ほんと、不思議だな。
鳥居までは牛車で向かう。
虎徹はそこまで。流石に神社の鳥居の中まで帯刀した侍を連れ歩くわけにはいかないし。
静々と鳥居をくぐり、そして石を踏み楚々と歩く。
途中五十鈴川で手水、で。
こっそり林のなかに入り、十二単を脱いで……。
「さあこれで町娘に見えるかな?」
「あはは。見えないけどー」
「あたしと若様はともかく姫様はちょっと無理?」
えー?
なにがちがうのよとくいかかるわたし。
ちゃんと着替えたしねえさまとも同じ格好のはずなのに。
もともと顔立ちもそっくりだったはず……、ああ。。
わたしの顔立ちが男っぽくなってきたのがいけないのか……。
ねえさまは頰のラインがふっくらとしてきて、女性らしい愛らしい顔立ちになってきてる。
確かにこれでは男の中にはいられないか。
対してわたしは……。
五十鈴川の川面で見るわたしの顔は。
うん。シャープな顔立ち。女性らしい可愛らしさはカケラもない、な。
悲しい。
こういう所に性差が出るのか。もう、ほんとだめ。
「そっか……。わたしのじゃただの女装にしか見えないって事だよね……」
そう落ち込む。
「違う違う違うったら」
「そういうことじゃないんですよー」
ねえさま? 少納言?
「姫は町娘にしては綺麗すぎるんだよ」
「そうですよ、整いすぎて天女かと思われるくらいですよ?」
あうあう……。
お世辞でも、うれしいな……。
流石に、お貴族様そうろうで町中を観て廻るのは憚られたので今日は三人とも町娘としてまわるつもり。
こっそり戻って鳥居から出ると、人が多いせいか虎徹には見つからずに門前までたどり着いた。
にゃー。
草むらから猫が顔を出す。
この辺りに住んでるのかな?
貴族が飼ってたのが逃げ出したんだろうか?
かわいいな。
っていうかこの頃から此処には猫がいるんだ、と、感慨にふけって。
前世でお伊勢さんに来るといっつも此処で子猫に出会ったっけ。
そんな思い出がよぎる。
うん。なんかこの街並み、前世で見た町の面影があるなぁ。
もちろんいろいろ違うんだけど、何処と無く似てる。
あ、逆か。
未来の門前町が、この時代の面影を残しているのか。
ああ。ほんと不思議だな……。
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