第11話 魔法少女はやっぱり魔法を使いたい。
アリスは文科系の部活を次々と見て行く。それらはアリスにとって、全てが初めてで、楽しいものであった。しかしながら、入部したいと思うにはあと一歩な感じだった。
「ふむ・・・科学部が一番、面白かったかなぁ。だが、文芸部も捨てがたい。本が腐る程、読めるのはこの世界の知識を得るにもピッタリだしな」
「じゃあ、文芸部入っちゃってよ!」
佳穂がアリスの腕を引っ張りながらおねだりする。
だが、アリスは少し考え込んでいる。
「思うのだが・・・自分で部活を作るって事は出来るのか?」
アリスの言葉に皆が不思議な顔をする。
「アリスさんは何かやりたいことがあるのですか?」
里美が尋ねると、アリスは一拍、置いてから答える。
「ふむ。魔法を研究する部活を作りたい」
「魔法?」
一同が声を合わせて、驚く。
「アリスさんって・・・オカルト系が好きなんですか?」
佳穂が驚いて、尋ねる。
「おかると・・・何だそれは?」
アリスの不思議そうな顔に佳穂は慌てて、言い直す。
「あぁ、オカルトって、魔術や幽霊や超能力みたいな不思議な現象の事」
「不思議な現象・・・そうか。ここでは不思議な現象なんだな」
アリスは納得する。
「それでも研究をしたい。幸いにもここには調べるにも便利な物が多い」
「へぇ・・・なんで?」
里美は更に尋ねる。
「私は魔法使いだからな。幾ら、魔法の無い世界でも微かには魔法の使える可能性があるならば、それを研究したい」
「魔法使い・・・どういう冗談ですか。あははは」
みのりがケラケラと笑う。
「冗談では無いのだが・・・試しにほら」
アリスは左手を上げて、掌に橙色の炎を発生させた。
「て、手品?」
里美が驚く。
「いや、簡単な魔法だよ。この世界のマナではこの程度の魔法ですぐに使い切ってしまう」
炎はすぐに消えた。
「ま、魔法なんですか?」
佳穂も驚きながらマジマジとアリスを見る。
「そうだよ。私は大魔法使いだからね」
アリスは自信たっぷりに答える。
「ま、魔法なんて・・・信じられない」
里美は驚きながら言う。
「ふむ。炎を出したぐらいじゃ・・・信じて貰えないのも仕方が無い」
アリスは里美の反応こそがこの世界の反応だと感じた。
「とにかく・・・私としては魔法を研究したいから、その場所と時間が欲しい」
アリスに言われて、里美は困惑する。
「あの・・・確かに部活を新規に立ち上げることは可能です。校則ではこう決められてます。部活動は高校生に相応しい内容で且つ、部員3名以上、顧問として、教師、またはその資格を有する責任者を置く事です」
「魔法は高校生に相応しい活動なのか?」
アリスは佳穂に尋ねる。
「さぁ・・・まぁ・・・どうなんでしょう?」
佳穂はみのりを見るが、みのりは里美を見るしか無かった。
「まぁ・・・魔法がどうとかって言われると難しいけど・・・妖怪や幽霊などの類、郷土文化として調べる事は古くからあるわけだし・・・その手のオカルト的な物も変に怪しくなければ・・・大丈夫じゃないかしら?」
「変に怪しいとは?」
「魔術と称して、変な薬を使ったり、儀式をしたりしなければ?」
「ふむ・・・儀式・・・生贄とか?
「生贄って・・・」
アリス以外の三人は驚きながら尋ねる。
「マナを大量に得るには植物や生物から吸い取るのが手っ取り早くてな」
「植物なら良いけど・・・生物はダメ。この世界には動物保護法と言う法律があるから。動物は簡単には殺害が出来ないのよ」
「なんと・・・狩りとかは濫りに出来ないのか?」
「普通の生活じゃ、狩りはしないよ」
佳穂が苦笑いをする。
「そうか・・・私の世界ではやはり大きく違うな。解った。理解した」
「よかった」
里美は胸を撫で下ろす。
「だが、魔法を研究するのはしたい。その部活の新規申請とやらを試してみたいな」
「だったら、まずは部員集めね」
「はいっ!じゃあ、私がまずなるっ」
みのりが手を挙げる。
「ほぉ、魔法に興味が?」
アリスはみのりをマジマジと見る。
「さっきの見たら、俄然、興味湧いたよ!」
みのりは興奮しながら言う。
「ふふふ。私の部に入れば、みのりも魔法が使えるようになるぞ」
「本当?」
「大魔法使いが言うのだから、間違いが無い」
アリスはやはり自信満々に言い放つ。
「まぁ、魔法がどうか解らないけど、まずは部員を集めてね。それから顧問ね」
里美は呆れたように言う。
「わかった」
アリスは満面の笑みで答えた。
「えっ?」
アリスが帰宅早々に魔法を人前で使った話を聞いて、隆は唖然とする。
「ふむ。とても驚いていた。特にみのりは喰い付きが良かったな。最初に入部する予定だ」
アリスは自信満々に言い放つ。
「いやいや・・・あの・・・魔法はこの世界じゃ無い事だから、魔法なんか使えると知られたら、大変なことになっちゃうよ」
「そうなのか?」
「そうだよ。君だって、想像を超えるような人が目の前に現れたら、すごく興味が湧くだろ?」
「あぁ、そうだな」
「魔法が凄い力だと解れば、下手をすれば、国家が君の身体を解剖して、その力を調べようとするかもしれないんだよ?」
「むぅ・・言われてみれば・・・」
アリスは深く考え込む。それはかつての自分がやっていた事を思い出しているからだ。そして、涙目になる。
「うぅううう。ヤバいかもしれない」
「解ったか・・・解ってくれればいい。まぁ、今回は手品でしたと誤魔化すんだね」
「解った。因みにてじなって何だ?」
「そこからか・・・」
隆は疲れたように手品の動画をネットから探し出し、アリスに見せた。
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