第9話
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
怒涛のディナータイムが終わった…
正直言って仕込みはかなり多めにしたのよ?ブイヨンとかって大鍋で沢山作る方がより美味しくなるって言うじゃない?
厨房にあった1番の大鍋は咲百合がすっぽり入っちゃうくらいの大きさで、大量のガラを出してもその半分はあったのに…
余った分はアイテムBOXにしまっておけば朝食のスープとか、賄いに出来るかなって思ったのが大間違いでした!
と言うよりも、原因はタスマニアさんとアンナさんがそれぞれ仕事仲間や冒険者仲間に自慢したので自分にも食べさせて欲しいと本来お泊まりの方は銅貨30枚なのに対して銅貨50枚とふっかけたのにも関わらず食べさせて欲しいと言うのだから断れなかったのだ。
とりあえず仕込んであった温野菜のシーザーサラダとフライドポテトから出したんだけどサラダって概念が無いので何コレ?ってなっていたけれどもすぐに喜んで?と言うより競い合って食べてくれていた。
フライドポテトは銅貨10枚で山盛りを追加出来ると言ったら各テーブル3皿も追加で平らげていたのにはどんだけ食べるの?と思ってしまうほどだった。
ブイヨンから作ったホワイトシチューと、野菜スープもあっという間に無くなるし、ガッツリお肉が食べたい人にはガーリックステーキを出したんだけれども、それも大量に注文が入って目が回りそうだったわ。
でもみんなが喜んでくれたのはとっても嬉しくてやりがいはあったし、正直日本では大した腕前では無かったけれどもここでは絶賛されるのもなんだかむず痒い気もする。
「ユーコ、おつかれさま。」
キリスさんがそっとワインを差し入れしてくれた。
もともとビールが苦手でエールも好きになれなかったのだけれども、ワインはとっても美味しかった。
「ありがとうございます、まさかこんなに忙しくなるとは思いませんでした。」
「ははは、そりゃワシらもびっくりの大賑わいじゃったな!」
「ありがたいけれど、疲れました。」
「まぁしばらくはこの調子かもしれんの、必要なら厨房に手伝いを雇うのもありだから自分の采配の中で好きにやっとくれ。」
「給仕のお手伝いして下さって助かりました、この調子が続くなら確かに仕込みだけでも人を雇ってもいいかもしれないですね…」
「その辺はユーコの好きにしなさい、ワシらの宿で食堂を開いたと思って好きにしてくれて構わんから。」
「何から何までありがとうございます。」
「いいさ、ワシらもユーコのお陰でまた宿が続けられているんじゃから。」
キリスさんと今後の話、お金の話をした時に正直客足が年々減っていて宿をしめて田舎でのんびりする話も出ていたけれどもやっぱり宿を手放したくなくてズルズルと今に至っているという話も聞いていたので嬉しそうにしているキリスさんは生き生きしていた。
「さてと、ワシは先に部屋に戻る、ユーコの部屋でバーさんがサーユを寝かしつけてそのままそばにおるからもう少し休んでからで大丈夫じゃからゆっくり飲むんじゃよ」
キリスさんはそう言いつつしっかりトレーにフライドポテトとワインとグラス2つを持って食堂を出ていった。
「まぁ2日目でコレだけ出来れば、サンクート様も喜んでいるかしら。」
コップに残っていたワインを流し込みワインボトルとコップをアイテムBOXにしまってから部屋に戻りミチェさんにお礼を言う。
「いいんだよ、私に孫が出来たみたいで嬉しいしね、それじゃおやすみ」
「おやすみなさい」
咲百合も優しく穏やかなキリスさんとミチェさんにはスグに懐いており今もぐっすりと寝ている。
しばらく寝顔を眺めてからアイテムBOXから隠しておいたシチューとトーストにさっきしまったワインを出してゆっくり味わう。
「んー!手間暇かけて作ったかいはあるわね、明日は豚骨と鶏がらを作ろうかしら。」
それにしても、お風呂が無いのは困るわ。
やっぱり日本人はお風呂好きだし、家を追い出されてからなかなか湯船には浸かることが出来なかったからお風呂付きの家を買うのを目標にしようかしら。
異世界ものの物語でよく話題になるお風呂だけれどもやっぱり私もしばらく安心して過ごせる場所が出来るとお風呂がより恋しくなってしまった。
そんな事を言っても今は仕方が無いので手早くお湯で体を拭き寝る前に帳簿を付ける。
コレでも結婚前は事務をしていたので多少の経理の仕組みは分かるし、ドンブリ勘定なところもあるけれども手持ち金をマイナスにする気は無いので簡単なもので良いので使った内容と金額、貰った金額と人数を把握するために黒板のようなものも買っておき、そこに簡単に書いておいたものを帳簿に移していく。
本当は伝票的なのを作りたかったけれども紙は高かったので帳簿の分だけ紙を使うことにしたので、この辺は色々試してみてからになると思うわ。
一通り作業を終えてアイテムBOXにしまってから今日もサンクート様へ感謝をして咲百合の横に潜り込む。
子供特有のぬくぬくした体温と穏やかな寝息に包まれるとあっという間に眠ってしまったのだった。
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