第41話『ミネルヴァ』
驟雨に対し己の名を名乗るユナの母、アメリア。長い金髪が風になびいた。大きな目を更に開いて、口角を上げた得意げな表情で胸を張り、ちらりと驟雨を見た。
「アメリア=メロヴィング。知ってるわよね」
だが、驟雨はしばらく考えた後に眉をひそめるだけだった。
「アメ、リア?…………知らぬ名だな。悪いが我の記憶にはないようだ」
「え〜!?知らないの!?あ、そっか、そうだよね……君いかにも新世代って感じだもんね……」
唇を尖らせ、なぜか落ち込んだ様子のアメリア。それを見て、ユナの父が可笑しそうに微笑んだ。
「ははっ。その名前を知ってる魔族はよっぽど年寄りだけなんじゃないかな。時代は流れたんだよ」
アメリアは不服そうに彼を睨んだ。
「それじゃまるで私も年寄りみたいじゃない!」
「うん。人間としては年寄りを超えてるよね。身体的な話は別にして」
「うぅ………」
アメリアは軽く涙目になった。疎い父に代わってゴリ爺がなんとかカバーしようとするが、右往左往するばかりだった。
驟雨はそれを呆れて見ていた。圧倒的な実力差があるとはいえ、敵前でする行動としてはあまりに愚策がすぎる。
若い男女の漫才とそれを見ている老人。
これではまるで――――
「とにかく」
思考を中断するようにアメリアが言った。
「魔族の中では今も知られてると思ってたのに、もう有名じゃないのね。さっきの反応も納得だわ」
アメリアはそう結論づけたが、ユナの父は首を振った。
「いや、有名だと思うよ。でも、アメリアとしてじゃない。多分、今の魔族にはあっちの名前の方が通じると思う」
彼は体を驟雨へ向けた。にこやかな笑顔をして、驟雨の目を見た。
「僕らは『ミネルヴァ』だ」
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