第12話
しんしんと冷えた空気が肺に入る。吐く息は白く、首に巻いたマフラーに顔の半分を埋めて少しでも暖を取る。
誠と優のイベントが終わってからも、毎日のやりとりは続いた。しかし東京で予定を詰め込んでいたため、まだゆっくりと誠に会う時間がない。
今の私は生活とメンタル面での基盤を固めるため、毎日を忙しく過ごしていた。
というのは誠となかなか会えない言い訳に過ぎず、誠が会いたいと言ってくれたらすぐにでも予定を空ける気でいた。
しかし誘われるのを待っている私は仕事に集中するしかなかった。忙しくしていないと誠を求めてしまう。
誠にとって私ってどんな存在なんだろう?何で繋がってくれているんだろう?分からないことばかりだったが、答えは相変わらず曖昧にされる。それでも聞いてしまうのだが。
今日もパソコンを叩き、明日の確認を済ませて帰路につく。一人暮らしになった私はくたくたになりながらも節約のため自炊をしていた。しかしスーパーには一人分の材料なんて打っていないので少し多めに作って次の日の昼ごはんになる。
「誠、おはよう」
「おはよう」
「今日も寒いね。誠も暖かくして過ごしてね」
「うん」
なんてことない会話。わたしの気持ちは大きくなっていくばかり。誠を求めてばかりいる。
しかしわたしは自分からは誘わない、そう決めていた。本当に縁があるなら時期が来たら会える。誠から誘ってくれる。恋愛経験値の低いわたしだったが、これだけは譲ってはいけないと思っていた。
しかし、そう分かっていてもわたしの中で誠の存在は大きくなっていく。
はじめて会った日の体が出した信号は、どういう意味だったのだろうか?わたしの人生の重要な人だと教えてくれた?それとも、関わったら危険だと知らせてくれた?
答えはまだ分からずにいる。
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