第11話
誠とやりとりを始めて2年が経った。三度目の冬が来る。だんだんと昼の気温が下がっていき、日差しは柔らかく眩しく私を照らす。
私は東京に行く。そう決めてこの4か月準備をしてきた。仕事と家を探し、納得のいく仕事と家を見つけることができた。仕事はコピーライターと作詞をさせてもらえることになった。
仕事をはじめるとなかなか携帯を開く時間が減る。自然と誠とのやりとりの回数は減っていった。それでも、朝のおはようと寝る前のおやすみは欠かさなかった。
さらに作詞はほとんどが誠との思い出を元に作った。誠と繋がっている限り、いくつでも書ける気がする。誠と繋がることで強くなった気がした。
「誠、今度のイベント、チケット当選したよ」
「分かった」
「会いに行くね」
「うん」
イベント当日。私は後ろの方の席で誠と優がAir Podsくらいの大きさだ。なかなか見えないが、おそらく誠は気づいている。
イベント中、目が合ったような気がしたが遠すぎてまた気のせいかもしれないなと思いながら最後まで楽しんだ。
「イベント、お疲れ様」
「うん」
「会ったのは久しぶりだったね、私のこと気づいてた?」
「うん」
いつも単調な誠の返信。それでもお返事は早くていつも通りだ。この単調で型にはめたような返事が重なり私たちの関係の模様を作っていった。
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