3.2.24 添寝(サーシャ)

――王国歴 300年 晩秋 ザルトビア要塞


細長い食卓には細かな金色の刺繍が施されたテーブルクロスが敷かれ燭台に火が灯る。その食卓の片側に座るエリス王女は不敵な笑みを浮かべてこちらを見ている。彼女は白粉を塗り唇には紅を差している。


(これは夢だ……しかし、化粧をすると戦場とは雰囲気が変わるな)


片側に座るザエラは体が動かない。暫くすると、召使いメイドたちが皿に盛りつけた料理を食卓に並べていく。


「これは何の真似だ?」

「戦場で招待した魔人を愛でる晩餐ではないか。忘れたとは言わせぬ」

エリス王女の合図で召使いは早々に立ち去り、二人きりとなる。


「私は料理をすべて並べ、目で楽しむのが好きなのだが、今宵は特にすばらしい」


(ああ、これは悪夢だ。早く覚めて欲しい)

ザエラの願いとは裏腹に体は動かないまま、食卓に並ぶ料理の説明が始まる。


「これは魔人の腿肉を粗塩で漬けて熟成させた生ハムを薄くスライスし、甜瓜メロンに巻いた前菜オードブルだ。若いメスの柔らかい筋肉と程よいさしの具合が最高で、舌の上でメロンの甘みと塩の効いた濃厚な肉が溶け合い、さぞかしワインに合うだろう」


「こちらが最初の肉料理アントレ、胸肉の香草焼きだ。魔石の周りの肉は野性味あふれる力強い風味があり、香草を加えるとそれに爽やかさが加わる。また、胸に光る魔石がまるで宝石のように美しい。彼女の白い皮膚を剥ぎ取り調理した料理人コックが羨ましいな」


(もうやめてくれ。悪趣味にもほどがある)


デザートソルベはシャーベットだ。魔法陣が煌めいているのが見えるだろう。彼女の魔眼から水晶体を慎重に剥ぎ取り上に乗せたものだ。彼女は死してなお人を魅了するな、心が吸い込まれるようだ。さあ、次はいよいよ本日のメインディッシュだ」


(やめろ…やめてくれ……)

エリス王女は皿に被された銀の蓋を持ち上げる。その中から赤みを帯びた銀色の髪を持つ魔人の頭部が現れる……


◇ ◇ ◇ ◇


「やめろ」

ザエラは大声を上げて目を覚ました。ベットの脇にある水差しから水を注ぎ、数杯飲み干してようやく落ちついた。


「どうかしたの?」

となりの部屋からサーシャが様子を見に来た。ベットに座りタオルをザエラの額に当てて汗を吸い取る。普段は二人で一緒に寝ているが、この季節は寝室を分けている。商人見習いとして街を出てから、寂しいからとサーシャが彼のベットに潜り込んできたのが始まりだ。お互いに裸で寝るが大人の関係ではない。


でも、この季節だけは寝所を分けている。アルケノイドは晩秋から初冬に男性と交わり春に出産する。この季節は彼女たちの発情期なのだ。幼馴染の仲間という心地よい関係から一歩踏み込んだ深い関係になることを恐れていたのかもしれない。二人は申し合わせたかのように互いに離れて生活してきた。


ザエラは突然、サーシャを強く抱きしめた。彼女の髪の毛から発情期特有の濃厚な女の香りフェロモンが彼の鼻腔を通り脳を刺激する。「ゴクリ」彼は唾を飲んだ。


「君が殺される夢を見た。目の前にいる君が愛おしくてたまらない」

「私はいいわよ。貴方の決心を待っていたのよ」


二人は抱き合いながらベットに横になる。ザエラはサーシャに覆いかぶさり、口づけを交わす。最初はゆっくりと次第に舌を絡ませながら唇を吸い合う。しばらくするとザエラはサーシャの首筋から胸に向かい舌を這わせながらキスを繰り返す。彼女はくすぐったそうにのぞける。ザエラの舌は次第に下腹部を這いながら下へと向かうと、サーシャの柔らかなアンダーヘアーが彼の顎を優しく撫でる。ザエラは愛おしそうに何度もキスを繰り返す。


「そろそろ挿れるね」

サーシャが十分に濡れていることを確かめてから声を掛ける。


「初めてだから……少し待ってね」

サーシャはお尻の下にタオルを敷き、大きく深呼吸する。


「いいわよ」

「ここで合ってるかな?中に入らないけど……」

「もうちょっと上かな、その辺りよ。ゆっくり挿れてね」


ゆっくりと挿入していくと突然暖かい肉塊に包まれる。あまりの気持ちよさにザエラは夢中で腰を振り出す。「もう少し、ゆっくりとね……」、サーシャの言葉は彼の耳に入らないようだ。彼女は苦笑してザエラの肩に腕を回す。


「ああ、気持ちいい。もう出てしまいそうだ」

ザエラが腰を浮かそうとするのをサーシャは両足で抑えて膣の奥深くに包み込む。そして、彼の顔を両手で掴みじっと見つめる。ザエラは堪らず彼女の膣の中で果てた。


「ザエラが絶頂するイクときの顔、子供みたいで可愛かったわ」

息を切らしながら彼女に被さるザエラの背中を撫でながら耳元で囁いた。


「ねえ、次は貴方に試し欲しいことがあるのだけどいい?」

サーシャは耳元で恥ずかしそうに小声で喋る。


「やってみるけど、すぐに勃つかな」

ザエラの心配をよそに、サーシャの細くしなやかな指で摩られるとすぐに勢いを取り戻した。


「もう一度、挿れるね」

サーシャのお願い通り、挿入しているときに男根から魔力を流出しながら腰を動かす。すると、彼女は突然痙攣して顔を紅潮させる。少しずつ放出量を増やしながら腰の動きを早くすると、喘ぎ声を堪えるようにザエラの肩に噛みつく。


「はあ、何だろうこの感覚。意識が飛んでしまいそうよ」

「一緒に絶頂しよういこう

ザエラが再びサーシャの膣の中で果てると同時に彼女は痙攣し意識を失う。そして、そのまま二人とも眠りに落ちた。


◇ ◇ ◇ ◇


朝、目覚めると隣にサーシャの穏やかな寝顔が目に入る。サーシャの髪を撫でていると彼女が目を覚ました。ザエラはサーシャを抱きしめて首元にキスをする。そして、彼女の形のよい乳房を弄びながら耳元でザエラは囁く。


「僕も君に試して欲しいことがあるんだ。それはね……」

サーシャは笑いながらザエラの願いごとに耳を傾けた。

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