第33話 『最強(?)の村人』

「………ありえねぇ…………ありえねぇよこんな事‼」


 背の高い方の男がいきなり叫びだした。俺はあまりの剣幕にちょっとビビった。


 というか、こいつらには今森が全破壊されてるように見えているはずなのに、何故逃げていかないんだろうか。


「サラマンダーブレスもアイスコフィンもS級スキルのはずだろ⁉なんで村人が2つもS級スキルを持ってんだよ‼コントロールも完璧だと⁉ありえねぇ‼」


 ―――あー……そういう系か………


 面倒なことになった。そう思った俺は、密かにため息をついた。


 背の低い方も、高い方に当てられて叫びだす。


「しかも、しかもよ、スキル同時発動なんて聞いたことねえ!!なんでクールタイムなしで上級スキルが連発できんだよ!?」


 二人があまりにうるさく騒ぎ立てるので、これでどけてくれないかなと願いを込め、苛立ったように言い放った。これは本当にまずい。


「何でもいいだろ。ほら、どけよ」


 そのまま俺は足をすすめた。と、高い方の男が、腰が抜けた奇妙な立ち方で道を阻んだ。


 ――――マジかお前……


「お、俺たちだってA級盗賊だ!いくらこいつが意味不明だろうと、二人でかかればいけるかもしれねぇ!行くぞ!」


 高い方が低い方に発破をかけるように叫んだ。腕を激しく振り、目も泳いでいるその姿は、明らかに虚勢を張っていた。


 だが、実際二人でかかられては俺は確実に生きては帰れない。


 ――――引いてくれねえかな


 しかし俺の願い虚しく、低い方はウンウンと納得するように頷いた。


「そ、そうだな…!S級スキルを連打したんだ!こう見えても疲れてるに決まってる!お、俺たちに敵はいねえ!」


 ―――――マジか…………お前単純かよ。マジでどうしようか。


「はぁ………面倒なことになった」


 俺はこれみよがしにため息をついた。何があろうと、策がないこと、弱みを相手に見せてはいけないと思った。


「俺だって人は殺したくない。君たちがどいてくれれば俺としては解決なんだが、どうしてもだめか?」


 虚勢以外の何者でもない口上を述べた。


 二人にだって戦う理由がないのだから、ここで引いてくれると助かるのだが。


「う、うるせえ!おい、やっちまうぞ!」


 だが、男は全く聞く耳を持たなかった。


 ―――――うわぁ……ガチじゃん。


 どうする?どうすればこの状況を打開出来る?こちらにはもうスキルのストックはない。偽装もそろそろ効果が切れてしまうだろう。


 ――――――どうすれば……


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