第14話

30分位お店で待っているとレガシィさんがやっと帰ってきた。

手にはさっきと変わらず泡立て器を持っているけれども何か変わった様子は見られない。


「ユーコ、コレでどうだ?」

そう言って手渡された泡立て器はさっきと違いとっても軽くなっていた。

「え?コレってさっきの泡立て器ですよね?」

見た目は全く同じものなのに軽さが全然違うの、さっきは金属の塊を持っている重さが感じられたのに今は羽根を掴んでいるような軽さなのだから驚かない訳にはいかないわ。


「そうさ、とりあえず軽量化の付与を付けてもらったからしばらくそれで使ってくれ、量産するならいちいち付与してたらキリが無けいけどな」ガハハと笑いながら言っているけれども、魔法が付与されるだけでこんなにも変わるのね。

今度魔法付与についてもアンナさんに聞いてみようかしら。


「もう1つの方は今鍛冶屋に依頼している刃の部分が出来上がったら作るからもう少し待っててくれ」

ピーラーの方は刃の部分が小さいのでちゃんと鍛冶屋さんに依頼していくつか作ってくれているとは思わなかったのでお礼を言って泡立て器を持って店に戻る。


早速お昼ご飯の時間なのでこの泡立て器を使った何かを作りたいけれども…なにか良いのがあったかしら?

うーんゆで卵を刻む代わりに潰すときに使ってたくらいしかないかしら、あとはメレンゲでオムレツしか思いつかないわ。


思いつかないし、メレンゲのチーズオムレツにしましょう。

それと朝ごはんのあまりのスープにチキンを炒めて入れて、トーストにしましょう。


「ユーコさん、出来ました!」

スープの手直しをしているとロン君が声をかけてきた。ロン君には早速卵を黄身と卵白に分けてもらって見たの。もちろん、見本を見せてからね。

どうやら手先は器用そう、すぐにコツをつかんで全部で10個の卵を割り終えていた。

「ありがとう、次はさっきの泡立て器を使ってこの卵白をふわふわにするから見ていてね。」

コレだけ軽い泡立て器ならいっぺんにたくさんの卵白を使ったメレンゲもなんとか作れそうね。


必死で混ぜたメレンゲはふわふわにちゃんとなってくれたので卵黄をざっくりと混ぜて完全、さっさと焼いちゃわないとね。


フライパンを2つ使ってロン君と一緒に焼いてみる。

フライ返しを作ってもらうことを忘れていたわ。明日早速頼みにいきましょう。

木べらで何とかしてロン君も上手に焼けたみたい。

やっぱりこの子料理のセンスあるかもしれないわね、コレなら私なんかよりあっという間に料理人として成功しそうだわ。

サンクート様もきっと喜んでくださるだろうしロン君には頑張ってもらいたいわ。


昼食後、ロン君には牛骨スープの作り方を教えつつアク取りをお願いしてから咲百合と2人で街の外の草原にピクニックに来ている。


「ママぁ!アンナおねーちゃんがいるよぉ!」

どうやら今日も草原でアンナさんは子供たちの先生をしているようね。

アレから私もこっそり魔力操作を練習しているの。

ふとした時に少しづつね、何となくお腹の辺りが暖かくなるような気がして少しだけ身体を巡るような感覚がするようにはなった気がするけど数日程度では急に出来たりはしないのは大人の堅い考え方のせいかもしれないわね。


「ママ、わたしもまたアレやってみたい。」

幸い前回は魔力暴走とかしてなかったので良かったが、素人が子供にやらせるには不安が残るので、

「そうね、アンナさんのところに行ってまた一緒にやっていいか聞いてみましょうか。」

「うん!」



「アンナおねぇーちゃーん」

咲百合が走ってアンナさんに駆け寄るが草原に転がっていた石ころにつまづいてしまう。

「さーちゃん、大丈夫?」

幸い草がクッションになり少し泥が着いたくらいで済ホッとする。

「サーユ!泣かないなんてエラいな!」

アンナさんもこちらに気づき咲百合が転んでも泣かなかった事を褒めてくれた。

「おねぇーちゃん、わたしもまたそれやりたいの!」

「ん?今日もやってみるかい?」

「アンナさん、お邪魔じゃなければお願い出来るかしら?」

「えーまたこのチビもかよ!」

年上ぶりたくなるお年頃?な男の子か文句を言うと、

「そーかい、それならお前がやらなきゃいいだけだな。サーユ今日もこの前みたいに出来るかな?」

うん、アンナさん容赦ない…まぁコレもボランティアみたいなものだって言ってたから嫌なら教えないぞと強気で言えるのでしょうね。

「ゴメンね、出来るだけ邪魔しないようにするから一緒に練習させてね。」

不貞腐れ気味の少年に一言謝ってみたが、余計にそっぽ向かれてしまったわ。

「ユーコ気にしないでいいぞ、それよりも、さっそく始めよう、まずはおさらいで身体の中で魔力グルグルと動かすところからだ。」


うーん、やっぱりコツが掴めないわ、血液循環をイメージしてるんだけどなんかパッとしなくて、なにか別のイメージの方がいいのかしら。


「ママぁ、ぴかー!」

咲百合の魔力が多いのかしら?右手を挙げてそこだけうっすら光っているのだから。

「サーユ!もう手だけに魔力を集められるんだな、凄いぞ。」

アンナさんも咲百合の頭を撫でながら褒めてくれて咲百合も嬉しそうだわ。

「ほんと、ぴかーだね、さーちゃん楽しい?」

「うん、たのしいよ!」

幸い魔力コントロールが安定してきたのか循環の次のステップの1箇所に魔力を集める事ができるようになったみたいね。


それにしても、咲百合が楽しんでいるのであれば良かったわ。今度アンナさんに魔力暴走についても聞いておかないと、なにかあってからでは遅いし、咲百合が怪我をするのはもっと怖いわ。


しばらく魔力操作の練習をして今日も私たちは先に宿に戻るのでアンナさんや子供たちに挨拶をしてご機嫌の咲百合とゆっくりと帰りましょう。

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