉焼きぐらいなら自分で出した炎で焼けるかな」
「へぇ・・・じゃあ、戦争なんかも魔法で?」
「そうだな。私が知る限りでも多くの戦争では主に魔法を駆使して、互いに攻撃をしていたな。無論、剣や槍、弓なども使ったぞ」
「ふーん・・・アリスはどんな魔法が使えたの?」
「まぁ、今回のような異世界に移動する魔法もそうだが、巨大な竜巻を生み出したり、炎を極限にまで温度を上げて、鉄を切断するとかな」
「凄いね」
隆に驚かれ、アリスは自信満々に胸を張る。
「当然だ。私は偉大な大魔法使いだからな」
翌日、アリスとみのりは理科準備室にて、魔法の実験を行っていた。
「良いか。みのり。マナとは生命力とも訳される」
「おぉ、生命力」
「うむ。生命力を用いて、様々な現象を生み出す」
「なるほど・・・どうやって?」
「ふむ。マナは我等の思考と同調する。些細な事は念じれば、マナが応える」
「じゃあ、私も念じたら、魔法が使えるの?」
「ここのマナの量では仮に使えたとしても、気付かぬ程度しか発生しない」
「マナの量・・・少ないって事?」
「そういう事だ。この世界でマナを集める事は困難である。だから、魔法は実在しないとなる」
「でもでも、少なくてもマナはあって、魔法は使えると?」
みのりの興味津々の問い掛けにアリスは自信たっぷりに頷く。
「左様。はっきり言えば、何の役にも立たない感じだが、科学とは違う現象を出す事が出来るのです」
「科学とは違う現象・・・」
「ふむ・・・つまりこう」
アリスは右手の人差し指を立てた。そして、その先に炎が生まれる。
「わぁ」とみのりは驚いて椅子から転げ落ちる。
「ははは。驚いた驚いた」
アリスは大笑いをする。
「もう、突然、酷いなぁ」
みのりは尻を摩りながら、立ち上がる。
「すまない。まぁ、あんな感じに炎を出したり、ちょっと水を出すぐらいは何とか出来るが・・・これで1日分のマナを使い切った事になる」
「1日分?」
「あぁ、昨日から魔法を使わずに溜めたマナで出来た事は指先に炎を僅かに出すぐらいだ。これがこの世界の魔法って事になるな」
「へぇ・・・でも、自然とか、生贄とかあったら、多くのマナが集められるんでしょ?」
「そうだな。しかし・・・ここには自然が無いように思うが」
「山とか海に行ったら?」
「なるほど・・・今より、多くのマナが集まるかもな」
「あと生贄ってどうするの?」
「生贄か・・・生きている動物を殺す」
「げっ・・・」
みのりは気持ち悪そうな顔をする。
「そんなに・・・お前だって、肉とか魚を食べるだろ?」
「そうだけど・・・ねぇ」
「まぁ、そのついでにマナも貰う。それだけの事だ。因みに寿命で死ぬヤツはすでに生命力を失っているから、マナはほとんど得られないからな」
「大量のマナがあったら、凄い魔法とかも使えるのですか?」
「可能性はある。しかし・・・この世界は理屈が違うからな。簡単な魔法は出来たが・・・複雑な魔法はどうか・・・それにみのりは魔法をどう考えている?」
「魔法を・・・?」
みのりは頭を捻る。そして出た答えは。
「何でも出来る不思議な力」
「ふむ。間違いではない。だが、完璧な答えでは無い。魔法は様々な物に影響を与える力だ。だが、それだけ単体で発現する力は小さい。その為、魔法を介して、自然現象などに働き掛けるのだ」
「自然現象?」
「そう。火を出すのも空気や塵に働き掛け、火を起こしているに過ぎない。だから、燃やし続けるには空気中の塵などを集め続けないといけない。水も同じで、空気中の水分を集めて、水にしている。風だって同じだ。空気の流れを生み出す為に温度を高めたりしている。だから、思ったよりも出来る事は限られているのだよ」
「そうなんだ」
アリスは自信たっぷりに言う。今のみのりならアリスの言う事は全て信じるからでもある。久しぶりに尊敬の目で見られて、アリスは悦に入っていた。
「まぁ、魔法陣の描き方でも教えてやろう」
「魔法陣っ!」
みのりの目が更に輝く。
「ふむ。魔法は念じても、言葉でも発動するが、文字、絵、道具などを用いると更に大きくなる。儀式などもそうだ。日本にも祭りなどがあるが、効果的には魔法の発動を狙ったもんだろう」
「そ、そうなんだ!」
みのりは素直に驚く。この反応にアリスは更に悦に入る。
「ははは。しっかりと研鑽に励めよ!」
アリスはみのり相手に魔法の先生のように振舞った。
気分良く帰って来たアリスはマナを使い過ぎたのだろう。そのまま、ソファに倒れ込むように寝ていた。隆は嬉しそうに眠っているアリスに毛布を掛け、夕飯の支度を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます