問7 特殊なコイン問題

 出題 

 ここに特殊なコインを用意した。

 このコインは裏が出る確率と表が出る確率が同確率ではない。(要は裏50%、表50%じゃないってこと)


 さてこの特殊なコインを使ってコイントスによる実験を行う。

 どのような条件ならば公平な勝負になるか その条件を答えよ (とある問題の改変です)

(というか必ず50%:50%なら賭け事が成立しないよね。正直、ここを意識するかどうかで世の中のギャンブルは不平等なことを実感してほしい)




 遊くんの隣。それは私の居場所。

 毎度思うけど、このしゃちほこばった言葉要らないよね? 

「はい。それは同感だけど、その前にこれ答えてね。ちなみにこれは、前回の小テストに出てた中で1番難しかった問題で、吉田教諭は頭が単純だからこれは出る確率高いよ。

 数学教師ではなく数学者になればよかったのに。普通の数学教師はこんな論理パズルみたいな中学生でも解けるかもしれない問題出さないよ」

 遊くんがこんな事言うことにびっくりした。聖人君子の生まれ変わりだと思ってたけど……ってこれは遊くんに失礼か。遊くんだって私を押し倒したい気持ちやそっと手を握りたくなる瞬間があるに違いない。いや、むしろ自制することなく存分に押し倒してめちゃめちゃにしてほしい。

 そんな不埒な私の心を見透かされたのか、ちらっとこっちの様子を伺ってる。


 さて本題に入るかぁ

 

 んー条件かぁ、10回、100回ってやって表ないし裏のでる確率を求める? それが正しいとは限らない。『問題は条件』

 そう言えば前に遊くんがコイントスで確率が50%と決定できるのは『無限回コイントスした結果』だって言ってたなぁ。何言ってるのかよく解らなかったけど、このフレーズはなんとなく覚えてた。


「ねぇ遊くん。なんか最近全くもって解らない、そう取っ掛かりも見えない問題ばっかり出題してない?」

「俺だって適当に問題出してるわけじゃないよ。小テストの結果見せてもらったけど、簡単な問題はそこそこできてたからね」

「じゃあなんで追試なの?」

 その質問に遊くんは、たっぷりと間を開けて


「簡単な問題しかできてなかったから」


 苦い笑顔でそう告げた。

 うぅ。解ってた。理解していた。難しい問題を自力で解けることもほとんどなく、問題集に付属の解説では理解できなかった。見かねた遊くんが教えてくれて始めてから、緩やかに落ちていき、ついには赤点ラインを上下していた数学の成績が放物線を描くように上がり始めた。このまま上がり続けることを願うばかりである――というか上がり続けるよう努力しろという話だ――というか上がり続けるようにたくさん出題してくれている。


 解らないが故の誤魔化しもここまで。本題に入ります


 とは言っても……解らない。


「今は難しい問題を考えて、慣れていこう。

 難問を初めからスラスラ解ける人間なんてほとんどいないんだよ」







以下 解説




 2回勝負のコイントスで「表→裏」か「裏→表」を出せばいい。従ってその条件は「表→表」か「裏→表」が出ればやり直す。 

なぜなら表の出る確率をpとすると、裏が出る確率は(1-p)と表現できてコイントスの結果を以下に示す。

表→表=p*p

表→裏=p*(1-p)

裏→表=(1-p)*p

裏→裏=(1-p)*(1-p)


この結果を見れば、同確率なのは「表→裏」と「裏→表」であることは自明  Q.E.D

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