第37話『驟雨vs』

ざっくり割れた石畳のその下。深く深く、土の色が見える。地面の奥底からつんざくような轟音が鳴り響いた。まるで何かの始まりを予兆するが如く、空高く響き渡る。勢いよく何かが削れ、崩れるような、本能的に人間の不安を煽る音。例えるなら、雷がすぐそばに落ちてきたかのような、そんな音。それは、今の今まで平和だった田舎の村を突然襲った。


3人の歓談の輪の中に乱れ入った、謎の現象に、3人はあまりに突然のことに声も出せないのか、おし黙っていた。黙って、ひび割れを睨んでいた。


轟音がだんだんと大きくなってゆく。周囲の窓ガラスがひび割れた。だが、その音は轟音にかき消され聞こえない。


「―――――――――」


不意に、音が途切れた。不自然な静寂がそこを襲った。


「はっ!」


いきなり、地割れから何かが飛び出した。人間の姿ではあるが、それから漏れ出す魔力は彼が人間ではないことを明らかにしていた。


「ここが……指示にあった村か」


彼は、魔王の森にしか住んでいないと言われている『魔族』。下っ端ですら一騎当千の力を持ち、上位の魔族や魔王クラスになると普通の人間がいくら束になっても敵わないと言われている。


「我は驟雨と申す者。そこなる人間。ユナ、という村人を知らぬか。知らない、とは言わせんがな」


驟雨と名乗る魔族が3人に話しかけた。3人は黙っている。


驟雨は確信していた。彼らがユナの居場所を知っていると。彼のスキル『探知』によって、つい前まではこの場所にいたことは分かっている。であれば、下手に体力を使って探し回るよりも、村人相手に情報を聞いたほうが早いのだ。


「言ったら楽に殺して差し上げよう」


そして、情報を聞き出した後に生かす気は全くなかった。


村人に対する態度としてはあまりに強硬な態度。驟雨は、3人を見た。どんな恐怖の表情をしているのか、気になったのだ。だが、彼はひどく驚くこととなる。


3人は、可哀想なものを見る目で驟雨を見ていた。丁度少し前の、理想ばかり高々と叫ぶユナを見る目と同じであった。


「なっ……!?」なぜそんな表情が出来るのだ、そう続けようとした驟雨をゴリ爺が遮る。


「ユナの居場所、だったか?」


ゴリ爺は腕を組んだ。


「青二才が。儂らに口をきくには500年早いわ」

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