2.1.2 一階 門番との戦い
――ザエラ五歳 春 アニュゴンの街 近郊 地下迷宮
「獅子が描かれた扉……
ひたすら
カロルは記憶した見取り図を休憩中に羊皮紙に描き写す。元々、手先が器用で、折り紙や絵を描くのが得意だ。さらに動きが俊敏なため、見取り図の描き方だけでなく罠設置や解除なども師匠から学んでいる。
「これで一階はほぼ調査済みかな。 カロル、見取り図を見せて」
カロルは両手で羊皮紙を広げた。図面一杯に通路や小部屋が描き込まれている。未調査のところはなさそうだ。よく見ると、出現する
「細かく丁寧に書いてあるわね、頑張ったわね」
ミーシャがカロルの頭を撫ると嬉しそうにはにかむ。冒険者たちが描いた見取り図や
「今日はこれで終わりにして、明日、
大量に入手した魔石と骨を担ぎながら、一階の石像まで引き上げた。
――翌日
僕らは扉の入り口に集合した。みんな普段とは違う防具を装備している。
「お嬢、その眼帯は何?」
オルガの視線は眼帯で目を覆うミーシャとサーシャに向けられた。
「眼帯で目を覆うと、額にある六つの触眼が敏感になって、物体認識と空間把握の能力が高まるの。だから、舞踊や狩猟の練習ではいつも目を覆っているのよ」
眼帯の上にある六つの水晶のような球が、いつもより紅く輝いて見える。面長で整った顔つきの
「目は見えないけど、オルガ達が手に盾を持っているのが分かるわ。細かな魔力の流れを感じるから、きっとザエラの糸を使った盾ね。 違うかしら?」
「よくわかるね、正解だよ」
この日のために僕の糸で編んだ布を何重にも重ねた盾を前衛に渡している。布の重ね方を工夫することで盾への衝撃をうまく分散できるようにしている。さらに、魔力を流すと、強度が増し、かつ、ある程度の自己修復もできる優れものだ。
「そろそろ扉を開くよ」
「次は私たちの装備も作ってね」
おねだりをするお嬢様たちに頷きながら扉を開く。
僕たちが部屋に入ると扉は静かに閉まる。 内側から扉を押してみたがビクともしない。目の前には、大量の
前衛は盾で
僕は
一時間近く攻撃を続けたが、
床には普段より質の良い魔石、骨、長剣、弓が転がる――――これは稼ぎどきだ、僕たちの体力が続く限り狩り続けなくては。神の
「みんな、体力の限界まで狩り続けるよ、頑張ろう」
それから数時間、交代で休みながら狩りを続けた。
「ザエラ、お腹減ったから、帰ってご飯食べたい」
「ザエ兄、時々意識が飛んでしまう……そろそろ限界だ」
「ギィイイ(オマエ、イツモヒトヅカイアライ)」
「では、おしまいにするね」
僕は天井に駆け上がり、
「いつ見ても痛そうだ、兄さんの魔法は」
「ふう、いっぱい倒して疲れたけど楽しかった。 一階は楽勝だったな、ザエ兄」
「ギィ、ギャ(オマエ、イイトコトルナ)」
(なんだか、さきほどから敵意を感じるけど……気のせいかな)
「そうだね、オルガ、みんなお疲れ様。 カルロ、袋をみんなに配って。床に落ちている、魔石と骨と武器を残さず回収しよう。大変だけど頑張ろうね……」
床に積みあがっているそれを見て、みんなげんなりした。
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