第15話

「ユーコさん、おかえりなさい。」

ロン君が鍋の番をしながら芋剥きをしてくれていた。

包丁にはまだ慣れていなかったようなので練習がてら野菜の皮むきを宿題として置いていったのだがやっぱり無駄が出たり時間がかかったりはしているがだんだん慣れてきているようにも見えるので基本的に器用な子なのかもしれないわね。


「ロン君火の番をしてくれてありがとう。」

スープの様子を見て見たけれど丁寧にアクを取ってあるようでいい感じだわ、私より丁寧かもしれないわね。

「それじゃ、おやつでも作りましょう。」

予定通りにさつまいももどきでスイートポテトにしましょう。

問題は蒸かし器ね、蒸すという料理方法は無いみたいだから調理器具も無いわけで…

仕方が無いので鍋にお皿をひいてなんとかなるけれども、コレも頼まないと行けない物になるから形を絵に書いたりしておかないと行けないわね。

「ママ、きょうはなにつくるの?」

「おやつ?ってなんですか?」

ロン君もおやつに興味津々だわ。

料理の文化の前におやつ文化の方が発展しそうな気もするけれども私は私のペースでやっていけばいいわよね。

以前読んだ小説のように商人になってとか、いかにもチート級のスキルが有るとか、あ!コレはアイテムBOXはそれに入るわね、でも言いふらさなければ分からないしチートで派手な料理革命を起こすなんて私には向いてないからこの小さな食堂で人に教えてその人がまた色んな人にと無限の樹形図のスタート地点であればそれでいいのよね、それですら私なんかで良いのかとも思うくらいなのに、今更だけれどもサンクート様はなんで料理人を選ばないで私を選んでくれたのかしら?

どちらにせよ今は以前とは違って穏やかに過ごせているのは本当に有難いことで、使命?は有るけれどもこの生活は既に気に入っているので変えたいと思わないわ。


「おやつはね、食事との間食に食べるもので甘い物が多いかしら?しょっぱいもの有るから甘い物だけとは言えないわね。」

ロン君に説明するけど、地球での正しいおやつの定義なんて知らないし屋台で肉串を間食に食べる人もいるらしいのでそのイメージで伝われば良いかと思うし。

「なるほどです、僕もおやつ作るの手伝います!」

「ありがとうロン君、さーちゃん今日はスイートポテトよ。」

「ポテト!甘いヤツ?」

咲百合の中ではフライドポテトとスイートポテトはしょっぱいの、甘いのと判別していみるたいなのよね。

「そうよ、甘いヤツよ。」

「わーい」

「じゃ咲百合はおイスでいい子に座ってられるかな?」

「はーい!」

やっぱり料理中はあまり咲百合が動き回って欲しくないのでこうやだて聞き分けが良いのは助かるけどきっとつまらないわよね。


「ロン君鍋に拳が浸かるくらいお水を入れてくれるかしら?」

鍋のサイズより一回り小さい平皿ともう一回り小さいお椀を探してきて鍋に入れる、さつまいもを分厚く輪切りにして塩水に5分晒してから平皿にのせてから鍋をコンロにかける。

そういえばバターを切らしていたわ、泡立て器も有るしちゃっちゃと作っちゃいましょう。

牛乳とりんご酢を入れてロン君に混ぜ方を伝えて作ってもらう。

「うわぁー!ふわふわになりました!」

「はい、味見」小さなスプーンにすくってロン君に手渡す。

「ママぁ、わたしも!」

それを見た咲百合も欲しがる。

「さーちゃんがクリーム舐めたるこのあとのスイートポテトが減っちゃうぞ?」

「えーお兄ちゃんはなんでいいの?」

「お兄ちゃんは今度から1人で作れるように味見なだけよ、さーちゃんも大きくなって作れるようになったら一緒に味見しようね!」

「うん、わかった…」

しょんぼりしている咲百合を見ると甘やかしたくなるけどそれは良くないとグッと堪える。

「ユーコさん、これなんですか?!」

味見をしていたロン君はふわふわななのに口に入れるとふわっと溶けちゃう口当たりに驚いていた。

「バターミルクって言うものよ。パンに塗っても美味しいわよ?」

本当は理科の実験で作るような塩のバターも作りたいんだけど手間暇かかるイメージなので手を出せていない…

いつか作り方を監修して作って貰えたらいいかしら?とは思っているのよね。

芋の様子を見ると菜箸がわりに使っている棒が簡単に刺さったので火を止めて鍋から芋を取り出す。

木のボウルに芋をいれ潰していくがココで裏ごし器が欲しいところ。しっとりとした舌触りは手間暇かける価値有るんだけれども本当に無い物ねだりになってばかりだわ。

ある程度潰せたらバターを入れて混ざったら次は牛乳を少しずつ入れていく。

なめらかになった所で形を形成して完成。

オーブンがなのでこれ以上は作れなかったので卵黄のこんがりツヤツヤはお預けね。


「コレがスイートポテト…」

お皿に乗ったスイートポテトを色んな角度から眺めているロン君、もちろん潰したり混ぜたりはほとんどロン君がやってくれたので力作業が無い分私はラクに作れて助かったわ。

形成は咲百合も手伝ってくれたので楽しく出来たし、お茶も入れてほっと一息ついておやつタイムね。

「ロン君も見てないで食べた方が良いわよ?最近ではおやつ時を見計らったかのように来る子が1人いるから食べられちゃうと思うわ。」

そう、最近では時間が出来るとアンナさんがおやつ時を見計らったかのように来るのでこっそり余分に用意をしてある。

彼女には魔力操作を教えてもらったのでお礼とし渡しても良いかなと何か手伝ってくれた時はお金は貰っていないの。


「ユーコ!なんか今日も甘い匂いがするから見に来ちゃった!」子供たちの指導が終わったその足で来たみたいね。服に少し葉っぱが付いているわ。

「今日も教えてくれてありがとう。コレお礼に良かったら食べてちょうだい。」

分けて置いたスイートポテトと新しいお茶を入れてアンナさんに差し出す。


「やった!ユーコが作るものは何でも美味いから大好き!」

アンナさんはご機嫌で席に座るとあっという間に食べてしまったわ(笑)


「ごちそうさま!ってユーコ人雇ったの?」

今更ロン君に気づいたらアンナさん。

「そうよ、タスマニアさんの所から1人借りているって言う方が正しいわね。その代わり彼に料理を教える約束でね。それと近いうちにもう一人入る予定よ。」

とりあえず人選してから連れてくるという話だったし早くても明日以降だろう。

みんなでワイワイお茶を楽しんでからまた夕食の仕込みに戻るのだった。


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