楽しんでるね。
ちょっと予定と違ったけれど、わたしたちは無事に伊勢に到着していた。
うーん。結局これは家の権力のおかげ? なのか。
佐野までは確かに牛車に揺られてきたのだ。そこで実家の荘園の館に泊まり、そこの家令が船を手配してくれて。
紀伊半島の沿岸を船に揺られそのまま鳥羽を廻り伊勢に入ったのだった。
うーん。
ちょっとこの時代を甘くみてた。
結局権力ってこういう便利さも産んでるのね。
伊勢でも外宮のほど近くにちゃんと館があり、わたしたちは其処に落ち着いた。
まあお祖母様に兄様探しの祈願だって書き置きしたわけだし、御父様にもそう連絡が行ったのだろう。
話は全部少納言に任せたけど、どこに行ってもちゃんと関白左大臣の姫として丁重に扱われた。
まあいざとなったらここで失踪してもいいんだし、ここまでくればそう簡単に連れ戻されないだろうってそういう風に甘く考えてたけど、ちょっと心配になってきた。
流石に全国にこういうネットワークがちゃんとあるんだなぁ、と、改めて摂関家の権力ってすごいなって感心して。
兄様はわたしのお付きの下働きって設定で連れ歩いてる。
まあこの格好で三位の中将だと疑う人もいないかな。
「で、今日はどうする?」
「下宮も内宮ももう三回も参りましたし、今日は門前町を観て廻りませんか?」
「うん。わたし、神宮の門前町観るの楽しみだったの」
「あは。なんか完全に楽しんでるね。まあでもあたしも楽しいよ。こうして姫と旅ができて、こうしてお伊勢まで来れたこと」
「兄様……。ううん、ねえさま。ありがとう……」
わたしたちの仲は急速に良くなっていた。
今まで碌に本音を話したことなんかなかったけど、この旅の間に色んな事をおはなしして。
ああ、なんとかわたしたちみんなが幸せになる方法はないのかな……。
このねえさまを、幸せにしてあげるにはどうしたらいいんだろう。
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