孫悟空の術

朝も昼も夜も

あののことで頭が一杯


 かわいい笑顔

 長い髪をなでる仕草

 つぶらな大きな瞳

 細くのびた足

 しゅっとした鼻

 ふくらんだ胸

 

いつか告白しよう

いつも考えている

 

 朝の登校

 授業が始まる前

 お昼の休憩

 お掃除の時間

 クラブ活動の時

 学校の帰り道

 偶然出会ったお店の中

 

いつか告白しよう

夢の中でも考えている

 

でも嫌われたらどうしよう 

断られたらどうしよう

 

それが怖くて怖くて

 

こんなときに

孫悟空の分身の術が使えたらなぁ

 

髪の毛を抜いて  

空にふっと吹いてぼくの分身出来上がり


1人目の分身が告白してダメでも

2人目の分身がいるし


2人目の分身が告白してダメでも

3人目の分身がいるし


100人いて

100回告白したら

ぼくのこの想いも伝わるだろうし

 

でもどうしよう


9人目の分身が学校の帰り道

ぼくが電柱の後ろに隠れいて

分身のあのへの告白が上手く行ったら


すぐにバトンタッチするわけにもいかないし

9人目の分身だってあのといたいだろうし


あのと9人目の分身が一緒に帰ることになり

ぼくが後ろをつけていく


あのと9人目の分身が一緒にカフェに行く

街路樹の影からふたりの姿を見る


ふたりが笑顔で話していたりしたら

ぼくはもう見ていられない


9人目の分身がトイレに行ったら

ぼくはすぐにカフェに飛び込んで

あのの前に座っちゃう

でも分身はトイレに行かないよな


すこし暗くなりふたりはカフェを出て

分身があのの家まで送りとどける

ぼくが最初に送りたかった


ふたりはバイバイの挨拶をする

ふたりが別れたらぼくは分身を羽交い絞めにする


妄想だ

これは妄想だ

 

やっぱり自分で告白するしかないんだよなぁ


そもそも分身の術なんて使えないし

 

 

 

 

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