第7話
市場エリアを抜け雑多な感じの工房らしき街並みのなかを迷わずドンドン進んでいくマーサを見失わないように追いかける。
「さぁ着いたよ!」
「ココは?」
古ぼけた看板の、薄暗いお店に入ってみると調理器具が沢山並んでいた。
「ワタシの従兄弟がやってる工房、ここなら欲しいものがなくても作れそうなら作ってくれるよ。」
「やかましいと思ったらマーサか、今日はどんな無茶を言いに来たんだ?」
マーサっていつも無茶ばかり言っているのかしら…
「なんだい無茶なんて頼んでないだろ?」
「この前は主婦仲間でまとめて大量に買うからって思いっきり買い叩きやがったクセによく言うぜ。」
「あら良いじゃないしばらく売れてなかった在庫整理にもなったんだしさ」
「へーへー、んで?今日は何をすりゃいいんだ?」
マーサには勝てないみたいで従兄弟さんは話を元に戻す。
「このユーコがね、トゲトゲの付いた板状の道具を探してるんだよ、なんかないかい?」
「トゲトゲ?何に使うんだい?」
「料理に使いたいんです。調理器具以外の道具で似たようなのでも良いので何かありませんか?」
「料理?面白そうだな!ちょっと待っててくれ。」
そう言って従兄弟さんは奥の工房に入って何やらゴソゴソしている音が聞こえてくる。
「ぉー、あったあった!」
しばらくして出てきた時に手に持っていたのは変わった形のヤスリ?だった。
「こんなんどうだい?」
大きさは板チョコサイズ?に持ち手が付いている感じ、ギザギザの部分もそっと触ってみるがチクチクしていてとりあえずチーズなら問題なく削れそう。
「コレはおいくら?」
ないよりマシ!マーサもここなら新しい道具も作ってもらえるみたいだしそれまでコレで代用させてもらおう。
「うーん、試しに作ってみたけど使い勝手が悪いんでしばらくしまい込んでたヤツだしなー。」
どうやら思いつきで普通のヤスリより大きいものを作ったけれども使い勝手が悪くお蔵入りした作品らしい。
「そしたら材料費だけで良いじゃないか!どうせしまい込んでんだからさ。」
マーサが従兄弟さんの背中をバシバシ叩きながら言ってくれた。
「いってーよ、確かに材料費貰えたらしまい込んでいるよりいいから、銀貨1枚でどうだい?」
「はい!ありがとうございます。」
「良かったね、ユーコ」
「マーサさんもありがとうございます。」
「いいって、それよりこの道具屋の常連になってくれればそれでいいさ!」
「なにか他に欲しいものがあればまた相談してくれよ!」
「はい、また近いうちにお金が貯まったらお願いしたいものがいくつかあるのでぜひお願いしますね。」
やっぱりちゃんとしたおろし金やスライサーとピーラーのようなものにフライ返しやザルは欲しいもの。
日本の手軽で便利な道具たちに慣れてしまっているとないと不便ね。
「じゃ、重たいものは昼過ぎに宿屋に届けるから待っていておくれ。」
マーサの八百屋に戻り買い物の続きをして店をあとにする。
「あとは、パン屋と肉屋に行かないと」
今まで仕入れていたダメなお店を回っている時間があったからだいぶ時間がかかっていて咲百合も疲れてきているわ。
マーサにおすすめしてくれたパン屋も肉屋もスムーズに済みやっと宿屋に戻ってこれた。
「あら、ユーコおかえり」
ミチェさんがカウンターにおり出迎えてくれた。
久しぶりにおかえりと言ってもらえたことになんだかちょっとくすぐったい気持ちになる。
「遅くなりました。今からお昼ご飯作りますからちょっと待っててくださいね!」
とりあえず肉屋さんもパン屋も夜用のものは後で届けてくれるとの事だったので昼ごはん用の食材だけ持って帰ってきた。
ちなみに、ミチェさん達には部屋を無償で使わせてもらう事になったので3食の賄いは私持ちで用意することになったから急いで作らないとね!
買ってきたウーコッコの肉(鳥肉)にハーブと塩で下味をつけて細かく刻んたガーリック風のものを油でさっと炒めてから皿に移す。皮目から肉を焼くといい香りがしてきて思わずお腹がなってしまったわ。
付け合せの蒸し野菜を少々とパンをトーストして完成!
本当はスープが欲しいんだけれどもコンソメとか無いしなぁ、とりあえず肉屋さんで捨てる骨はオーク、ウーコッコ、ミノタウルスとそれぞれ肉と一緒に配達して貰えるように頼めたから午後はそれにかかりっきりになりそうね。
「コレまた美味そうだな。」
「そうですね、いい香りがたまりませんね。」
仲良くし夫婦がニコニコしながら食卓の用意を手伝ってくれる。
「まま、お腹すいたね。」
咲百合用にお野菜多めでお肉を小さく切り分けたお皿もちゃんと用意してある。
「お待たせしました。食べましょう。」
ハーブをつかってお肉を焼くのもあまり経験が無くてどうかな?と思ったけれども美味しく焼けていてよかったわ。
食べ終わったら咲百合がお昼寝している間に牛骨のスープから調べないと!
それから天然酵母パンも作りたいし、酵母の発酵ならアイテムBOXをつかって部屋でも出来るから後で瓶詰めだけはしてしまわないと。
食べながら今日の予定を確認してお夕飯の献立を考える。
「ユーコごちそうさま、片付けは私らがやっておくからサーユちゃんを寝かせてやりな。」
考え事をしていたら咲百合が食べたながら寝ていた。幸いほとんど食べ終わっていたので急いで自分の分は食べてしまいお言葉に甘えて咲百合を抱き抱えて部屋に戻った。
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