2.1.18 十階 古代英霊(2)
――ザエラ六歳 夏 アニュゴンの街 郊外 地下迷宮 十階(続き)
(ふぅ、ギリギリ助かった。小剣を持ってきてよかった)
ミーシャは高速に繰り出される槍を小剣と鎖で捌きながら距離を保っている。
ラピスから正装で来るように伝えられた時は武器を持っていくべきか悩んでいたのだ。おそらく、これがなければ確実に胸を貫かれていた。
相手は槍使いだから懐に入って近接戦闘をしかければ勝機はあるかもしれない。近接戦闘の殴り合いはオルガとの訓練で慣れている。突然、
ミーシャは遠距離から‟
魔法防御の
槍が喉元に突き出された瞬間、上半身を下げて股をすり抜ける。そこから腕を使って跳ね上がり
『キエエエ』
何とか腕を動かそうとすると、突然、背中から胸に熱いものが突き刺さる。赤い槍に赤い血が流れる…魔力糸で操作しているのだろう。
ミーシャは体の石化が進み、槍に突き刺された胸から血が流れていても落ち着ていた。石化は防げないが、ザエラがくれた腕輪で持続再生が効いており、また、体内の魔石と心臓部は背中の防具で守られているため、辛うじて槍は急所を外している。
左手では槍を握り抜かれないよう力を入れながら、
『ギャアア』
「お姉さま、しっかりして」
サーシャが駆け寄り、‟
「あら、サーシャは
サーシャは、
「……あなたは私よりも戦闘のセンスがあるのかもしれないわね」
ミーシャは平然とした佇まいのサーシャを見つめて呟いた。
(それにしても遠隔操作?の魔石といい、魔眼といい、私たちの上位種なのかしら…)
ミーシャは手のひらで赤く輝く魔石を見つめながら考えていた。
◇ ◇ ◇ ◇
僕の目の前には、瑠璃色の鎧を身にまとった
『シュッ』
間合いを詰めて拳を突き立てる。僕は防御しながらカウンターを狙う。お互いに強化魔法は掛けているが、攻撃魔法は使わずにただひたすらに、殴り、蹴り合う。
しばらくすると、
『スパンッ』、最初の剣戟で二本の鞭がはねられ床に転がる。刀が当たると防御魔法が無効にされ、縄の部分が簡単に切断されてしまう。刀身に小さな魔法陣が点滅しているのが見える。
続いて繰り出される剣戟は鞭の頭部にある刃で受けるが、剣筋が変則的に変わり、鞭の縄が切り落されていく。すぐに中央の一番太い鞭を残すのみとなる。
‟
‟
‟
僕は切り落とされた鞭の頭部を魔力糸で操りながら
(中央の蛇の胴体にミスリルの刃を仕込んでおいて正解だったな…)
僕は大きく息を吐くと床に座り込む。
「ザエラ、大丈夫だった?」
アルケノイドの
僕はラピスに抱きしめられた
‟
(次話に続く)
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