第二部 覚醒
第一章 地下迷宮
2.1.1 食べ盛り
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"アニュゴンの地下迷宮"
アニュゴン一帯はかつて魔人が統治する帝国の領土だった。今から約千年前という気の遠くなるような昔のことだ。帝国の首都はアニュゴンの街近辺に位置していたと伝えられている。街の南を流れる河川に沿って残る城壁跡が、かつての首都の大きさを物語る。地下迷宮は首都中央付近に建てられていた神殿跡と考えられている。
神殿の
魔導具が使えるのはアルケノイドのみだ。 理由は不明だが、彼らは"神殿の守人"と呼ばれており、何からの因縁があると考えられている。普段、地下迷宮は使われていないが、年に一度だけ
"アニュゴンの魔獣祭"として人族の冒険者が毎年多数集まる。しかし、一階に魔物が溢れているため、二階より下に進む者はほとんどいない。これまでの記録では最終到達階は四階となっている。なお、下の階へ降りるには、獅子が描かれた扉の先にいる各階の
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――ザエラ五歳 春 アニュゴンの街 近郊 地下迷宮
「前方に
後衛(ミーシャ、サーシャ)は後方から光魔法‟
「おらっ」、「ガアア」
オルガはハルバートで、キリル、イゴールは棍棒で
さらに、前方から
「次は僕がやるよ、前衛は下がって、後衛は後方支援お願い」
僕は先頭に立ち、手に握りしめた鞭に魔力を込める。
「みんな小休憩しよう」
「ザエ兄、ほら、水渡すよ」
僕はオルガが投げつけた水筒をかろうじてつかむ。休憩中は通路の隅に集まり、壁に背を向けて半円形に座る。 敵がどこから現れても気づくことができる。通路は静まり返り、僕達の話し声しか聞こえない。
「いつ来ても誰にも会わないな。ザエ兄とお嬢たちが持つ魔道具がないと中に入れないというのは本当なんだな」
オルガは干し肉を嚙みちぎりながら呟く。
僕たちはアニュゴンの街から北に位置する地下迷宮で狩りをしている。ここに入るには、特別な魔道具をアルケノイドが操作する必要がある。その魔道具は
「ここで狩りを始めてもう一か月ね。
「私は服に付いた彼らの匂いが嫌なの。今すぐ 家に戻って着替えたいわ」
「そうよね。洗濯しても匂いが取れないから困っちゃう」
ミーシャとサーシャはお嬢様育ちのせいかここでの狩りに乗り気ではないようだ。
「でも、魔石と骨はかなり溜まったよ。もうすぐ、新しい家畜を買えると思うな」
カロルは魔石と骨で膨らんだ袋を叩いて見せた。ちなみに、砕かれた骨は肥料として人気が高く、商人が高値で買ってくれる。
地下迷宮での狩りは、実地訓練も兼ねてはいるが、主な目的はお金稼ぎだ。お金を稼ぐ理由はいくつかあるが、まずは
魔人は八歳、人族は一六歳で成人する。二倍近く成長が早い。僕は五歳となり、顔つきは幼さと精悍さが混じりあう青年のそれとなっていた。他の仲間達も同じだ。最近はいくら食べてもお腹がすぐ減り、食べ物で喧嘩ばかりしている。そう、僕たちは食べ盛りなのだ。
キリル、イゴールは休憩に飽きたのか、互いに両手をつかみ合い、力比べを始めた。僕が二匹に出会ってから、彼らは二回りは大きくなり、逞しく成長した。ゴブリンは存在進化が頻繁に起こる種族だそうだ。彼らもそれが近いのかもしれない。
「そろそろ再開しよう」
僕は魔力を放出して、周りにいる
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